ファッション産業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)にみるサステナビリティ(持続可能性)との親和性
1.調査結果概要
本調査におけるファッション産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、サプライチェーン(供給網)の川上から川下、そして消費者まで、デジタルベースでつなげることを「全体的DX」とし、クラウドやビッグデータ、ソーシャル技術などを用いて業務効率化を図ることを「局所的DX」と定義する。
本調査に関連し、2021年6月に国内主要アパレルメーカー、小売業、卸・商社68社に対し、ファッション産業におけるDXの導入状況や課題等について法人アンケート調査を実施した。ファッション産業の活性化について、DXが最も影響を与える分野(業務プロセス)として回答が多かったのが「販売・販売促進」であり、最も影響を与えない分野として回答が多かったのが「企画」という結果であった。
DXが最も影響を与えるとする販売・販売促進では、現下、OMO(Online Marges with Offline:オンラインとオフラインの融合)やEC化が進んでいる。加えて店舗における体験価値を提供するケースが増えている。
一方、DXが最も影響を与えないとされる企画では3D CADの普及は進んでいるが、たとえばAI(人工知能)によって自動的にデザインを行ったり、需要予測からAIが売れ筋になると予測する柄などを生成する技術は途上にある。企画における価値判断はまだ人による経験則に優位性があり、属人性やその技術に高い付加価値がある。
2.注目トピック
ファッション産業におけるDXのポテンシャル
これまでファッション産業は情報発信を行うことでトレンド(流行)を創出し、大量生産と大量消費を想定したビジネスモデルを追求してきた。しかし、スマートフォンの普及で消費者行動が変化するなか、消費者による情報発信や消費者間で情報のやりとりが可能になるなど、供給サイド主導によるトレンド形成が難しくなった。その結果、需要予測が困難となり、過剰生産、過剰在庫が課題となってきた。
こうしたなか、ファッション産業において過剰生産を抑止する2つの手法は、①需要予測の精度を高くする、②マスカスタマイゼーション化であり、DXによって達成することができるものと考える。
しかし、サプライチェーン全体を一気通貫でデータ共有させる意味合いでの「全体的DX」は達成が難しい。その理由は、日本においては海外にみられるような巨大消費者向けデジタル・プラットフォームの展開が乏しく、また各アパレル企業のECサイトが分散している状態にあるため、データが集まりにくいことにある。
一方で、ファッション産業は基本的にはDXとは親和性があるものとみており、局所的であってもDXを進めることが、中・長期的にはサステナビリティ(持続可能性)につながるものと考える。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】BCパターン
販売・販売促進のデジタル化のポテンシャル
管理のデジタル化のポテンシャル
採寸のデジタル化のポテンシャル
調査要綱
2.調査対象: ファッションのDXに関わる主要企業(国内アパレルメーカー、小売業、卸・商社等)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査および文献調査併用
<ファッション産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とは>
本調査におけるファッション産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、サプライチェーン(供給網)の川上から川下、そして消費者まで、デジタルベースでつなげることを「全体的DX」とし、クラウドやビッグデータ、ソーシャル技術などを用いて業務効率化を図ることを「局所的DX」と定義する。
なお、本調査に関連し、2021年6月に国内主要アパレルメーカー、小売業、卸・商社68社に対し、ファッション産業におけるDXの導入状況や課題等について法人アンケート調査を実施した。ここでは同アンケート調査の分析結果の一部を公表する。
<市場に含まれる商品・サービス>
アパレル製品(衣類)
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