「中国、輸入博」と米中間選挙。“予測不能”な世界への適応力が問われる
10月18日付けの本稿では「輸入博」の国家としての戦略性について言及したが、5日、いよいよその幕が開いた。既に多くのメディアが報じており重なるところもあるが、当社上海現地法人と日系企業に同行した当社コンサルタントからの現地報告を紹介する。
・開幕式には習近平氏が来場、「中国は今後15年間で世界から40兆ドル(4500兆円)を輸入する」と演説
・5日、6日は政府機関、国営企業をはじめ公的セクターは振替休日、市内や展示場の治安維持に動員
・10万人の来場者枠に35万人が応募、入場者数は40万人を越える
・約180の国・地域から約3600社が参加。米国からは約180社が参加
・東欧、南米、アフリカなど途上国の参加が目立った。これらの国は参加費用を免除、輸入品の97%に免税措置を適用
・日本勢は磯崎経産副大臣、石毛JETRO理事長、片山上海総領事を招いて結団式を挙行、“日中経済協力新時代”への期待を表明
・日本企業は480社以上が参加、展示面積2万㎡が割当られた
上記は現地からの速報の一部であるが、とにかく“スケールの大きさは規格外”とのことである。バイヤーである中国企業には“大手であれば10億円、20億円”といった単位で買付けノルマが課されているとも言われ、出展した企業からは想定を大きく上回る受注額に驚きの声があがっているという。
実際、中国EC大手アリババは「今後5ヵ年で2000億ドルを海外から買い付ける」とし、傘下のティーモール(天猫)やティーモールワイド(天猫国際)等のECチャネルを通じて中国の消費者に提供する、と表明した。
9月、そのアリババのジャック・マー会長は天津で開催された経済フォーラムで “米国との経済対立はトランプ以後も引き継がれる。少なくとも20年間は続くだろう”としたうえで、トランプ氏と約束した米国での100万人雇用構想を撤回するとともに、「海外事業の軸足を東南アジア、アフリカに移す」語っている。戦略のベクトルは当局の方針と完全に一致する。
6日の米中間選挙は上下院が“ねじれ”となった。今後、トランプ政権は“より強硬になる”とも“停滞する”とも言われる。いずれにせよトランプ氏の“予測不能”状態は続く。
一方、中国は “開かれた大国”づくりを加速、「一帯一路」戦略にもとづく自由貿易圏の実現を目指す。日中関係も“政熱経熱”が演出される。日系企業にとって事業機会は大きい。しかし、“経熱”が政治から完全に自立することはなく、民意に政権選択の機会はない。つまり、こちらも常に“予測不能”である。したがって、企業は米中それぞれの戦略オプションとその組み合わせによる米中関係の変化をシナリオに織り込んでおく必要がある。スピードと柔軟性、何よりもリスクを受け止め、投資を決断する独自の基準と覚悟が求められる。
今週の”ひらめき”視点 11.4 – 11.8
代表取締役社長 水越 孝
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