お掃除ロボット、ルンバがもたらした多大なる功績


2011年のヒット商品のひとつとしてノミネートされた製品に、お掃除ロボットのルンバがある。ヤフーエンジンでお掃除ロボットと検索してみたところ約132万件、お掃除ロボット ルンバで検索したら約92万件のヒット数であった。既にお掃除ロボットというキー自体コモディティ化しており、さらにはお掃除ロボット= ルンバとして認知されているのである。ルンバは1990年に設立された米国ロボット専業開発ベンチャーのアイロボット社の製品。

アイロボット社では2002年にルンバの発売を開始した。このルンバ、アイロボット社独自開発による人工知能AWAREをベースに、国家プロジェクトで培った軍事用地雷探査技術(米国政府においては600万ドルを投じ開発支援)を最大限に注ぎこんで開発されたシロモノだ。重々説明するとルンバのメカニズムであるが、ルンバのゴミ除去率は99.1%である。これら高除去率を支えているのが人工知能AWAREと一度に3つの動作を同時に行う3段階クリーニングシステムの両輪である。
製品開発に特化すると、床用ワックスを手始めにパーソナルケア製品等々の有力メーカーである米国SC Johnson社と有力玩具メーカーの米国Hasbro社との共同開発である。両社との共同開発がルンバの製品開発の原点でありキーとなったのだ。前者のSC Johnson社とはスイーパーロボット、NEXGENでフロア掃除の仕組みを学んだ。後者のHasbro社とは赤ちゃんロボット、MY REAL BABYでお手ごろな価格で大量生産する仕組みを学んだ。MY REAL BABYは体中至るところに数10個ものセンサーが張り巡らされており、お手ごろ感のある価格を達成するためにセンサーについても使用される部位によって安価なものを採用していった。

こと国内では、タカラ(現 タカラトミー)が「@HOME ROBO ルンバ」なる名称で1機種のみ2003年3月から販売開始したものの、16ヵ月後の2004年6月には販売終了した。2004年4月からはアイロボット社の総代理店となったセールス・オンデマンドが一手にルンバの販売を担当することとなり今日までに至っている。
ルンバは国内で2009年以降に爆発的な伸びを示した。セールス・オンデマンドでは、昨年、2011年9月14日にルンバ700シリーズの新製品発表会が開催し、その席上で2010年度における国内販売台数を公表した。2010年度は15万台と、2008年度の3万台に対して何と5倍もの販売台数を稼ぎ出したのであった。この立役者となったのが2009年9月発表のルンバ500シリーズの527・537・577の3品である。2011年9月14日発表~10月7日から発売開始したルンバ700シリーズは500シリーズ同様3品。ルンバ700シリーズでは新たに高速応答プロセス iAdapt(アイ・アダプト)とNEW3段階クリーニングシステムである「エアロバキュ」が搭載された。

なお、ルンバの2011年までのワールドワイドでの累計販売台数は600万台、一方、国内の2011年度までの同台数は50万台であった。セールス・オンデマンドでは9月11日にルンバ600シリーズの630・620の2品を10月19日から発売することを発表した。ルンバ600シリーズは700シリーズより5,000~1万円程安価な価格設定、630が54,800円、620は49,800円である。自動充電機能を搭載しており、清掃機能の要とされるメインブラシを改良、清掃能力も向上したそうだ。8月には累計販売台数で60万台を突破しており、ルンバ600シリーズの投入から2012年度終了時点では同台数80万台も見込まれてくる。

ルンバの勝因とは? ルンバの高い清掃能力も然ることながら、環境要因を睨みつつ、流通チャネルでのデモンストレーション~マスでのメディアミックスを絡めたマーケティングそしてブランディング戦略が重なりあっての賜物である。ディープに述べると、2004年立ち上げ当初は-ルンバは都市型製品-という特長を最も生かせる百貨店に一点集中した。2005年~2007年にかけては家電量販店中心に、通販・・・TV通販(ショップチャンネル等)や富裕層向けカタログ誌で補完し~2008年はロードサイドの家電量販店~拡販の下地が整った2009年以降は本格的にマス広告でのメディアミックス戦略を敷いて行った。テレビ・新聞・雑誌のみならず都市型人間が好む傾向が最も顕著な交通広告(JR・地下鉄)までマス広告幅を広げていったのだった。正に用意周到な策といえよう。

お掃除ロボット、ルンバは通常の掃除機とは異なり、買い換え需要でなく、あくまでも掃除機との併用的な買い増し需要であって、元来掃除機とはバッティングはしないのだ。共働き世代、専業主婦でも比較的小さい子供がいる、そして高齢者である。いわゆる、お金で時間を買う人達がメイン購入層となるのだ。マスメディアのテレビでたびたび紹介されているように、ピポポポ~音で掃除を開始するルンバをペット感覚で話しかけてみたりする人達も多いようだ。このペット感覚も新たなルンバ需要を生むキーとなっている。昨今はルンバブルという造語もバイラル効果で広まってきた。ルンバが掃除し易い住環境を指している。

白物家電製品を取り扱っている東芝ホームアプライアンスでは、2011年10月1日に
家庭用自走式クリーナー(充電式コードレスクリーナー)の新製品として、スマーボ(VC-RB100)を発売した。スマーボは韓国サムスン社のNaviBotのOEM製品だ、この9月にはニューバージョンのスマーボVを発売した。シャープも6月にロボット家電というスタンスで、おしゃべり機能搭載、コミュニケーションできるココロボを発売した。
韓国のLGもLGエレクトロニクス・ジャパンを通じて3月からHOM-BOT2.0を発売した。まだまだこれから参入してくるメーカーも出てくる。ライフサイクルの変遷とともに、お掃除ロボットはブランド化されてくるだろう、そのなかでパイオニアのルンバがもたらした功績は多大なものといえよう。

2012年10月 主任研究員 萩生田 秀昭


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