2024年12月末のBottle to Bottle用リサイクルPET樹脂の国内供給能力は37.3万tの見込み
~リサイクルされたPET樹脂の品質確保のためには、リサイクルプロセスでの徹底した洗浄と異物除去、トレーサビリティー確立による安全性の証明が必須~
ここでは、日本国内におけるBottle to Bottle用リサイクルPET樹脂(rPET)の供給能力の見通しについて、公表する。

1.市場概況
清涼飲料の主要ブランドオーナー(飲料メーカー)各社では、容器包装について独自の目標を掲げて環境に配慮した設計及び材料の採用を推進している。特に清涼飲料の主力容器であるPETボトルの脱化石由来原料化が課題となっており、各社ではこれまで主に使用してきたバージンPET樹脂(vPET)からリサイクルPET樹脂(以下、rPET)やバイオマスPET樹脂への原料切り替えに積極的に取り組んでいる。
PETボトルのサステナブル化(持続可能な事業の実現)には、使用済ボトルを原料に新たなPETボトルを製造するBottle to Bottle(以下、B to B)に代表されるリサイクルPET材料の使用と、植物由来のバイオマスPET材料を使用する2つの方向性があるが、このうちバイオマスPETは一部で採用例も出てきているものの商業ベースでの実用化には至っていない状況である。
2.注目トピック
2024年12月末時点での国内B to B用リサイクルPET供給能力は37万3,000t/年
日本国内におけるB to B用リサイクルPET樹脂供給能力は、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル合わせて2023年12月末時点で348,000t/年に達した。
さらに、2024年から2025年にかけて、新規リサイクラー(再資源化事業者やリサイクル樹脂メーカー)の参入も予定されており、2024年12月末時点でのB to B用リサイクルPET供給能力は373,000t/年の見込み、2025年以降には既存のリサイクラーの生産設備と現在建設中または量産準備中の新規リサイクラーの設備を合計して、445,000t/年まで拡大を予測する。
清涼飲料の業界団体である一般社団法人全国清涼飲料工業会は、清涼飲料業界として2030年までにPETボトルのB to B化率50%を目指す「2030年ボトルtoボトル比率50%宣言」を打ち出しているが、この目標達成に対するrPETの供給能力には余裕があるようにも見える。
3.将来展望
リサイクラー各社のB to B用リサイクルPET生産能力とB to B用rPETのアウトプット量は必ずしも一致しない。
B to B用リサイクルは、単純に使用済PETボトルを使ってボトルやプリフォーム(以下、PF)を成形すれば良いわけではなく、成形・リサイクルプロセスでかかる熱により低下したPET樹脂のIV値(粘性)をブロー成型可能なレベルに戻すための再重合設備・技術が不可欠である。また、使用済PETボトルから再生した樹脂を、飲料容器材料として使用するには厳しい安全・衛生基準を満たす必要がある。使用済PETボトル由来のrPETをそのレベルの品質までもっていくには、徹底した異物・汚染除去のためのアルカリ洗浄技術や、使用済PETベールからフレーク、rPETに至るまでに各プロセスでの輸送・保管も含めたトレーサビリティーも求められる。
加えて、代理汚染試験や溶出試験、官能試験などの各種試験をクリアし、樹脂としての機能や安全性が証明され材料としての安全性を満たしていたとしても、rPETに異物などによる着色がわずかにでも残っていれば容器材料としての品質を満たしていないとブランドオーナーに判断され、採用につながらない可能性が高い。
rPETにどれだけ異物が含まれているか、どれだけ着色されているかはペレットの状態で見分けることが難しく、PFが成形される段階でようやく明らかになるため、リサイクラー各社は、rPETを供給したブランドオーナーからのフィードバックを受けて初めて自社製品の外観品質がブランドオーナーの基準に合致しているかを把握することが出来るためである。
2025年以降に新たにrPETの生産開始を予定しているリサイクラーは、稼働開始後しばらくは一定レベルの品質をクリアするための時間が必要であると考えられ、日本国内においてリサイクラー各社が保有する合計生産能力がフルに発揮されるのは、2027年~2028年頃になる見通しである。新たに市場に参入したリサイクラーには、飲料容器としての安全・衛生基準に加え、ブランドオーナーが求める外観品質基準を満たすrPETの安定生産に向けて、中長期スパンで品質向上のための技術開発、研究開発に取り組んでいくことが求められている。
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調査要綱
2.調査対象: 環境対応素材関連メーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<環境対応素材とは>
本調査における環境対応素材とは、植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)及びセルロースファイバー(CMF/CeF)、塗装代替につながる自動車内外装用加飾フィルム、新しいグリーンエネルギーとして注目されるペロブスカイト太陽電池、飛行機や自動車をはじめとする構造物の軽量化を実現するPAN系炭素繊維、プラスチック使用量削減につながる食品・飲料容器(紙カートン、金属缶、プラスチック軽量容器)を指す。
加えて各種素材(PETボトル、PETフィルム、紙カートン、アルミ缶、プラスチック軽量容器、紙カップ)のリサイクル動向についても、調査した。
<市場に含まれる商品・サービス>
Bottle to Bottle(B to B)用リサイクルPET樹脂
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