2020年の花き小売市場規模は、コロナ禍の影響により前年比97.9%の9,668億円の見込
~食品スーパーやホームセンター等の量販店やネット通販等は販売が好調で、前年を上回る見込~
1.市場概況
花き類の末端市場は長らく1兆円規模であったが、2016年より1兆円を割込み、2020年の花き小売市場規模は9,668億円(前年比97.9%)を見込む。2020年はコロナ禍の影響により、花き小売店が取り扱う高級ギフト需要および、学校行事(卒業式、入学式等)等のイベントやホテル向けの婚礼宴会、葬儀の規模縮小などの業務需要の大幅減少に加え、造園・緑化業における官公庁の予算縮小や民間受託案件のコストダウンなどが影響している。
一方で、ホームユース需要は、安価で鮮度のよいスーパーマーケット、ホームセンターなどの量販店にシフトしつつあるとみられ、今後もこうした傾向は続くと見受けられる。特に2020年は巣籠り消費の影響により、食品スーパーやホームセンターで花・植物を購入するケースが増えている。
2.注目トピック
フラワーロス(生産者支援)の取組み
新型コロナウイルス感染拡大で、卒業式や入学式、ハロウィンやクリスマス等のイベントの中止や規模縮小、商業施設や飲食店等の休業が相次ぎ、彩りを添えるはずの多くの花が廃棄される「フラワーロス」という課題が急浮上した。
花業界では、以前から農作物に比べて廃棄率の高さが問題となっていた。規格外の花は、茎の長さや太さが不揃いであったり、花の大きさが基準に満たず、通常ならば花市場に出回らず廃棄される。現在、生花の生産量のうち約2~3割が規格外で廃棄されている。廃棄率が高いため、結果として花の販売価格が高くなり、花の購入の敷居が高くなり、花の新規購入者が増えないという悪循環を生んでいる。
コロナ禍で浮上したフラワーロスの問題に対しては、現在、hananeやRIN、ジャパンフラワーコーポレーション等のような企業が取組んでおり、普段、花を購入しない若年層が花を購入する機会に繋がっている。
3.将来展望
新型コロナウイルス感染拡大により業務需要は激減し、また、対面販売は苦戦を強いられている。一方で、ネット販売は好調で、どの企業も前年から大きく売上を伸ばしている。このような先行きが不透明な情勢では、時代のニーズに応え迅速に対応することが重要である。
花きビジネスの現状のキーワードとしては、①非リアル販売の対応(ネット販売、ドライブスルー方式販売)、②ホームユース向けの商品開発(イージーケア商品)、③今まで花を購入していない若年層へのSNS・サブスクを利用したプロモーション、④フラワーロス等の生産者支援、等である。これらのニーズに応えることが求められており、新型コロナウイルス感染拡大の危機を逆にチャンスと捉え、新たな商品やサービス展開を図っていく必要がある。
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調査要綱
2.調査対象: 種苗メーカー、花き卸・小売業、切花輸入業、Webメディア事業など
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<フラワー&グリーンビジネス市場とは>
本調査におけるフラワー&グリーンビジネス市場とは、家庭・オフィス・店舗などの装飾、SNSやサブスク、ギフトなどで使用される植物及び関連商品を対象とする。
<市場に含まれる商品・サービス>
切花、花壇用苗物、花木、球根、鉢物、芝・グランドカバープランツなどの植物ほか、プリザーブドフラワー、生花祭壇など
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