2020年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品市場規模は前年度比2.8%増の1,452億円
栄養剤・流動食・栄養補給食品メーカーは、在宅高齢者の増加を背景として、在宅市場、ONS(経口的栄養補助)に注力
1.市場概況
2020年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品の市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比102.8%の1,452億円と推計した。2020年度の内訳を見ると、栄養剤市場の規模は前年度比103.7%の368億円、流動食市場の規模は前年度比102.2%の811億円、栄養補給食品市場の規模は前年度比103.4%の272億円となった。傾向としては、栄養剤は保険が適用されることから在宅向けに、また、流動食は入院時食事療養費との差益が発生するため病院や高齢者施設にメリットがあることから入院患者や入所高齢者向けに伸びている。栄養補給食品は、高齢者の低栄養を避ける手段として需要が安定しており、高齢者人口の増加、そして政府による健康長寿の政策推進などを背景に市場は拡大を続けている。
2.注目トピック
栄養剤、流動食、栄養補給食品を取り巻く市場環境の変化
栄養剤・流動食・栄養補給食品メーカーは、腎不全・肝機能障害・免疫賦活・慢性呼吸器不全などの病態別製品やPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃ろう造設術)患者向け専用製品、ソフトバッグ化、容器形状の工夫、微量元素や食物繊維の添加、味や食感の改良、固さの調整、補食対応、高カロリータイプ、加水タイプなどの製品開発を進めている。
また、栄養士資格者によるサポート体制の整備、在宅マーケットや健常者の栄養補給を想定した流通対策(ドラッグストア店頭配荷、自社HPや専門ネット通販の活用、在宅医療サービス企業や食品宅配業・医薬品卸・医療用食品卸などと提携)、NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)への販促強化、製造ラインの増・新設、製造の受委託強化、海外展開などを進めている。
その結果、メーカー間の販売競争は更に激しさを増しており、製品間のシェア拡大、上位メーカーによる寡占化が進行しつつある。また、競争激化や得意分野への事業領域集中から市場撤退や事業譲渡を実施したメーカーも出ている。一方、新規参入もあり、活発な製品改廃も相俟って市場は変動期にある。
3.将来展望
栄養剤市場は保険適用が継続し、病院のDPC/PDPS(診断群分類別包括支払方式)化の継続ないしは進展がある限り、院内使用から在宅療養での使用への流れは変わらない。在宅高齢者の増加は非健常高齢者の増加を意味し、栄養剤にとって追い風となる。薬価の改定はマイナス要因で、量的拡大は続くが、金額的な伸びは期待できない。今後も薬価改定を繰り返しながら栄養剤市場は微増推移する見込みである。
流動食市場は2012年頃が変調期となり、その後は低成長、微増へ移行した。今後についても流動食市場全体は鈍化ペースが続き、年率1~2%の成長率になると考えられる。固形タイプ、補食用途、低栄養対応、高カロリー、高たんぱく、経口投与などの製品は支持されており、液体タイプの総合栄養が漸減する一方、新しい製品群が落ち込み分をカバーすると思われる。
栄養補給食品市場は、高齢者の低栄養を改善する一つの手段として、高齢者施設の入居者の補食(おやつ・デザート)需要が安定的に伸び、同様に在宅高齢者(未病や健康な高齢者含む)の取り込みで、今後も3%程度伸長する見通しである。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
流動食
栄養補給食品
乳酸菌の活用
調査要綱
2.調査対象: 栄養剤・流動食・栄養補給食品メーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話等によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<栄養剤市場、流動食市場、栄養補給食品市場とは>
本調査においては、栄養剤市場は経口、経管(経鼻、PEG)から投与する医薬品である総合栄養剤を、流動食市場はいわゆる総合栄養と呼ばれる、エネルギー、三大栄養素、及びミネラル、ビタミン等がバランスよく含まれている液状、半固形状、固形の食品総合栄養流動食、及び病態に合わせた組成の流動食(濃厚流動食)を、栄養補給食品市場は流動食に組成は近い関連製品で、総合栄養ではないが高齢者等の栄養摂取に補完的に用いられる食品、栄養素や栄養価の補完に特化した製品を対象として、メーカー出荷金額ベースで市場規模を算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
栄養剤、流動食、栄養補給食品
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