プレスリリース
No.3716
2025/01/30
自動車向けカーボンニュートラル燃料世界市場に関する調査を実施(2024年)

2035年の自動車向けバイオエタノール世界消費量を1,775億Lと予測(Aggressive予測)
​~新興国における義務混合率の引き上げと先進国における排出量削減推進、燃料規制厳格化を背景に市場拡大を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、脱炭素化の影響を受ける世界の自動車産業を調査し、自動車向けCN(カーボンニュートラル)燃料世界市場の概況、分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
ここでは、2035年までの自動車向けバイオエタノールの世界消費量・平均混合率予測について、公表する。
自動車向けバイオエタノール世界消費量予測
自動車向けバイオエタノール世界消費量予測

1.市場概況

 現在、世界は新興国を中心とした人口増加や経済成長によりエネルギー需要が高まる一方、排出量削減の取り組みにより脱炭素化が求められる「More Energy, Less Emissions」という難題に直面している。
また、ロシアによるウクライナ侵攻を発端としたエネルギー安全保障気運の高まりも相まって、近年バイオ燃料、合成燃料をはじめとするCN(カーボンニュートラル)燃料の重要性が増している。
特にバイオ燃料は、農業振興、燃料需要増加への対応、貿易収支改善、脱炭素化を一挙に解決する政策としてブラジルやインド、インドネシアなどの新興国で強力に推進されている。欧米諸国では、高い排出量削減効果を有する次世代バイオ燃料の普及拡大に加え、合成燃料やグリーン水素の実証プロジェクトが立ち上がり、パイロット生産が始まっている。
自動車メーカー(OEM)各社は、足下のBEVシフト減速を受けて、「テールパイプエミッションゼロ」からWell-to-Wheelベースの脱炭素化を目指す現実路線に舵を切っており、CN燃料適合、電動パワートレインとの組み合わせを重視したエンジン開発で、Scope3(スコープ3)の排出量削減を目指している。

2.注目トピック

バイオエタノール世界市場動向

 2023年における自動車向けバイオエタノール世界消費量は1,096億4,700万L、ガソリンへのバイオエタノール平均混合率は7.1%である。

消費量の多い米国ではE10が主流であり、平均混合率は10.0%である。またカリフォルニア州では低炭素燃料基準(LCFS:Low Carbon Fuel Standard)の厳格化により、排出量削減効果が高いE85(バイオエタノール85%にガソリンを混合した燃料)の消費量が2019年比で約3倍に拡大している。
インドでは、豊富なサトウキビ生産と強力な政策推進により、バイオエタノール消費量は2019年比で3倍以上に拡大し、平均混合率が10%を突破している。しかし、バイオエタノールの需要拡大と天候不順により、サトウキビの需給逼迫を招いており、その余波はブラジルにも波及している。
一方、ブラジルは砂糖価格の高騰によるサトウキビエタノール生産の減少をトウモロコシエタノールが補い、平均混合率は45.9%と高位で推移する。

3.将来展望

 本調査では導入が進む自動車向けCN燃料の中で、2035年までの世界の自動車向けバイオエタノール消費量、ガソリンへのバイオエタノール平均混合率について、それぞれの前提条件をもとにAggressive予測とConservative予測、2種類の予測をする。
Aggressive予測では各国の政府主導による混合率の引き上げが目標通りの進捗をみせるとともに、排出量削減目標の達成に向けたCN燃料としてのバイオエタノール需要の拡大、食料と競合しない「次世代バイオエタノール」の製造コスト低減、EVシフトの減速などを前提条件とする。一方、Conservative予測では各国の混合率引き上げ目標の未達、排ガス規制の厳格化やEVシフトの加速によるバイオエタノール需要の低下、バイオエタノール原料供給への懸念​、「次世代バイオエタノール」の製造コストの高止まりなどを前提条件としている。

バイオエタノールは、インドは2025年4月までに全土でのE20達成が目標に、ブラジルでは2030年のE30義務化導入が検討され、欧州や米国でも次世代バイオエタノールの普及拡大が計られている。Aggressive予測でのバイオエタノール消費量・平均混合率は2030年に1,585億L・9.5%、2035年には2023年比61.9%増の1,775億L・10.5%になると予測する。
一方、Conservative予測のバイオエタノール消費量・平均混合率を2030年に1,203億L・7.2%、2035年には2023年比17.2%増の1,285億L・7.6%と予測する。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2024年10月~12月
    2.調査対象: 自動車メーカー、燃料事業者等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話取材、ならびに文献調査併用

    <バイオエタノール消費量予測について>

    本調査では、脱炭素化に向けて変革を迫られる自動車産業(自動車メーカー、自動車部品サプライヤー)やエネルギー企業の動向を調査した。
    ​BEVシフトが減速する中で、もう1つの脱炭素手段としてのCN(カーボンニュートラル)燃料は、長期的な視点では合成燃料が有望視されるが、短期的にはバイオ燃料が現実的な選択となる。本調査では、自動車向けに燃料として使用されるバイオエタノール・バイオディーゼル、バイオガス、水素を対象としている。
    本調査におけるバイオエタノール消費量は自動車向けに燃料として消費されるバイオエタノールを対象とし、平均混合率は自動車向けに燃料として使用されるガソリン消費量(バイオエタノール分を含む)を分母として、そのうちのバイオエタノール消費量を分子として、算出した。

    ※参考資料
    「脱炭素化が変える自動車産業に関する調査を実施(2024年)」(2024年12月11日発表)
    https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3675

    <市場に含まれる商品・サービス>

    自動車向けカーボンニュートラル燃料(バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガス、水素)、FFV(フレックス燃料車)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2024年12月26日
    体裁
    A4 264ページ
    価格(税込)
    165,000円 (本体価格 150,000円)

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