政府は公文書管理の厳格化を目指したガイドラインを公表した。新指針は、行政の意思決定プロセスなど国民に対して説明する責務がある文書の保存期間を1年以上と規定し、重要文書の安易な廃棄を防ぐ、とする。一方、職員間の日常的な業務連絡や公表文書の写しといった文書は例外とされ、1年以内の廃棄も認められる。

何も手を打たないよりマシかもしれない。とは言え、新指針でも文書種別の区分けや保存期間に関する判断は当事者である各省の部課に委ねられたままである。実際の運用における懸念はまったく変わらない。むしろ、「厳しくなった新指針」のもとでの運用ゆえに、隠れ蓑は厚さを増したと言えるかもしれない。森友・加計問題への批判をかわすための“アリバイづくり”にも見える。

そもそも公文書とは誰のものであるのか、この本質を踏まえて設計するのであれば、公開・保存の原則、重要性判断に際しての非当事者の介在、第3者機関による検証、および、罰則規定は不可欠の要件である。
昨年、米大統領選に敗れたヒラリー・クリントン氏の私用メール問題とは一体何であったのか。それは、「政府高官が公務で交わした通信、書簡はすべてアメリカ国民のものであり、ゆえに将来の公開を前提に保存しなければならない」という連邦記録法に対する違反が問われたのである。原則に立ち返った議論を期待したい。

今週の”ひらめき”視点 11.05 – 11.09

代表取締役社長　水越　孝

その他の注目ニュース
・トヨタ、通期業績予想を上方修正、営業利益は前期比0.3％増、2兆円。一方、不正検査問題に揺れる日産は通期営業利益を400億円減の6450億円へ下方修正
・ニューヨーク市長選、ヴァージニア州知事選、ニュージャージー州知事選はいずれも反トランプを掲げる民主党候補が勝利
・三菱東京UFJフィナンシャル、国内基幹店舗を半減、営業体制縮小へ。一方、インドネシア大手「ダナモン銀行」の株式4割を取得、投資額は2000億円、持分法適用会社へ
・EU、2030年の自動車排出CO2を2021年目標比で3割の削減を要請する環境規制を発表
・政府、選挙公約「教育無償化2兆円」の枠組みを固める。保育園不足による待機児童、低所得世帯への支援重複、高所得者への過剰支援など問題の根本は置き去りに
・米トランプ政権、観光分野などキューバへの制裁強化を発表
・ヤフオク、転売目的のチケットの出品を禁止へ
・ジャパンディスプレイ、4-9月期決算、最終赤字680億円へ。前年同期から赤字幅拡大
・パリ協定、シリアが署名へ。唯一の非参加は米トランブ政権のみ
・起亜自動車、中韓政治対立の緩和を背景に中国市場向けの専用セダンを発売へ
・会計検査院、2016年度の税金の無駄使いは874億円と発表。うち法令違反に相当する不当事項は333件、総額で137億円

～変化の予兆をつかむ、変化の本質を見抜く～
今週のWebニュースクチコミランキングはこちら