緊迫化するモルディブ情勢と中国のインド洋進出
2月5日、インド洋の島嶼国モルディブで「非常事態」が宣言された。ヤミーン政権はナシード元大統領をはじめとする反政府系議員への弾圧を強めていたが、1日、最高裁はナシード元大統領の無罪と12人の野党議員の復権を認めた。これに対して政府は最高裁判所長官を含む判事2名を逮捕、治安当局と反政府側の対立が先鋭化しつつある。
もともとモルディブはインドとの関係が深かったが、2013年にヤミーン氏が大統領に就任すると急速に中国へ傾斜する。
ヤミーン氏は「一帯一路」への参加を表明、道路、橋梁、空港、港湾の整備に中国資本を導入、昨年12月には中国とのFTAにも署名した。
そうした中、対中債務は15~20億ドルへ拡大、金利は10~12%に達するとみられる。返済は来年以降からはじまるが、反政府側は「モルディブの財政状況では延滞は不可避、債務と引き換えに実質的な領土割譲が行われる」ことを懸念する。
2016年、中国は財政が行き詰まったギリシャから国営ピレウス港の株式51%を買い取った。2017年には債権放棄と引き換えにスリランカのハンバンタト港の運営権を取得、パキスタン、ミャンマー、バングラディシュへの投資も強める。アフリカ東部ジプチには海軍基地を設置済みだ。
かつて胡錦濤氏によって「調和の海を目指す」と説明された香港からホルムズ海峡に至る“真珠の首飾り”は、習近平氏のもと名実ともに「偉大なる中華民族」の戦略的ドレスコードとして実現される。
今週の”ひらめき”視点 2.11 – 2.15
代表取締役社長 水越 孝
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