2023年度国内主要企業の臨床検査薬・機器事業規模は前年度比1.1%増の1兆4,493億円
~2024年度は新型コロナウイルス関連検査特需は収束を迎え、国内向け事業は縮小を予測~
1.市場概況
2023年度の国内主要企業における臨床検査薬・機器事業規模(臨床検査薬・機器事業を展開する国内主要35社の事業者売上高ベース)は前年度比1.1%増の1兆4,493億円と推計した。当該事業を国内向けと海外向け別にみると、国内向け事業は前年度比6.3%減の7,264億円、海外向け事業は同9.7%増の7,229億円であった。
新型コロナウイルスが感染症法の5類に移行し、新型コロナウイルス関連の抗原および遺伝子検査の検査薬・機器の販売はマイナス基調で推移した。しかし、インフルエンザをはじめとする種々の感染症流行がみられ、複数の感染症を同時に検査できるコンボ検査キットの販売伸長がみられたことに加え、一般的な臨床検査薬・機器の販売が復調したことで、当該関連検査薬・機器の減少分を補填する構図となった。
2.注目トピック
複数の感染症を同時検査できるCoV-Fluコンボ検査キットの拡大
新型コロナウイルスとインフルエンザの2つの感染症を同時に検査できる迅速抗原検査キットが注目を集めている。
新型コロナウイルスの検出方法には、PCR法を中心とした遺伝子検査と、抗原検査に大別される。迅速抗原検査は遺伝子検査に比べ精度で劣るものの、手軽さと迅速性から需要が拡大し、特に2022年以降のオミクロン株流行時に需要が急増した。迅速抗原検査キットは多くの企業が参入し、価格競争が進む一方、政府や自治体を通じた検査キットの備蓄・無償配布施策が実施され、外資系企業や国内メーカーにおいて生産の増強がみられた。さらに迅速抗原検査キットのOTC(一般医薬品・指定医薬部外品)化が解禁され、医療機関だけではなく家庭等でのセルフケアとしても利用が広がった。
2023年度には、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行がみられたことで、新型コロナウイルス単体の迅速抗原検査キットの販売が減少した一方で、両感染症を同時に検査できるCoV-Fluコンボ検査キットの利用が広がったことで新たな市場を形成している。
3.将来展望
2024年度の国内主要企業における臨床検査薬・機器事業規模(臨床検査薬・機器事業を展開する国内主要35社の事業者売上高ベース)は、前年度比1.4%増の1兆4,700億円を予測する。このうち、国内向け事業が前年度比7.8%減、海外向け事業は10.7%増になるものとみる。
臨床検査薬・機器事業を展開する企業は、2021~2022年度に新型コロナウイルス関連検査で大きな需要を得たが、2023年5月に新型コロナウイルスが感染症法の5類に移行したことで、発熱外来以外の内科や小児科を含めた一般の開業医でも新型コロナウイルス感染症の外来診療を行うなど、診療可能な医療機関が増加した。またこうした医療機関では新型コロナウイルスの検査を抗原検査で行うようになるなど、検査需要に変化が生じたが、2022年度と比較すると検査需要は概して低減した。こうしたなか、コンボ検査キットも含めた同簡易検査キットの需要は一定程度残るものとみるが、国内向け臨床検査薬・機器事業規模全体は縮小傾向にある。一方、海外向けの臨床検査薬・機器事業などは円安基調により堅調に推移することが想定される。
また、新型コロナウイルスの影響下で注目された遺伝子POCT(Point of Care Testing)領域では、一般的なイムノクロマト法※の検査を上回る、簡便かつ高精度なシステムへの需要が高まっている。特に呼吸器感染症分野での需要拡大が期待され、この分野での市場獲得の余地があると推察される。
※イムノクロマト法とは抗体と抗原の特異的な結合反応を利用し、クロマトグラフィーの原理によって対象物質を検出または定量する簡便かつ迅速な免疫分析法のことである。
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調査要綱
2.調査対象: 国内の主要な臨床検査薬・機器事業展開企業35社(日本企業および海外企業日本法人)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・電子メールによるヒアリング調査
<臨床検査薬・機器事業規模とは>
医療機関や検査センター等で行う検体検査(血液・尿・便・組織などの検体)に用いられる、臨床検査薬・機器に関する事業を対象として、国内の主要企業35社における国内向けおよび海外向け臨床検査薬・機器事業の売上高ベースの合計を、本調査における事業規模とした。
<市場に含まれる商品・サービス>
臨床検査薬および臨床検査機器全般
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