堅調な産直農産品市場、2022年は前年比100.7%の3兆3,177億円に
1.市場概況
本調査における産直ビジネスとは、従来の卸売市場を経由せず、直接、産地から小売事業者や消費者等に流通させる事業をさし、産直農産品は、こうして流通した国産の青果物(米、果実含む)を対象とする。近年は、インターネット通販で生産者から消費者に野菜を届けるオンラインマルシェが引き続き活況を呈している。
国内での高齢化や担い手不足による離農の進行を食い止めるため、2009年に実施された農地法の改正では、農業への参入規制が緩和された。また、2015年の同法の改正では農地を所有できる法人要件が見直された。現在は、農業生産法人や一般法人の農業参入が離農による生産減を補うことで現状を維持しており、2022年の卸売市場を含む農産品市場規模全体は、前年比100.2%の9兆4,484億円(事業者による流通総額ベース)であった。このうち、産直農産品市場規模は、全体の伸びを上回る前年比100.7%の3兆3,177億円(事業者による流通総額ベース)と推計した。
2.注目トピック
農林水産物等の販路開拓支援が産直宅配事業の活性化にも貢献
近年、一般消費者向けに産直農産品を提供するオンラインマルシェは、2020 年に大きく拡大した。その背景の一つには「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業」があげられる。同事業は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で販路を失った農林漁業者や加工業者の販売促進を支援する取り組みであり、農林水産省が旗振り役となっている。コロナ禍前に比べ、販売額が2割以上低下する等の条件を満たす流通事業者が同事業の支援対象となり、消費者(利用者)への配送料や広告宣伝費等の支援が受けられる。配送料が掛からずお得に利用できるとあって、これまでEC利用をためらっていた消費者の利用を促進できたほか、産直宅配の利便性や魅力ある商品の消費体験がリピーターの獲得にも繋がっている。
コロナ禍の収束とともに、前述の販路開拓支援も終了する中、今後、産直宅配に取り組む事業者が、商品力や利便性の高さなど、配送料を掛けたとしても余りあるメリットをいかに消費者に訴求していけるかが重要とみる。
3.将来展望
国内人口の減少や食の外部化(外食や中食の利用等)が進む中で、生鮮野菜の消費は減少傾向にある。今後は、限られた需要に対し、誰がどのように流通させるかという局面を迎えつつある。
産直農産品は流通事業者(商社等)や実需者(小売や外食チェーン、加工食品メーカー等)により取り決めた価格となるため、相場の影響を受けず仕入れ価格を安定化させるメリットがある。また鮮度の高さや市場に流通しない珍しい食材の提供に加え、販売事業者による食材の特色を活かした食べ方提案等の普及活動がみられる。
仕入れ原価を安定化させたい実需者や食材にこだわる消費者、収入増に取り組む農家の需要を捉えて産直農産品市場規模は拡大を続けており、2027年には、2022年比111.2%の3兆6,900億円(事業者による流通総額ベース)になると予測する。また、卸売市場を含む農産品市場規模全体は2022年比100.5%の9兆4,945億円(事業者による流通総額ベース)を予測する。
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調査要綱
2.調査対象: 農業生産法人(自社・契約型農場、CSA)、農産品流通事業者(オーガニック農産品流通、産直プラットフォーム)、農産品販売事業者(農産品直売所、フードロス関連ビジネス、体験型農業テーマパーク(観光農園)、産直宅配、需給マッチングビジネス)等
3.調査方法: 当社専門研究員による面談取材、電話、質問紙等による間接ヒアリング、及び文献調査併用
<産直ビジネス、産直農産品とは>
本調査における産直ビジネスとは、従来の卸売市場を経由せず、卸売市場外(市場外流通)で、直接、産地から小売事業者や消費者等に流通させる事業をさす。産直農産品は、こうして流通した国産の青果物(米、果実含む)を対象とする。但し、輸入品は除く。なお、市場規模は、事業者による流通総額ベースにて算出しているが、これは各末端チャネルでの国産青果物の販売額の合計である。
<市場に含まれる商品・サービス>
自社・契約型農場、CSA(地域支援型農業)、オーガニック農産品流通、産直プラットフォーム、農産品直売所、フードロス関連ビジネス、体験型農業テーマパーク(観光農園)、産直宅配・需給マッチングビジネス(オンラインマルシェ)
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