プレスリリース
No.3603
2024/08/20
高機能フィルム市場に関する調査を実施(2024年)

2022年、2023年とほぼマイナス成長であった高機能フィルム市場は、2024年に入り好転する見込み
~PETフィルム、半導体製造用テープ、PIフィルム、MLCCリリースフィルムなどの主要な高機能フィルムの2024年出荷量は軒並み対前年比2ケタ成長を示す見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、ディスプレイ・光学、電気・電子、一般産業用のベースフィルム及び加工フィルムなど、国内外の高機能フィルム市場(日本、韓国、台湾)を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

主要な高機能フィルムの市場規模前年比推移・予測
主要な高機能フィルムの市場規模前年比推移・予測

1.市場概況

 2024年の主要な高機能フィルムの出荷数量は前年比2ケタの成長を見込む。
2022年から2023年にかけて前年までのコロナ禍の巣ごもり特需の反動により、スマートフォンやタブレット端末、ノートPC、大型TVなどの最終製品の需要が減少し、最終製品メーカーや部材メーカーなど川下市場で展開するユーザー企業各社が資材の在庫調整を進めた。そのため、部材の生産工程で使用される保護フィルム、リリースフィルムなどの副資材やそれらのベースフィルム(原反)など高機能フィルムの需要が大きく減少した。2023年末頃にはユーザー企業サイドの在庫調整も一段落し、2024年以降の高機能フィルム市場規模は実需とリンクした増減を示す見込みである。

 近年の主要な高機能フィルム出荷量の前年との増減率の推移を見ると、2022年にはPETフィルムが前年比17.9%減、半導体製造用テープが同10.5%減、PIフィルムが同19.7%減、MLCCリリースフィルムが同30.9%減となった。2023年はPETフィルムが同0.4%減、半導体製造用テープが同2.3%増、PIフィルムが同10.6%減、MLCCリリースフィルムが同19.8%増だった。2024年見込みはPETフィルムが同13.1%増、半導体製造用テープが同9.2%増、PIフィルムが同27.0%増、MLCCリリースフィルムが同18.3%増になると推計する。

2.注目トピック

用途・市場から技術・製品への焦点シフトが、小規模でも尖った製品開発につながる

 FPC(Flexible printed circuits)やディスプレイ、半導体は、日本の高機能フィルムメーカーにとって事業の柱であるが、近年ではTVやスマートフォンなど最終製品市場が成熟し、そこに搭載される部材も新しいものが生まれにくくなっている。
FPCやディスプレイ関連フィルムは本格的な市場形成から約四半世紀が経過しており、高機能フィルムメーカーにとって「種から育ててきたが既に実が成り収穫が完了した」用途であると言える。高機能フィルムメーカーに求められているのは新たな収穫に向けた「種蒔き」や「新品種の開発」だろう。ここでは従来型のマーケットインの考え方よりも、高機能フィルムメーカー各社がそれぞれ持つ技術や製品の特徴や強み、差別化できるポイントなどを洗い出し、それらをどこでどのように展開するかを突き詰めるというプロダクトアウト型の開発が求められている。

3.将来展望

 これまで日本の高機能フィルムメーカーでは、用途や市場にフォーカスしたマーケットイン型の開発を進める中で、ユーザー企業(最終製品メーカー)や部材メーカー、コンバーターとが協業して新たな製品を開発し、大きく育ててきた。しかし、マーケットイン型からプロダクトアウト型の開発へのシフトを進めるにあたっては、どこにどんな芽が出るかわからない状態で開発し、出てきた芽を大きく育てていかなければならない。そのためには、これまでには無かった協業の取組みが求められるだろう。
競合するフィルムメーカー同士が、ある部分でタッグを組み、お互いの材料を持ち寄って顧客や用途を共に開発するということも考えられる。既に「収穫期」にある既存のマーケットでは競合しぶつかり合う材料やフィルムメーカーであっても、市場への種蒔きの段階では、芽を出し根が張るまで協働で育てていくということを考えても良いだろう。
新たな市場のために種を蒔き、大きく育てるという展開は、日本の高機能フィルムメーカーがこれまで蓄積してきた技術、開発してきた製品を活かし、競争力のある次の事業の柱を立てるチャンスにもつながる。そのチャンスを逃さないためにも、企業の垣根を超えた提携・連携が求められていると考える。

オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,000円でご利用いただけます!

【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】
Aパターン
  • セグメント別の動向
  •  PETフィルム:特需とその反動による市場混乱も一段落、2024年は各社とも販売量を増やす
     PIフィルム:2年連続での市場縮小も2024年にはV字回復、以後は年間8%の成長率が期待される
     半導体製造用テープ: AI、ADASなど先端半導体需要拡大を睨んだ各社の設備投資が活発化
     MLCCリリースフィルム:2025年の主要メーカーの合計生産能力は2021年の1.4倍まで拡張
  • 注目トピックの追加情報
  • 将来展望の追加情報

  • 以下の 利用方法を確認する ボタン↓から詳細をご確認ください

    調査要綱

    1.調査期間: 2024年4月~7月
    2.調査対象: フィルムメーカー、コンバーター(日本、韓国、台湾)
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

    <高機能フィルムとは>

    本調査における高機能フィルムとは、ディスプレイ・光学、電気・電子、一般産業用のベースフィルム(原反)及び加工フィルムを指し、PETフィルム、PIフィルム、MLCCリリースフィルム、半導体製造用テープ(BGテープ、DCテープ、DAF)、リサイクルフィルム等が含まれる。


    <市場に含まれる商品・サービス>

    PETフィルム、PIフィルム、MLCCリリースフィルム、半導体製造用テープ(BGテープ、DCテープ、DAF)、リサイクルフィルム(Film to Film)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2024年07月30日
    体裁
    A4 254ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

    お問い合わせ先

    部署
    マーケティング本部 広報チーム
    住所
    〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
    電話番号
    03-5371-6912
    メールアドレス
    press@yano.co.jp
    ©2024 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
      本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
      報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
      利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。