震災から8年、復興に向けて私たちは2つの現実に向き合う必要がある
3月11日、震災から8年が経過した。災害公営住宅は計画比98%、高台移転や地盤嵩上げによる宅地造成の進捗率も94%を越えた。道路、港湾、鉄道など公共インフラの復旧工事もほぼ完了した。震災発生直後、47万人を越えた避難生活者も5万人に減った。
とは言え、未だに5万人、であり、避難生活の長期化に伴う“震災関連死”も3700人を越えた。災害公営住宅における孤独死も増えている。そして、依然2533人もの方が行方不明のままである。
地域経済の低迷も深刻である。人口の減少が止まらない。とりわけ若い世代が戻って来ない。インフラ関連の復興事業が一巡した反動も大きい。NHKの調査によると被災者の63%が「復興は進んでいない」と回答したという。
3月7日、日本経済研究センターは福島第1原子力発電所の処理費用が最終的に80兆円を越える可能性があると発表した。この数字は経産省が試算した約20兆円を大きく上回るものとして注目された。しかし、このレポートの価値はそこではない。これまでタブー視されてきたチェルノブイリ方式を試算シナリオに加えた点にある。同センターは廃炉を見送り、「石棺」等による閉じ込め管理型を採用した場合の費用を35兆円と見積もった。金額の多寡ではない。あらゆる選択肢を排除しない、という当たり前のスタンスに敬意を表したい。生命(いのち)と生活(人生)を選択する根拠に政治的な恣意性は不要だし、ましてや改竄や隠蔽などあってはならない。
8年前、当社は「東日本大震災における経済復興プロセスと主要産業に与える影響」(2011年3月31日発刊)と題したレポートを発表した。「日本の中に温存されてきた古い体質、棚上げされてきた課題を一挙に解決し、産業の新陳代謝と社会経済構造の革新を加速させることをもって復興の道筋とすべき」と結論づけた。一方、被災地では、復興はおろか復旧の見通しすら立たない地域も少なくない。
東日本大震災は私たちの生活価値観を変えたはずではなかったのか。この8年間、何をしてきたのか、何が変わったのか、何を変えてきたのか。
被災は終わっていないという現実、そして、一向に解除の見通しが立たない「原子力緊急事態宣言」の中を生きる現実。私たちはこの2つの現実から目を逸らしてはならない。
今週の”ひらめき”視点 3.10 – 3.14
代表取締役社長 水越 孝
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