出光創業家、昭和シェルとの経営統合に合意、業界再編に区切り


10日、出光創業家の賛同が得られず膠着状態にあった出光興産と昭和シェル石油の経営統合が最終合意に至った。創業家の説得には旧村上ファンドの村上世彰氏が一役買ったとのことであるが、石油業界の再編は我が国産業政策の悲願でもあり、元通産官僚の村上氏にとっては投資家の立場を越えた“使命感”もあったのだろう。1985年、昭和石油とシェル石油の統合からはじまった業界再編は33年を経てようやく完結、当時15社あった石油各社は国内市場の5割を押さえるJXTGエネルギー、3割を占めることとなる出光+昭和シェル、そして、コスモ石油の3グループに集約される。

統合は2019年4月1日、株式交換により出光興産が昭和シェル石油の全株を取得、完全子会社化する。昭和シェル石油は3月29日付けで上場廃止、統合後のブランドは“出光昭和シェル”。
両社は会見で「2015年11月の統合発表から最終合意まで3年を要した。この間、実務レベルでの交流を着実に進めてきた。無駄な時間ではなかった」としたうえで、「経営資源を統合し、アジア屈指のリーディングカンパニーをつくる」、「今後5年間で純利益500億円のシナジーを創出する」と今後の方針を語った。

かつて国内に6万店あったSSは3万1千店に減少、市場縮小は構造的だ。「5年で500億円の統合効果」の内訳は不明である。しかし、この数字が単に“縮小市場における合理化効果”を意味するのであれば、直近決算で売上高5兆7766億円、経常利益3193億円、当期純利益2050億円というスケールを有する新会社としては物足りない。
2030年代には欧州、中国、インドなど世界の自動車市場の主力がEVに置き換わる。「士魂商才」を銘とし、「努めて難関を歩め」と語り、「事業の利益を社会に立脚せん」とした出光佐三氏の精神を承継するのであれば、2030年のその先を見越した「難事業」への挑戦を表明していただきたい。

今週の”ひらめき”視点 7.8 – 7.12

代表取締役社長 水越 孝

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