日銀、投資信託データを大幅修正。消えた“貯蓄から投資への流れ”
日銀がまとめた“資金循環統計”に「家計が保有する投資信託に30兆円規模の過大計上があった」ことが分かった。2017年末時点の家計が保有する投信総額は109兆1千億円から76兆4千億円に、個人金融資産における投信比率は5.8%から4.1%に修正された。
政府は、預金に偏っている家計資金を投資に回すことで経済成長を後押しすべく政策を進めてきた。改定前の統計では「2012年に3.8%であった家計における投信比率は2017年末には5.8%へ上昇」していたはずだが、実際には2014年の4.6%をピークに下落していた。つまり、家計資金の投資へのシフトは進んでいなかった、ということだ。
家計部門への営業を強化してきた証券各社もまた今回の修正を受けて、需要トレンドに関する従来の“文脈”そのものを改めざるを得ない。まったく迷惑な話であるが、東京都の年間予算(14.4兆円)の倍、国の社会保障費(約33兆円)に匹敵するほどの数字の大きさに驚かされる。
政策決定、政策評価の根拠となる公的統計にこれだけの誤りがあったことは前代未聞だ。とは言え、日銀によれば「部門別の残高を精緻化した結果、家計部門では下方に改定された」ということであり、すなわち、“誤り”ではなく、あくまでも“改定”ということだ。
昨年来、私たちは公文書の改ざん、不正な調査データ、公務日報の隠蔽、そして、言葉と責任のあまりの軽さを繰り返し見せつけられてきた。“改定”による影響など関知せずとの日銀のスタンスに、統治機構と主権者との信頼はまた一つ失われてゆく。
今週の”ひらめき”視点 7.22 – 7.26
代表取締役社長 水越 孝
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