コロナ禍からの回復以上の成長を見せるラグジュアリーマーケット
~新富裕層とインバウンドの増加で活況、高額品ほど売れる状況に~
1.調査結果概要
昨今、国内の富裕層や超富裕層をターゲットとしたビジネスが拡大している。富裕層の資産は給与所得に加え、株式配当、不動産収入など複数の収入源から構成されることが多く、コロナ禍以降は株高で、資産を増やすには好都合な状況が続いている。さらに、昨今はインターネットを活用した株式投資や動画配信などで成功している「新富裕層」、来日頻度が高くその際の消費額が多い「インバウンド(訪日外国人客)富裕層」が存在感を増していることも、市場の活況を後押ししている。
2023年の富裕層をターゲットとするラグジュアリーマーケット(主要5分野)の市場規模については、大半の分野でコロナ禍前の2019年を上回る水準となったが、中でも2019年比で最も伸びたのは、ラグジュアリーアパレル・服飾雑貨市場で、2023年の総小売市場規模は2019年比169%の1兆6,800億円と推計した。国内富裕層の旺盛な消費拡大と円安を背景としたインバウンド需要の拡大が寄与した。
2024年以降も、国内ラグジュアリーマーケットは好調に推移している。その背景としては、インバウンドの購買行動の影響が大きい。多くの高級ブランドで値上げが繰り返されているが、円安で日本での買い物には未だ割安感があることから、高額品の購買に拍車がかかっている。また、国内の富裕層についても、高級腕時計やアート(絵画や芸術作品)などは嗜好品でありながらも投機目的にもなりうる商材は特に高額であっても出費を惜しまない様子が見られる。将来的にブランドによる値上げ、あるいは二次流通での価値上昇が見込まれる高額品ほど好調であることから、ラグジュアリーマーケットは今後も拡大していくものとみる。
2.注目トピック
新富裕層の囲い込みを進めるビジネスの活況
新富裕層とは、ベンチャー企業経営者や投資家、YouTuberやインフルエンサーなど、一代で財を成した20~40代前半を中心に構成される。新富裕層は従来の富裕層とは稼ぐ方法や資産に対する考え方、またライフスタイルなど全般にわたり、何もかもが異なると言われている。そして、その大部分は勤労収入が多く、単身者の場合は好きなタイミングで自由にお金を使える柔軟さも持ち合わせている。そのため、高額品やサービスを扱う企業では新富裕層の囲い込みが進んでおり、中でも百貨店やオークション企業でその傾向が顕著である。
こうした新富裕層を対象に、百貨店各社は単価の高い外商サービスを強化しており、サービス内容や接客環境の充実、外商組織の改編に取り組む様子がみられる。都心部店舗では20~30代の若い外商客が増えていることを受け、同年代の外商員の増員が進む。同年代のトレンドを熟知した外商員が的確なアドバイスや提案を行うことが可能であることから、多層化する外商客の個々のニーズに合わせた対応を行っている。
またオークション企業では、SNSでの情報発信やYouTubeでのライブ配信、取り扱い分野の拡充などに取り組んでおり、結果として新富裕層の取り込みにつながっている。アート(絵画や芸術作品)や高級腕時計など今後価値上昇が見込まれるアイテムが多く投入されることも、オークションが新富裕層の注目を集める一因である。中でもコンテンポラリーアートは、ラグジュアリーブランドとのコラボレーションも活発に行われていること、ストリートカルチャーとの結びつきが強いことから、若年層へと間口が広がっている。
オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,000円でご利用いただけます!
【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】BCパターン
酒、レストラン
ビジネスジェット、クルーザー
調査要綱
2.調査対象: 「ファッション」「ライフスタイル」「モビリティ」「ホテル&レジャー」「ビューティー&ヘルス」の5分野に属する事業の展開企業及び、有力小売企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)および文献調査併用
<富裕層をターゲットとするラグジュアリーマーケットとは>
本調査における富裕層をターゲットとするラグジュアリーマーケットとは、富裕層をターゲットとした高級商材やサービスを対象とし、矢野経済研究所独自の基準で定義している。対象分野は「ファッション(ジュエリー、ウォッチ、アパレル・服飾雑貨、着物)」「ライフスタイル(アート、家具・インテリア、和洋酒、レストラン)」「モビリティ(自動車、ビジネスジェット、クルーザー)」「ホテル&レジャー(宿泊施設、ゴルフ会員権)」「ビューティー&ヘルス(美容医療、エステティックサロン、老人ホーム)」の主要5分野とした。また、本調査においては「消費活動」に関わるビジネスとし、「資産形成」にのみ関わるビジネスは対象外としている。
<市場に含まれる商品・サービス>
ジュエリー、ウォッチ、アパレル・服飾雑貨、着物、アート、家具・インテリア、和洋酒、レストラン、自動車、ビジネスジェット、クルーザー、宿泊施設、ゴルフ会員権、美容医療、エステティックサロン、老人ホーム、百貨店、オークション、ブランドの独自サービス
出典資料について
お問い合わせ先
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。