2021年度の国内ワーケーション市場規模を約700億円と見込む
~テレワーク普及でワーケーション実施者が増加、ニーズの顕在化が今後の市場成長のカギ~
1.市場概況
ワーケーション(workation)とは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語である。ワーケーション市場は、コロナ禍以前はテレワークに場所の裁量が認められる人や、いわゆるノマドワーカー(オフィスではなく喫茶店やコワーキングスペースなどさまざまな場所で働く人)と呼ばれる人たちで形成されていたごく一部の市場であった。
しかし、2020年のコロナ禍を契機に一気に多くの企業でテレワークが普及し、個人で費用を負担する実施者(欧米型のワーケション実施者)が増加したことで、2021年度の国内ワーケーション市場規模は約700億円を見込む。2022年度に入ると、多くの企業では対面によるコミュニケーションを重視する狙いでテレワーク勤務とオフィス勤務のハイブリッド型勤務を進めている。一方で人材採用面で有利に進める狙い、あるいは通勤交通費やオフィス賃料などのコスト削減効果を目的として居住地や通勤手段の制限撤廃の動きもある。また、地方創生のための戦略としてワーケーションを採用する自治体も増えており、政府も関連国家予算を割り当てている。そうしたことから、ワーケーションの実施者は徐々に増加し、2023年度のワーケーション市場は1,000億円を越える規模になると予測する。
2.将来展望
ワーケーションを受け入れる地方自治体・団体や、ワーケーションを実施する空間や研修プログラムを提供する関連サービス事業者、ワーケーションを実施する企業は急速に増えており、さまざまな取組みが窺える。それに伴い、ワーケーションの実施者(サービスを享受する働き手)も増加している。しかしながら、日本国内においては雇用者である企業の制度整備が進まず、ワーケーション市場の基盤が形成されていない状況であることは否めない。
現在、市場を牽引しているのは、個人で費用を負担するワーケーション実施者(欧米型のワーケーション実施者)である。彼らの多くは、暗黙の了解のうちに実践していると推察される。今後、国内のワーケーション市場が今回の試算規模よりもさらに拡大していくためには、ワーケーションを実施する企業がワーケーション制度をどのような内容で運用するかを定めること、すなわち企業が宿泊費や研修・合宿にかかるサービス費用を負担する日本型ワーケーション制度の整備が必要である。
今後ワーケーション市場が拡大していくためには、休暇を過ごす環境に滞在しながら仕事をする観光需要の代替ではない新しいニーズを生み出す、すなわち企業がワーケーションの実施に何らかの投資をすることが重要であると考える。
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ワーケーション関連サービスに参入する企業の動向
ワーケーションを実施する企業の動向
調査要綱
2.調査対象: ワーケーションを推進する自治体、ワーケーション関連法人向けサービスに参入する企業(不動産業、旅行業、人材育成業)、ワーケーションを実施する企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、ならびに文献調査併用
<ワーケーション市場とは>
ワーケーション(workation)とは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語である。本調査におけるワーケーションとは、休暇を過ごす環境に滞在しながら、仕事をする働き方全般と定義した。
本調査では、滞在にかかるサービス(宿泊インパクト)、飲食費など日中の活動にかかるサービス(地域インパクト)、通常業務以外の研修や合宿などにかかるサービス(研修インパクト)、ワーケーションを推進するために各省庁で予算化された事業規模(国家予算)の4分野を対象として、2020年度から2023年度までのワーケーション市場規模を試算する。
<市場に含まれる商品・サービス>
①滞在にかかるサービス(宿泊インパクト)、②飲食費など日中の活動にかかるサービス(地域インパクト)、③通常業務以外の研修や合宿などにかかるサービス(研修インパクト)、④ワーケーションを推進するために各省庁で予算化された事業規模(国家予算)
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