2024年の5G/6G関連デバイス・材料世界市場規模(8種計)は24兆838億円の見込
~6G商用サービス開始、生成AIや自動運転などの普及で通信インフラへの投資も拡大する見通し~
1.市場概況
2024年の5G/6G関連デバイス・材料世界市場規模(8種計、メーカー出荷金額ベース)を24兆838億円と見込む。デバイス・材料の内訳をみると、トランジスタが1兆1,398億円、アンテナが2兆9,388億円、FPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブルプリント基板または配線板)は1兆2,500億円、SoC(System on Chip)は18兆7,356億円、PI(ポリイミド)は153億円、LCP(液晶ポリマー)は43億円の見込みである。なお、2024年時点ではメタサーフェス反射板とGaNウエハー(窒化ガリウムウエハー)については商用化における市場は立ち上がっていない。
5G(第5世代移動通信システム)の普及については、5Gの商用サービス開始時の想定と比較して、現在に至るまで非常に低調であったと言える。主な要因としては、5Gでしか実現できない通信サービスを消費者はほとんど必要としておらず、通信キャリア各社は通信エリア拡大やマネタイズに苦戦し、それによりサービスの普及、多様化も進まなかったことが挙げられる。
2.注目トピック
AIと5G/6Gの融合は通信キャリア各社のマネタイズ改善の切り札へ
2024年、AIと通信のシナジーによる可能性を模索するための動きが開始された。2024年2月の「AI-RANアライアンス」の設立である。参加企業および大学は、それぞれの技術力を活用し、下記の主要な3つのテーマに関する研究開発に取り組んでいる。
・AI for RAN:AIの活用により、既存のRAN(Radio Access Network:無線アクセスネットワーク)の周波数利用効率および性能を向上させる。
・AI and RAN:AIとRANの処理を統合し、インフラの利用効率を上げることで、AIを活用した新たな収益機会を創出
・AI on RAN:RANを通じて、ネットワークエッジ側にAIを展開。RANの運用効率を上げ、モバイルユーザー向けの新規サービスを展開
AI-RANアライアンスにおける「AI and RAN」の取り組みの一環で、AIとRANを同一プラットフォーム上で動作可能にする統合ソリューションが開発されており、既に実証実験も行われた。基地局に搭載される従来のRAN専用ハードウェアは、1日の中でトラフィックが最も多いピーク時間に合わせてコンピューティングリソースの容量を設計・構築されている。しかし、1日の中でピーク時間は一瞬のみであり、ピークでない時間にはコンピューティングリソースが余る。
そこで、AIとRANを同一プラットフォーム上で動作可能にする統合ソリューションでは、ピークでない時間に余るコンピューティングリソースをAI向けワークロードとしてAIサービスの事業者に譲渡することを可能とした。
コンピューティングリソースの譲渡を売却という形で行えば、通信キャリア各社の収益になり、マネタイズ(収益計画)の改善につながる。それにより、5G/6Gの通信インフラへの設備投資が加速することが期待される。
3.将来展望
5Gの普及については、現在に至るまで非常に低調であったと言える。しかし、2024年11月時点で今後の5G/6Gの普及を後押しする可能性がある要素も台頭している。例えば、TikTokをはじめとするショート動画市場の台頭は、再生回数が増加するほどトラフィックが増加し、通信品質に悪影響を及ぼす可能性がある。今後もショート動画市場の拡大が継続すれば、消費者は5Gの特徴である大容量、同時多数接続などへの要求をより高めると考える。
また、生成AIも普及拡大し、現在AI処理性能が優れたスマートフォン向けSoCの開発競争が激化しており、その需要はSoCの生産能力が不足するほどである。AI処理性能に優れたノートPC向けSoCについても市場が立ち上がりつつあり、これらのSoCは5Gにも対応している。
現在は消費者の活用が一部に留まる画像や動画の生成についても、活用が拡大する可能性がある。そうしたことが実現すれば、生成した画像や動画をダウンロードする、あるいはクラウドにアップロードするといった面で、消費者の通信品質への要求も高まるだろう。
なお、6Gについては、ITU(国際電気通信連合)や 3GPP(3rd Generation Partnership Project:各国の標準化組織により構成されたプロジェクト)により、標準仕様や商用化のスケジュールが決まりつつある。生成AIや自動運転といった5G/6Gのサービス拡大を後押しする可能性のある要素や、6Gの商用サービスが予定通りに開始され、その後順調に拡大するかなどの動向次第で、将来は大きく変わる。今後、6Gの商用サービスが予定通りに開始され、生成AIや自動運転などが順調に普及すると、5G/6Gの通信インフラへの設備投資も拡大する。そうした環境下において、2040年の5G/6G関連デバイス・材料世界市場規模は103兆6,458億円まで拡大すると予測する。
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高周波になるに連れてアンテナの「低視認性」が要求される
RedCapがIoT向け5G拡大の切り札か
サブテラヘルツ波帯以上の周波数についても、研究開発は活発
調査要綱
2.調査対象: 5G/6G関連デバイス・材料を扱う企業(メーカー、商社)、大学・研究機関、通信キャリア事業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<5G/6G関連デバイス・材料市場とは>
本調査における5G/6G関連デバイス・材料市場とは、5Gおよび6G用途に使用されるデバイス・材料である、トランジスタ、アンテナ、メタサーフェス反射板、FPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブルプリント基板または配線板)、SoC(System on Chip)、PI(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー、基板材料用途のみ)、GaNウエハー(窒化ガリウムウエハー)を対象として、メーカー出荷金額ベースで算出した。
これらの5G/6G関連デバイス・材料は、Sub-6以上の周波数帯である5Gおよび6Gに対応した基地局や、スマートフォンやノートPC等のモバイル機器、ADAS(先進運転支援システム)などの車載装置等に加え、IoTモジュールとして製造業の生産設備・機器、各種のロボット、建設業の重機・建機、物流機器等に内蔵される。
<市場に含まれる商品・サービス>
5G/6G関連デバイス・材料:トランジスタ、アンテナ、メタサーフェス反射板、FPC、SoC、PI、LCP、GaNウエハー
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