はやぶさ2、52億キロを支える“ものづくり”企業の可能性
12月3日、種子島から打ち上げられたH2Aは、はやぶさ2を予定軌道に投入した。帰還は2020年、52億キロの旅がはじまった。
プロジェクトは三菱重工、IHIエアロスペース、NEC、住友重工など宇宙航空大手をはじめ、100社を越えるメーカーに支えられる。小惑星に人工クレーターをつくる衝突装置を開発した日本工機白川製造所が“被災地企業”として話題になったが、気象観測機器の老舗メーカー、明星電気も大きな役割を担う。
はやぶさ2では、小惑星の水や有機物を観測する近赤外線分光計、衝突実験を撮影する理学観測分離カメラ、エンジン周辺の状態を計測する質量センサを同社が提供、また、H2A搭載の画像圧縮伝送装置や種子島上空のラジオゾンデによる気象観測も同社が担当した。
あらためて同社の製品群をみてみると、全国1300地点に配備された気象観測システム“アメダス”をはじめ、ダムや河川の水位測定装置、緊急地震速報の受注装置や計測震度計、航空管制システムの通信制御装置など、“測定技術”を中核に気象防災と宇宙航空分野で独自のポジションをつくっている。今期は売上85億円、経常利益4億円、中計で掲げた目標「売上高110億円、経常利益率10%」は射程に入りつつある。
しかし、“そこから先”が見えない。個々の製品がトップレベルにあることに異論はない。しかし、官需主体ゆえの事業条件はリスクであり制約でもある。親会社IHIとのシナジーはもちろんであるが、運用受託などサービス部門に可能性は見出せないか。測定装置の一納入メーカーから環境観測・防災分野の総合エンジニアリング企業へ、経営のイニシアティブを官から自社へ、という大きな戦略の流れを創ることで可能性は格段に広がる。
今週の”ひらめき”視点 11.30 – 12.04