2023年度ドライコーティング国内受託加工市場規模は前年度比104.2%の323億7,300万円の見込
~2025年度には341億7400万円とコロナ禍前の水準を超えると予測~
1.市場概況
2022年度のドライコーティング国内受託加工市場規模(受託加工金額ベース)は前年度比100.5%の310億5,700万円であった。
ドライコーティングは、主に金属基材の表面に耐摩耗性やそのほかのトライポロジー性といった高機能特性を付与するための薄膜加工であることから、自動車産業をはじめとする高精度・高機能化が求められる産業において必要不可欠な存在である。そのため産業界を支える主要用途である切削工具や金型、機械部品、自動車部品などの需要に大きく影響を受ける。
こうしたなか、ドライコーティング受託加工企業各社は設備増強や加工工程等の効率化を図ることで、産業界の需要に即時対応できる体制を構築するとともに、新規の皮膜といった付加価値の高い加工技術の提案を行うなどで好調な実績となっている。
上記のような背景から、2023年度には前年度比104.2%の323億7,300万円に成長すると見込む。
2.注目トピック
環境負荷低減の指標化が新規評価軸の可能性
ドライコーティングはその加工処理を施すことで対象物(主に金属基材)は長寿命化され、廃棄までの期間を延長することが可能になることから、総じてCO2排出量の観点から環境負荷を低減させるものである。そのため、どのような皮膜がどの程度の長寿命化を実現し、結果としてどの程度のCO2を削減できたか、という指標に注目が集まる。
しかしながら現状ではこの指標化が実施されていない。具体的な実績は存在するものの、これらを統一し指標化することは難しいとされている。こうした環境負荷低減を可視化し、指標化することが実現すれば、今後の皮膜選定をする際の新たな評価基軸となる可能性が出てくることから、ドライコーティング業界の成長において起爆剤となる可能性が高く、今後の取り組みが期待される。
3.将来展望
ドライコーティング国内受託加工市場規模は2024年度に333億8,100万円(前年度比103.1%)、2025年度にはコロナ禍前の水準を超え、341億7,400万円(前年度比102.4%)を予測する。
金属基材を中心に、高分子やセラミック基材それ自体はすでに完成された領域であるといわれるが、こうした基材にドライコーティング皮膜加工を施すことで、さらに高機能化することが可能になることから、今後もドライコーティング皮膜加工の技術開発が進み、受託加工市場は順調に成長していくものとみる。
一方、ドライコーティングは対象となる基材を加工し、製品化する際にクライアント企業との間で配送頻度が高く、長時間化するなど、ドライバーの労働時間規制のかかる物流問題(2024年問題)でドライコーティング企業における戦略の差別化が複雑になる。また、PFASなどの環境規制によりフッ素加工など従来通りの表面処理ができなくなった場合、環境負荷が少ないドライコーティングの採用が増える可能性がある。市場は短期的には堅調であるものとみるが、中長期的にはこうした影響度合いにより変動するものと考える。
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DLC
調査要綱
2.調査対象: ドライコーティング受託加工メーカー、ドライコーティング関連(装置など)メーカー、大学・研究機関等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)および文献調査併用
<ドライコーティング、及びドライコーティング受託加工市場とは>
本調査におけるドライコーティングとは、CVD(化学蒸着)、PVD(物理蒸着)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン/イオン化蒸着)の3つの種類の皮膜をさし、また、コーティング対象基材としてはペットボトル等樹脂材料基材等は除き、金属基材を対象としている。
本来、CVDとPVDは成膜法、DLCは膜種ということになり、別のカテゴリーではあるが、DLCが次世代皮膜として注目されてきたことで、これまで取り上げてきた経緯がある。従って、本調査におけるCVDコーティングとはCVD法により成膜される膜種のうち、DLC膜を除いたものを指す。また、PVDコーティングはPVD法を用いて成膜されるDLC膜を除いたものを指している。なお、DLCコーティングはCVD法、PVD法を問わず成膜される膜種を指している。
また、本調査におけるドライコーティング受託加工市場とは、受託加工を行う国内メーカーの受託加工金額ベースで算出しており、自動車部品メーカーやエレクトロニクス部品メーカーの内製加工分については含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
ドライコーティングの受託加工(金属基材を対象としたCVD、PVD、DLC薄膜加工)
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