「毎月勤労統計」不正問題、数字と言葉への信頼、失墜
賃金や労働時間の実勢を把握する国の基幹統計「毎月勤労統計」(厚労省)において重大な不正が発覚した。本来、従業員500人以上の事業所は全数調査とすべきであるが、東京都内の調査では対象事業所1464ヶ所に対して1/3程度しか調べていなかった。不正は小泉政権下の2004年に始まり2017年まで続いた。この間、都内の大企業およそ1000社が調査対象から外れたため統計上の賃金水準は実体より低く算出され、結果的に雇用保険の失業給付等の支給額が不当に抑えられたという。過少給付の総額は567億円を越え、影響は延べ1900万人に及ぶ可能性があるという。
「毎月勤労統計」は昨年、2018年1月以降の賃金伸び率が突然高くなったことを受け、“恣意的な操作があったのではないか”と疑問視された。厚労省はこれを「定期的な標本入替え」と「入替え手続きの変更」の影響であると説明してきた。しかし、驚くべきことに、標本の入替えと同じタイミングで今回発覚した不正を統計的に補正するための措置を講じており、それを隠し続けた。自らの過ちを隠蔽、矮小化し、非公表で済ませようとする姑息さと不誠実さには呆れるしかない。不正を把握した時点でまずなすべきことは国民に対する事実の公表、不利益者に対する追加給付の実行、長期におよぶ不正の全容解明、責任者の処分、加えて不正期間中の統計データの信頼性の検証であったはずだ。
上記不正の波紋が広がる中、10日、総務省は「消費動向指数」の調査対象者の年齢集計に誤りがあったと発表した。年度の切り替え時に実施すべき調査対象者の年齢更新を怠ったという。こちらは発表のとおり単純な“ミス”なのであろう。しかし、政策判断の根拠となるべき公的統計、行政文書における過誤、不備は致命的である。ましてや不正、改竄、隠蔽、虚偽など、もってのほかである。宝島社が発表する新年恒例の企業広告、2019年のメッセージは「敵は、嘘。」だった。残念ながらまったくその通りである。
今週の”ひらめき”視点 1.13 – 1.17
代表取締役社長 水越 孝
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