スペイン、2040年までにガソリン、ディーゼル車の国内販売を禁止。脱ICE(内燃機関)は新たな成長機会を創出する
13日、スペイン政府は2040年までにガソリン、ディーゼル、ハイブリッド車の国内販売を禁止すると発表した。現在準備中のこの法案では2050年には二酸化炭素を排出するすべての乗用車の走行を禁止するとともにマドリードなど人口5万人を越える自治体には2023年までに自動車の走行を制限する特別エリアを設けることも義務付けるという。
与党が1/4議席にとどまるスペイン下院の状況を鑑みると法案の成立は不透明である。しかし、既に英仏も2040年をターゲットとするEV化政策を発表済みであり、欧州のEVシフトが加速することは間違いない。昨年時点でのスペインの乗用車登録台数は123万台、EVは4千台、充電スタンドも3千箇所に満たない。2040年に向けてスペイン市場のポテンシャルは大きい。
市場機会は“クルマ”だけではない。最大の課題は電力供給網の構築である。とは言え、運輸部門のCO2排出を抑えるために発電部門の排出量が増えるのでは本末転倒である。とすれば負荷追従能力の高い分散型電源ネットワークの構築が必要となる。
この分野では日本もノウハウがある。2013年にはスペイン南部のリゾート都市マラガ市で、スペインの政府系機関CDTIとNEDO が連携、EVと再生可能エネルギーをネットワークした“スマートコミュニティ”のモデル実験を行なった。このプロジェクトには三菱重工、三菱商事、日立製作所が参画、急速充電設備の整備やEV管理センターの構築を支援した。設備機器はもちろんオペレーション分野における日本の技術力は高い。
一方、新車販売市場が次世代パワートレインに置き換わる2040年時点においても公道を走る自動車の半数はICE(内燃機関)のままである。自ずと環境規制は更に強まっているはずだ。
排ガス浄化装置トップの日本ガイシは2020年までに自動車排ガス浄化用セラミックスの生産ラインに新たに500億円を投資、石川工場やタイ工場を拠点にインドなどアジア新興国向けに「粒子状物質除去フィルター」事業を強化する、と発表した。ガソリン、ディーゼル車向けの環境装置はまさに成長産業ということだ。
脱ICEの流れに後戻りはない。HVの営業計画も変更を余儀なくされるだろう。既存産業の多くが構造転換を強いられる。しかし、それゆえチャンスはそこにある。
今週の”ひらめき”視点 11.11 – 11.15
代表取締役社長 水越 孝
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