医療用医薬品生産高(2026年)など市場動向を予測・展望
-未来に対する不透明感高まる製薬市場の将来を測る-
1.市場概況
わが国の製薬市場は21世紀という新たな時代に⼊り、市場の低迷状態が鮮明になってきた。かつて優良成⻑産業とみられていた製薬市場について、「もはや製薬市場は特別な存在ではなくなっている」という業界関係者の⽅が多数派といえるのではないか。
この背景には、世界の先進諸国と同様、社会保障制度を持続するために医療費の伸びを⼤幅に抑制する必要に迫られ、わが国政府が打ち出したさまざまな抑制策がある。政府としては、国⺠に直接負担を強いることになれば厳しい批判にさらされ、政権を維持することが危うくなりかねず、そのため国⺠の批判が少ない製薬業界を狙い撃ちにし、医療費の抑制を⾏った。政府は『国⺠皆保険制度の持続』と『イノベーションの推進』を掲げていたが、結果的に前者の⽅が優先される結果となった。その政策として「薬価制度の抜本改⾰」が打ち出されたが、収益性悪化による新薬開発への悪影響など製薬市場の競争⼒低下が懸念されており、市場の不透明感は高まりをみせている。
2.注目トピック
薬価制度の抜本改革
2017 年12 月に中医協において『薬価制度の抜本改革』の全容が決定した。そこでは製薬企業や医薬品卸にとって利益確保の大きな存在となってきた長期収載品の薬価を段階的に後発医薬品レベルまで引き下げる新たなルールが導⼊され、新薬創出等加算も⾰新性の⾼い新薬に絞り込むとの考えが⽰された。さらには効能追加に伴う市場拡⼤に対応するため年4回の収載機会に350億円超の品⽬を再算定するほか、毎年薬価改定を全ての医薬品卸から調査対象を抽出し、全品⽬の薬価調査を実施するなど、さまざまな改⾰内容が決定された。
こうした厚労省案に対し、国内外の製薬団体は新薬創出等加算の縮⼩に猛反発したことを受け、厚労省は当初案を修正し、企業指標の範囲に上限を決め、類似薬効⽐較⽅式について2020年度改定までの暫定措置として改めて検討する対応案が⽰され、1年間に渡って議論してきた『薬価制度の抜本改⾰』が決着した。製薬業界としては不本意ながら、政府に押し切られた格好となった。
この結果、製薬企業では先⾏き不透明感が強まり、経営戦略や経営計画の⾒直しを迫られることになった新薬開発の難度が急上昇し競争が激化している製薬企業にとっては死活問題といっても過言ではない状況となった。
『薬価制度の抜本改革』が決着してから丸1 年が経過し、この間製薬市場では長期収載品のシェアが縮小傾向となり、アステラス製薬や中外製薬などが自社の所有していた長期収載品を製薬市場への新規参入を目指す企業に譲渡する動きがみられた。その他にも大手製薬企業を中心に希望退職者を募る動きが活発化し、MR 数も減少傾向が鮮明になってきているなど医療用医薬品を中心とした製薬市場は未来に対する不透明感を一層増してきている。
3.将来展望
製薬業界は平成の30年間と少なくとも今後10年間、『迷⾛の時代』の中を⽣き抜くことになる。なぜ『迷⾛の時代』かについては、製薬企業や医薬品卸はこれまでとはまったく異なる経営環境の下で、経営を持続する道を⾒出していく必要に迫られることになるからだ。
今後、しばらくの間はバイオ医薬品が中⼼となり、医薬品開発が推進されることが予想される。だが、早ければ今後10 年以内に患者個々に効果がある『個別化医療』に対応した医薬品が開発される可能性もある。次世代シーケンサーやAI 創薬の進化によって、その可能性が⾼まり、医薬品のあり⽅を⼤きく変化させるきっかけとなることもありうる。
⼀⽅、後発医薬品は数量ベースでの政府⽬標80%を達成した後、その経営のあり⽅を効率化しつつ、海外への積極的な展開も必要になる。その間、業界再編が今後10 年で急速に進展し、数社に集約されることが予想される。
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製薬企業の大きな収入源が消える
調査要綱
2.調査対象: 行政当局、製薬企業、医薬品卸、医療機関、薬局、学識経験者、業界紙関係者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、ならびに文献調査併用
<医療用医薬品市場とは>
本調査における医療⽤医薬品市場とは、⽇本国内において⽣産・輸⼊される医療⽤医薬品により構成される市場を指す。
<市場に含まれる商品・サービス>
医療用医薬品
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