北海道ブラックアウト、“昭和”から“ポスト平成”型の社会インフラの構築へ


19日、苫東厚真1号機が復旧、これを受けて北海道電力は節電要請を解除、繁華街ススキノにもネオンが戻った。一方、被災された方々にとって「日常」は未だ遠い。あらためて心よりお見舞いを申し上げます。

6日未明、胆振地方を震源とするM6.7の地震が発生、その18分後、日本では「起こりえない」とされてきた全域停電(=ブラックアウト)が起こった。事故の詳細は今後明らかになるだろうが、ブラックアウトに至る経緯は以下のとおり。

①苫東厚真2、4号機が地震直後に停止、全道の4割の電源が喪失
②停止した電源に見合う需要を切り離す「負荷遮断」を実施、道北、道南が停電
③本州からの「北本連携線」がフル稼動、需給バランスは一時的に回復
④苫東厚真1号機の損傷が悪化、自動停止。需給バランスが一気に崩れ電力供給網のすべてが連鎖的に停止、全道停電へ

専門家はブラックアウトの要因として、地震発生時刻が深夜未明であったこと、北海道電力の主力電源が石炭火力発電であること、苫東厚真発電所が道内の電力需要の半分を担っていたこと、を指摘する。
石炭火力は石油や天然ガス火力と比べて負荷追従運転能力が低い。すなわち、3時8分という需要がもっとも小さい時間帯に、苫東厚真という集中電源の供給が停止、直後の需要変化に出力調整が追いつかず電力供給網全体が連鎖的に破綻したということだ。

北海道電力は出力57万キロワットの天然ガス火力発電所を石狩湾に建設中だった。北本連携線の増強工事も進んでいた。いずれも2019年の稼動を予定していただけにタイミング的には不幸だった。しかし、想定外のブラックアウトはこれからの社会インフラのあり方に一石を投じた。
発電所は高出力ほどコスト効率が高い。しかし、それゆえの脆弱性を内包しているわけであり、そのリスクは大きい。何もかもが右肩上がりの時代はもはや終わっている。とすれば、強大であること、一元的であることを理想とする“昭和”のシステムから、小規模、分散、柔軟をキーワードとするネットワーク型の社会システムを構想すべきではないか。
ブラックアウトからの復旧期間中、全道の14%の電力を下支えしたのは日本製紙、新日鉄住金、王子ホールディングスなど民間企業が保有する自家発電設備だった。地場のコンビニチェーン「セイコーマート」は全道停電下にあっても95%の店で営業を継続、非常用電源装置で照明やレジの電力を確保した。ここにヒントがある。

今週の”ひらめき”視点 9.16 – 9.20

代表取締役社長 水越 孝

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