外国人労働者、受入れ拡大へ。ただし、問題の本質は先送り


政府は建設、農業、介護等の人材不足に対応するために新たな外国人就労資格を設置する。資格の名称は「特定技能」(仮称)、最長5年に制限された技能実習の修了者に対して、更に5年間の在留資格を与える。
本来“学んだことを母国で活かす”ための技能実習制度が実質的な外国人労働者の供給システムになっていることは周知の事実であり、不当な低賃金や違法な長時間労働が一部で問題化している。一方、単純労働市場における人材不足は深刻化しており、在留延長を求める声は雇用者側、実習生側の双方に多い。新資格はそのギャップを埋めるものである。

とは言え、技能実習の本来目的は形式上維持される。実習生は最初の5年間が修了した時点で一度帰国しなければならない。つまり、母国に一定期間滞在することが「特定技能」の資格要件ということであり、言い換えれば、永住権取得条件の一つである“10年以上の在留”が直ちに満たされないように制度設計されているということである。

アジアの賃金水準が急速に上昇している中、海外からの労働力を短サイクルで補填し続ける“都合の良い”制度で安定的に労働力を確保できるのか。
生産年齢人口の減少が避けられない日本にとって、外国人労働者の問題は「途上国の人材育成」を名目とした制度の枠組みで考えるべきではない。日本社会全体としての受け入れ態勢を長期的視点から議論してゆく必要がある。

今週の”ひらめき”視点 4.8 – 4.12

代表取締役社長 水越 孝

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