衆議院解散、消費税先送り、緊急経済対策, 東レにみる繊維産業のイノベーション
経営の外部環境が、場当たり的な恣意性に歪められることこそ成長にとって最大の障害となる。とは言え、経営の主体はわれわれであって、政治に出来ることなど少ない。
東レはこの2月に2016年度の業績目標を売上高2兆3000億円(2013年度比126%)、営業利益1800億円(同164%)とする中期経営計画を発表した。当面の成長を支える事業は、①ユニクロとの取組みに象徴されるサプライチェーン統合型の高機能繊維事業、②先進国における高齢化と新興国需要の拡大を背景とするおむつ向けの不織布事業、そして、③炭素繊維事業、である。とりわけ、炭素繊維の成長期待は高い。炭素繊維は1970年代の日米繊維摩擦を背景とする構造不況の中で産声をあげた技術で、当時、3度の最終赤字に陥っても投資を続けた東レにとって、言わば悲願の事業である。
そうした中、11月17日、東レは「1兆円を越える航空機向け炭素繊維複合材料の包括契約についてボーイングと合意した」と発表した。これは今後10年以上におよぶ独占供給を意味するものであり、既に世界シェアの3割を占める東レの競争優位は更に強化されたと言える。
炭素繊維はシェールガス分野でも新規需要が見込める。資源、環境、医療分野における急速な技術革新やニーズの変化は、「材料」としての繊維に新たな可能性をもたらす。繊維は、再び先端テクノロジーとしての輝きを取り戻した。
今週の”ひらめき”視点 11.16 – 11.20