両備グループ、バス路線の廃止届けを撤回。地域の未来は本当に見えたか
3月14日、両備グループ小嶋光信代表は2月8日に中国運輸局に提出した赤字31バス路線の廃止届けを撤回すると発表した。
この問題は2月23日付けの本稿でもとりあげた。“赤字路線の運行を支えている特定黒字路線への格安事業者による新規参入”が事の発端である。
両備は当初から「廃止そのものが目的ではない。地域の公共交通を守るための問題提起」とその狙いを説明してきた。会見では届出撤回の理由を以下のように語った。
・石井国交相が「各地域のバス事業の状況を把握・検証したうえで、公共交通維持に対する取り組みを支援する」と表明した
・運輸局、県および関係4市と路線維持に向けての協議の場を設けることで合意した
つまり、問題提起に対して一定の成果があった、ということである。とは言え、このタイミングでの撤回は「入学や入社の節目となる4月を前に、市民や利用者の不安や心配を取り除く」ことが優先されたものと推察する。
確かに岡山における関係者間協議の開催は一歩前進である。しかし、解決の方向性が定まったわけではないし、地方のみならず都市部を巻き込んだ全国的な議論になったかと言えば甚だ心もとない。
北海道ではJRが「単独での維持は困難」と公表した10路線13線区の沿線で関係者による協議が始まっている。バスによる代替輸送も選択肢の一つであるが、コストが移動するだけの“代替”で問題は解決しない。デマンドバス、貨客混載、乗合タクシー、コミュニティバス、上下分離、自動運転など、アイデアは一つではないだろう。しかし、需要そのものが構造的に縮小する中にあって、沿線当事者の地域リソースのみで問題を解決するには限界がある。
国交省は「国土のグランドデザイン2050」で“各地域が主体性を確立し、固有性を深め、多様性を再構築する”ことを理念に掲げた。異論はあるまい。であれば、まずは議論の土台となる地域の特性と問題を客観的に把握すること、そして、地域の可能性を引き出すためにすべての政策統合をはかってゆくことが肝要である。地域交通は国交省だけの問題ではない。国力の源泉たる地域の存続をはかるために何が出来るか、私たち一人ひとりが当事者である。
今週の”ひらめき”視点 3.11 – 3.15
代表取締役社長 水越 孝
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