国境が閉ざされ、モノと人の流れが止まる中、20日、ニューヨーク商業取引所の原油価格(WTI先物)が史上はじめてマイナスとなった。5月物の終値は1バレルあたりマイナス37.63ドル、6月物も1999年以来の安値水準で推移する。影響は債権、株式、為替市場に波及、実体経済から金融システムに至るまで、世界のあらゆる経済活動において信用リスクが高まる。
20日、ロイター通信は米ニーマン・マーカスが週内に米破産法の適用を申請すると報じた。翌21日には豪ヴァージン・オーストラリア航空が任意管理手続きに入ったことを発表した。日本ではANAが1.3兆円、リクルートが4,000億円、三越伊勢丹が800億円など、大手企業が続々と融資枠の設定を銀行に求める。中小企業は更に深刻だ。中小企業庁によると緊急融資に関する相談件数は2月末までで7千件、3月に入ると急増、4月1日時点で30万件に達した。
インバウンドを牽引してきた中国人観光客は春節明けを境に反転、2月が▲87.9%、3月が▲98.5%となる。一方、国内の感染拡大も歯止めがかからず政府は3月13日には改正特措法を成立させる。
4月に入ると自動車など大手メーカー各社が相次いで生産調整の拡大、延長を発表、そして、4月7日の緊急事態宣言の発出となる。
中小企業の手元資金は平均で2.5ヵ月、まずは観光関連、続いて飲食、小売、サービス、自粛関連、そして、6月末にかけて商社、製造業で資金不足が本格化する。
当初4月24日の成立を目指していた、2兆3,176億円の中小企業・個人事業者への現金給付を含む補正予算は、「30万円の低所得者支援から一律10万円給付」への組み替えに伴って国会提出が27日にずれ込む。地方自治体向けの総額1兆円の臨時交付金についても「使途」を巡って、現場を背負う自治体との思いがすれ違う。政府は「協力金や支援金は認めるが、休業補償や損失補填は認めない」との立場を崩さない。予算成立後、制度の詳細を検討し、そのうえで説明会を開催、各自治体から実施計画を募り、6月中に事業内容と交付額を決定するという。
東京都は5月上旬の支給を目指して22日から休業協力金の受付を開始した。他の自治体も続く。金融機関も緊急融資体制を敷いた。もはや調整や手続きに時間をかけている猶予はない。今、危機にあってまさに国の本気度が問われている。