【教育ビジネス】学習塾・予備校は転換期
少子化の進行により、学習塾・予備校は世間から構造不況業種と目されやすい。だが2009~12年度にかけて市場規模は拡大を続けていた。09年度の9千億円が、12年度には9380億円まで伸びている。
市場が拡大した第一の要因は、講師1人で4人以下の生徒を教える「個別指導塾」と称する業態の普及だ。それまで学習塾・予備校が捕捉していなかった成績中位・下位層を新たに獲得し、通塾率を底上げした。
第二に、難関校の受験準備を担う多くの学習塾・予備校が、従来のコアターゲットよりも低い年齢層の生徒を積極的に囲い込む動きを加速したことだ。中学受験専門塾が、それまで小学4年生からだったカリキュラムを小学1年生向けから設定した。高校受験塾も、中学1年からではなく、小学高学年からの取り込みを強化している。
さらに少子化といっても、受験学年となる15歳、18歳の人口がこの間、「劇的に」縮小しなかったことも、市場規模の拡大を下支えした。
ところが13年度以降は、市場規模の拡大がストップした。業界はついに正念場を迎えることになる。
13年度の市場規模は9360億円(前年比0・2%減)と微減とはいえ4年ぶりの縮小に転じた。14年度も9300億円(同0・6%減)と予測される。
その後も、以下の理由から、市場は構造的に縮小してゆく見込みである。
まず、これまで横ばい水準で推移してきた15歳、18歳人口の減少速度が、18年ごろから加速する。これは「2018年問題」と言われている。
大学入試が根本的に変わることも、業界にとって逆風となる。大学受験生の大半が受験する、現行の「センター試験」は5年以内をめどに廃止され、「達成度テスト(仮称)」が導入される。新しいテストは年に複数回受験できる。知識を1点刻みで問う現行の試験は、学力のレベルを判定する試験へと移行する。そのため「一発勝負の学力試験に備える」ために学習塾・予備校に通う動機が薄まってしまう。
さらに「センター試験」が廃止になった段階で、9月入試を採用する大学も増えるとみられる。これにより受験生の動きが根本的に変わってしまうことも、市場にはマイナスである。
このように大学入試の在り方が根本的に変われば、それが波及し、高校入試や中学入試にも変化をもたらす可能性が高い。こういった急速な構造変化についていけない学習塾・予備校は淘汰されていくことになるだろう。
今年9月には、予備校大手の代々木ゼミナールが来春から全校舎の7割に当たる20校を閉鎖することを発表し、世間を驚かせた。
この業界は大転換時代に入りつつある。今後も、こうした動きが続発していくだろう。
2014年12月 主任研究員 松島 勝人
株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2014年11月17日号掲載