2030年度の非破壊検査世界市場(装置・機器及び受託業務)は5兆5,025億円を予測
~検査は事後保全から予防保全へシフトする見込み、規格化や標準化、規制緩和などと共に装置・機器の高効率化が求められる~
1.市場概況
2021年度の非破壊検査世界市場(装置・機器及び受託業務、事業者売上高ベース)を3兆502億円と推計した。そのうち、装置・機器世界市場が9,182億円、受託業務世界市場が2兆1,320億円である。2022年度の同世界市場規模は前年度比107.4%の3兆2,771億円、装置・機器世界市場が同110.8%の1兆173億円、受託業務世界市場は同106.0%の2兆2,598億円になる見込みである。
世界の非破壊検査は国や地域の状況によって大きく需給状況が異なり、インフラ施設や設備の構築途上にある新興国や開発途上国では非破壊検査自体の必要性が低い場合がある。一方、インフラが整備されたG7をはじめとする先進諸国では非破壊検査は必要不可欠であり、市場は成熟期にある。非破壊検査受託業務市場の需要は、受託業務が基本的には国内や経済領域内で取引されることから、当該国や領域の経済規模に比例しながら推移する。
2021年度の非破壊検査日本市場(装置・機器及び受託業務、事業者売上高ベース)を2,167億円と推計した。そのうち、装置・機器市場が897億円、受託業務市場が1,270億円である。2022年度の同日本市場規模は前年度比103.0%の2,233億円、装置・機器市場が同105.5%の946億円、受託業務市場は同101.3%の1,287億円になる見込みである。
国内の機器・装置市場は新型コロナウィルス感染拡大による行動制限などの影響で開発の延期や中止など発生したが、その後回復基調にある。2022年度もサプライチェーンの混乱や半導体不足などから納期遅延が少なからず発生している。国内の受託業務市場も一部でコロナ禍の影響が残る。産業分野別に内訳をみると、建築、原子力関連、土木橋梁分野は微増傾向で、電力関連は横ばいの見込みとなっている。
2.注目トピック
RTデータのデジタル化は、「規格化」と「規制緩和」が今後のカギを握る
非破壊検査の一つである放射線透過検査(RT)においては、デジタル化のための法改正が実施されている。
放射線透過検査(RT)では、これまで試験対象物の放射線透過画像を検出器としてのフィルムに投影し、保存してきた。フィルムを使用せずにデジタルデータで管理する場合は、コンピューテッドラジオグラフィ(CR)方式と呼ばれ、イメージングプレート(IP)を使用する。デジタル化では、技術の急速な進歩により検査結果の精度や信頼性を損なうことなくデータ保存が可能となり、保管、取り出しの管理費用などは軽減できるうえに、かつ、効率的な管理体制を実現すると言われる。
しかし、RT検査現場におけるデジタル化利用は少しずつであり、一気にデジタル化は進んでいない。これには、新しい技術の基準化、標準化、つまりJISなどの「規格化」と、各業界における「規制緩和」の二つが関与している。まず規格が出来ることで、業界における規制緩和が実施されることとなり、この順番の前後が変わることは無い。
また、デジタル化した場合には、従来のRT検査業務のフローが変わることとなる。そのメリットは多いものの、単純に全ての関係者が諸手を上げて喜べる状況ではないことも重要な要素のひとつと言える。
3.将来展望
2030年度には、装置・機器世界市場が1兆9,848億円で、受託業務世界市場が3兆5,177億円となり、合計した非破壊検査世界市場は5兆5,025億円になると予測する。
世界における非破壊検査装置・機器及び受託業務においても、標準化や規格化、規制緩和などが進み、新技術の入り込む余地が広がる兆しが生まれている。
しかし、検査関係者が多ければ多いほど、新規技術やシステムの導入に関わる時間は長くかかる。逆に、発注者と業務受託者のみの関係であれば、時間は短縮される。例えば、電力関連施設では所有者が検査の発注者であり、管理者となることが多く、受託者が提案した新規技術やシステムがスムーズに採用される可能性が高い。発電施設や送電・変電所の管理においては、AIやDXなどを取り入れた先進的な非破壊検査事例が多くなっている。
2030年度には、国内の装置・機器市場が1,423億円で、受託業務市場が1,351億円となり、合計した非破壊検査日本市場は2,774億円になると予測する。
装置・機器市場では、サプライチェーンの混乱や半導体不足などによる納期遅延や、部品の供給遅延・不足の事例が多く確認されている。非破壊検査装置・機器メーカー各社においては、先行した受注の促進や代替部品の調達などできる限りの対応をしており、市場は今後も拡大傾向で推移する見通しである。
一方、受託業務市場は、各産業分野において安定した需要が存在しており、順調に推移する見通しである。非破壊検査業務は日々法令等に則して実施される業務が多く、簡単には代えることができない側面が強い状況となっているためである。
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調査要綱
2.調査対象: 非破壊検査装置・機器メーカー、非破壊検査受託企業、商社及びそれらに関わる外郭団体、研究機関等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンラインを含む)、ならびに文献調査併用
<非破壊検査市場とは>
本調査における非破壊検査市場とは、非破壊検査装置・機器市場及び非破壊検査受託業務市場で構成され、事業者売上高ベースで算出した。
装置・機器市場には、放射線透過試験(RT)や超音波探傷試験(UT)、磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)、渦電流探傷試験(ET)等の検査に使用される装置・機器に加え、これらの付属装置・機器及び消耗品が含まれる。また、受託業務市場は前述の装置・機器を使用した受託検査業務を対象としている。
但し、医薬や食品、農業分野で使用される非破壊検査装置・機器、およびそれらの分野の受託業務は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
非破壊検査装置・機器 【 放射線[X線]透過試験装置(熱源及びフィルム含む)や超音波探傷試験装置(プローブ含む)、磁粉探傷試験装置(磁粉探傷剤含む)、浸透探傷試験装置 (浸透探傷剤含む)、渦電流探傷試験装置(プローブ含む)等 】、前述の装置・機器を使用した受託検査業務。
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