大学の再編・統合が本格化、長期的視点に立って高度で多様な人材育成を!
総合研究大学院大学は、国立天文台、核融合科学研究所、統計数理研究所など17の研究機関を擁する4つの“大学共同利用機関法人”と2022年度に運営を統合する。総研大は、共同利用機関法人傘下の研究機関とJAXAを拠点に博士人材の育成を担う教育機関であるが、新たに設置される法人に各機関の管理業務を一元化し、効果的な資源配分と経営の効率化をはかる。
また、名古屋大学と岐阜大学も新法人“東海国立大学機構”を設立、「2020年度に新法人の傘下に入る」ことに合意した。大学の独立性を保ちつつ、研究施設の共同利用、教育課程の相互補完、事務部門の合理化、法人としての全体戦略を推進するという。
既に私立大学の半数以上が定員を割り込み、赤字経営を強いられる状況にあって、大学・研究機関の再編、統合が具体化する。北海道、静岡、奈良でも大学の統合に向けた協議が進んでいると言う。
29日、内閣府は2019年度の科学技術関係予算が4兆2377億円になると発表した。政府の政策目標GDP比1%に届かないものの、“前年比1割増、過去最大規模”の予算は評価できよう。とは言え、問われるべきは質である。歴代ノーベル賞の受賞者は一様に日本の研究、教育体制の劣化を指摘する。とりわけ、基礎研究における国際競争力の低下は科学技術の基盤喪失に直結するだけに看過できない。短期的な経済効果に偏重した研究評価への流れは再考されるべきであろう。
一方、文系における高度人材の育成も急務である。社会課題を発見し、解決の道筋を制度設計し、新たな価値を社会に提案し、既存のルールに囚われないビジネスを構想するための知性と創造力の育成は必須である。経済、法律、歴史、心理、文学、哲学、芸術など、“人を自由にするための学問(リベラルアーツ)”への投資不足が “ユニコーン”が育たない要因の一端にある。
大学改革の目的は単なる交付金の削減ではない。ましてや苦境にある大学の救済ではあるまい。世界水準の研究環境をどう整備し、維持してゆくのか、多様な高度人材をいかに発掘し、育成し、活用するのか、学術成果をどのように社会に還元してゆくのか、改革の主題はここにある。文科省は2019年度の通常国会に国立大学法人法の改正を検討しているという。長期的かつグローバルな視点から大学と社会との関係性を問い直す絶好の機会である。
今週の”ひらめき”視点 1.20 – 1.31
代表取締役社長 水越 孝
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