「製造2025」戦略の実現へ。先端技術投資を加速する中国の可能性とリスク


27日、中国の宇宙ベンチャー「ランドスペース(藍箭航天)」が自社開発ロケット“朱雀1号”を打ち上げた。搭載した国営テレビCCTVの小型衛星の軌道投入には失敗したものの飛行は正常だったとのことであり、「創業3年、初めての打ち上げ」であることを鑑みると事業化スピードの速さに驚かされる。
31日、中国検索大手「バイドゥ(百度)」と米フォードモーターは、自動運転車の共同実験を北京市内で年内にも開始すると発表した。百度の自動運転プロジェクト「アポロ計画」にはホンダ、ヒュンダイ、BMWも参加しているが、AI分野でも百度と提携したフォードが実証実験で先行する。

先端産業の育成、内需主導、製造大国から製造強国へ、今、中国経済は構造改革の最中にあり、これを達成すべく民間活力の導入が国家戦略化される。航空宇宙分野における“軍民統合”の方針は既に2015年の「国防白書」に明記されており、民間企業であるランドスペース社の事業戦略もここが起点となる。北京における自動運転車の公道実験も規制当局の迅速な認可があってのものだ。

一方、ブレーキも突如踏まれる。シェアエコノミーのニューウェーブとして急成長し、一時は100社を越える企業が参入したシェア自転車ビジネスはオッフォとモバイクの2強を残して昨年末までにほぼすべてが倒産、廃業、撤退した。未登録業者の乱立と社会問題化した放置自転車に対して当局が一挙に規制強化をはかったことが要因である。業界のパイオニアであるオッフォの創業は2014年、事業をスタートした2015年からわずか3年、業界としての成長は終わった。
改革開放の波に乗りアジア屈指の財閥となった大連万達集団(ワンダグループ)も深刻な経営危機に直面する。当局は同社の海外投資に伴う外貨流出と過剰債務を問題視、同社グループへの融資禁止を金融機関に通達した。同社はこの1年で2兆円規模の資産を売却、中国版ハリウッドも中国版ディズニー構想も夢と消えた。

中国企業の事業展開力の驚異的な速さは、事業家たちの傑出した才能と巨大なリスクマネーによるところが大きい。しかし、いかなる企業、投資家にとっても国家の方針すなわち党の意志が絶対的な経営条件となる。13億人の内需、6%台の成長ポテンシャル、中国市場の魅力は中国固有の“異質さ”と常にトレードオフの関係にある。

今週の”ひらめき”視点 10.28 – 11.01

代表取締役社長 水越 孝

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