2023年度のVTuber市場、前年度比153.8%の800億円の見込み
~「同人誌」の800億円や「トレーディングカードゲーム」の792億円と比肩する市場規模に拡大~
1.市場概況
アニメルックなキャラクター(アバター)で動画を投稿するVTuberは、2016年の「キズナアイ」の登場によって始まった新興の表現手法である。新型コロナウイルス感染拡大の影響で行動制限がなされたことで、自宅における動画視聴需要(巣ごもり需要)が高まり、VTuberはその知名度と人気が急拡大した。2022年度のVTuber市場は、VTuber事務所を運営する企業の当該事業売上高ベースで前年度比167.7%の520億円に拡大した。
セグメント別に内訳をみると、グッズが267億円(構成比51.3%)と過半を占め、ライブストリーミングは135億円(同26.0%)、BtoBが78億円(同15.0%)、イベントは40億円(同7.7%)と続いた。グッズ領域は同時に最も成長率が高い結果となった。伸び率は落ち着いてきているものの、VTuber市場は成長を続けており、2023年度の同市場は同153.8%の800億円になる見込みである。
VTuber市場と同規模のオタク・サブカルチャーでは、「同人誌」の800億円(※1 2021年度、小売金額ベース)や「トレーディングカードゲーム」の792億円(※2 2021年度、メーカー出荷金額ベース)があり、コンテンツ産業において既にこれらと比肩する地位を占めるに至っている。
※1 「オタク」市場に関する調査を実施(2022年)2022年10月26日発表
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3121
※2 玩具市場に関する調査を実施(2022年)2023年1月11日発表
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3166
2.注目トピック
IP・インフルエンサーの2つの面をもつVTuber
VTuberは、その成り立ちからIPとインフルエンサーの2つの特性をもち、この点がYouTuberやアニメ声優など他のコンテンツとの一番の違いである。
VTuberはアニメルックなキャラクター(アバター)で活動しているため、そのキャラクターデザインを用いたグッズ販売のほか、ゲームやアニメのキャラクターとしての作品出演などのIPライセンスビジネスの展開が見られる。
また、VTuberは純粋なアニメキャラクターではなく、演者(中の人)がキャラクター設定に基づいたロールプレイを行いながら、視聴者と生の掛け合いを行ったり、演者本人の身近な出来事について語るなど、演者のオリジナリティが反映されたキャラクターを形作っていくという特性がある。そのため、アニメキャラクターのような魅力的な見た目を備えつつも、その人らしい「生の声」として情報を発信するインフルエンサーとして、企業とのタイアップ広告などでの活躍も期待される。
3.将来展望
2022年以降、VTuber事務所※3を運営する企業が相次いで東京証券取引所グロース市場に上場するなど、VTuberは新興コンテンツとしての地位を確立してきている。
また、VTuberの人気は海外にも広がっており、大手事務所を中心に海外ファンの獲得を進めているほか、海外でもVTuber事務所設立の動きが見られる。
さらに、VTuberはアニメルックなアバターで活動し、デジタル世界でのインフルエンサーとしての側面があることから、メタバースとの親和性も期待されており、運営企業による投資も活発化している。
※3 参考資料「VTuberに関する消費者アンケート調査を実施(2022年)」2023年3月20日発表
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3211
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調査要綱
2.調査対象: VTuberをマネジメントする事務所/プロジェクトを運営する企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、電話による調査、ならびに文献調査併用
<VTuberとは>
2Dまたは3Dのキャラクター(アバター)を使って、YouTubeをはじめとする各種動画プラットフォーム上に動画を投稿するVTuber(Virtual YouTuber)のうち、①演者(中の人)がアニメルックなアバターを纏いロールプレイを行うことで、演者でもアバターのキャラクターでもない新たなキャラクターが成立したもの、かつ、②そのキャラクターがインフルエンサー、IP(Intellectual Property)の2つの特性を有するものを本調査によるVTuberとする。
なお、「IRIAM」や「REALITY」をはじめとするライブ配信アプリで活動する「ライバー」は対象外としたが、演者がいないAIの言語生成により活動する「AITuber(アイチューバー)」やCV(声を担当している人物の名前)が明記されているVTuberは対象とした。
<VTuber市場とは>
本調査におけるVTuber市場とは、VTuberをマネジメントする事務所/プロジェクトを運営する企業の当該事業売上高(海外事業を含む)ベースで算出した。
市場は、マネタイズ方法により、ライブストリーミング(動画配信による広告料・スーパーチャット・メンバーシップ等からの収益)、イベント(ライブ・コンサート等有償イベントのチケット販売収益)、グッズ(記念品など有形商品や楽曲ダウンロード販売等の収益)、BtoB(タイアップ広告、IPライセンスによる版権・商品化権ビジネスによる収益)の4つのセグメントに分類した。
<市場に含まれる商品・サービス>
VTuber、VTuberをマネジメントする事務所/プロジェクト、VTuber事務所を運営する企業
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