2021年度の国内ホームセンター小売市場規模は前年度比97.5%の4兆1,600 億円になると予測
~職人向けのプロショップ専門店が好調となる一方、コロナ禍での需要増の反動減によりマイナスとなる見通し~
1.市場概況
一般社団法人日本DIY・ホームセンター協会によると、国内ホームセンター小売市場規模は2000年代に入り、年率1%台の成長率に鈍化し、2006年度にはじめてマイナスとなった。
近年、2018年度が前年度比100.1%、2019年度も同99.9%とほぼ横ばいに推移してきたが、2020年度はコロナ禍で急激に需要が拡大し、2020年度の国内ホームセンター小売市場規模は、前年度比107.0%の4兆2,680億円と近年にないプラス成長となった。要因としては、ソーシャルディスタンスを保ちやすい買い物空間として消費者から支持されたことや、マスクやアルコール、アクリル板、ビニールシートなどのコロナ対策商品が販売好調となったこと、外出自粛の長期化によってガーデニング関連商品やDIY商品が市場をけん引したことなどが挙げられる。
弊社の調査によると、対象企業25社のホームセンター事業売上高は24社が前年度よりプラスとなり、マイナスとなったのは1社と殆どの企業が前年度業績を上回る結果となった。テレワークの増加により自宅で働く場所を確保するための収納用品や、DIY商品、ガーデニング関連用品の需要が顕著であった。また、在宅時間の増加によって、癒しを求めてペット関連商品の需要が増えたことも特徴だった。
一方で、ホームセンター事業者では、依然として合従連衡の動きは活発であり、M&Aによって業績を拡大している。ただし、M&Aもコロナ禍での需要拡大も一過性の事象であり、中長期的にみると厳しい市場環境であることは間違いない。
2.注目トピック
プロショップ専門店が好調
本調査におけるプロショップ専門店は、建築施工事業者や農業関連事業者などのプロ職人に向けた資材や工具を販売するワンストップ型の専門店を指す。つまり、古くから存在するワンカテゴリーの木材店や工具店、金物店は対象外としている。
プロショップ専門店の経営には、豊富な仕入れルートを持ち、品揃えが必要であるため、参入企業はホームセンターを展開するような体力のある企業が中心となる。その他、住宅関連商社の株式会社小泉の「プロストック」や、エアコン工事請負を本業とする「電材買取センター」、株式会社島袋の「シマコーポレーション」、新潟の株式会社ベストBKMの「ベスト資材」など、様々な企業が参入している。
2020年度のプロショップ専門店の小売市場は二桁成長を遂げ、前年度比110.9%の2,130億円と推計した。2020年度は、戸建て住宅のリフォーム需要やエアコンまわりの空調設備品などが好調となり、プラスに推移した。コロナ禍にあっても積極的に新規出店を継続した企業が殆どであり、新店の売上高寄与と既存店の好調が奏功した。特に店舗数の多い「コーナンPRO」は新規出店を加速しており、ここ数年はプロショップ専門店を年間10店舗ペースで展開するなどプロショップ専門店市場をけん引している。
2021年度も新規出店の増加や既存店売上高も引き続き好調に推移する見通しで、2021年度のプロショップ専門店小売市場を前年度比108.0%の2,300億円と予測する。古くからの木材店や金物店を代替するショップとして、既存市場からシェアを奪うゲームチェンジ(従来の枠組みからの切り替え)が急速に行われており、今後もプロショップ専門店小売市場は拡大を続けていくと考える。
3.将来展望
今後の出店計画やホームセンター事業者各社の売上見込みなどから、2021年度のホームセンター小売市場規模を前年度比97.5%の4兆1,600億円になると予測する。
ホームセンター小売市場を中長期的にみれば、人口減少に伴うマーケット規模の縮小や、他小売業態との競合が激化していく見通しである。店舗数も減少基調であることを考えると、市場は横ばいあるいは微減で推移していくものと考えられる。
なお、各社ともデジタルマーケティングを推進しており、非会員客からデジタル会員への登録を促し、リアル店舗への来店頻度を高めるなど新たな顧客獲得手法が成功すれば、コロナ禍で戻ってきた顧客を今後も継続して囲い込むことが出来ると考える。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
M&Aによるノウハウ供給・業種を超えた出店
デジタルマーケティングの推進
調査要綱
2.調査対象: DIY・ホームセンター業者に携わる小売業、メーカー、卸売業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに郵送アンケート調査併用
<ホームセンター小売市場とは>
本調査における国内ホームセンター小売市場規模については、2014年度~2020年度の実績値は一般社団法人日本DYI・ホームセンター協会資料から引用し、2021年度は矢野経済研究所の予測値である。
<市場に含まれる商品・サービス>
DIY用具・素材、電気、インテリア、家庭日用品、園芸・エクステリア、ペット、カー・アウトドア、カルチャー、サービス業務、その他
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