2010年版 電子ペーパー市場の現状と将来展望
電子書籍市場の立ち上がりに伴い、そのキーデバイスである電子ペーパーが注目されつつある。一方、電子書籍+αの機能を搭載した「iPad」(LCD採用)が登場したことで、電子ペーパーv.s.LCD(Kindle v.s.iPad)という構図が描かれることが多い。LCDには鮮やかなカラー表現、動画表示という利点が、電子ペーパーには視認性の高さ、目の疲れ難さ、低消費電力、省資源という利点がある。電子ペーパーが市場を拡大させていく上で、LCD方向への開発が必要であるのか、電子ペーパーの特性を最大限に活かせるアプリケーション・活用法は何かについて調査した。
また、現状電子ペーパー市場(主に電子書籍端末)の100%近いシェアをE Inkのマイクロカプセル方式が握っているが、各方式に適した用途/活用法も存在する。今後、電子ペーパーの採用アプリケーションの広がりと共に、どの方式が電子ペーパー市場に食い込んでくるのか、ということも併せて分析した。
※紙媒体で資料をご利用される場合は、書籍版とのセット購入をご検討ください。書籍版が無い【PDF商品のみ】取り扱いの調査資料もございますので、何卒ご了承ください。
調査資料詳細データ
調査目的:国内および韓国、台湾の有力電子ペーパー関連メーカー12社の現在動向と今後の事業施策を徹底調査し、更に周辺調査を加えることで世界電子ペーパー市場の現状と今後の動向を把握することを目的とする。
調査対象:電子ペーパー部材、モジュール、セットメーカー、業界団体等
調査方法:直接面接取材及び電話/メール取材。
■本資料のポイント
- 電子ペーパー部材、前面版、モジュール、セットメーカ等、13社掲載。(台湾、韓国含む)
- 電子ペーパーの現状の課題と、その改善策を考察。
- 電子ペーパー独自の「低消費電力・薄型/軽量・目に優しい」を活かせる開発方向を示し、搭載が期待されるアプリケーションへの採用可能性を分析。
- 電子ペーパー市場規模を算出。(2007年~2012年予測)
■本資料の概要
第1章:電子ペーパー市場の現状と展望
第2章:主要アプリケーション別電子ペーパー市場の現状と将来展望
第3章:方式別電子ペーパー市場の現状と将来展望
第4章:電子ペーパー関連メーカーの現状と将来展望
■掲載内容
第1章:電子ペーパー市場の現状と展望
「iPad」に惑わされるな。電子ペーパーの価値はモノクロ・静止画領域にあり
iPadとKindleは必ずしも競合しない
日本メーカーは新・ニッチ市場を積極開拓へ
第2章:主要アプリケーション別電子ペーパー市場の現状と将来展望
2009年Kindleの成功による電子書籍端末市場の形成
2010年iPad登場で活気付く電子書籍市場、今こそ市場拡大のチャンス
2011年以降の一般ユーザー向けモノクロ100ドル端末が市場拡大契機に
ニッチな電子ビューワーにこそカラー・フレキシブル化のニーズがある
書籍端末市場、当面はマイクロカプセル方式優位が継続
知られざる第二の電子ペーパー市場、電子タグ従来のセグメントタイプ「500~1,000円」が市場拡大のきっかけ
電子タグからPOPへ?需要サイズは拡大へ
携帯電話、サイネージ、ICカード、腕時計、USBメモリ その他アプリケーションでの採用も徐々に進む
第3章:方式別電子ペーパー市場の現状と将来展望
マイクロカプセル方式市場
量産実績への高い信頼性他方式を引き離す、次世代の開発へ
表示の白さ、早期の量産開始が利点
マイクロカプセル方式市場のメイン需要は電子書籍端末向け
E Ink は逸早く量産体制を確立。Kindle採用で米国を中心に電子書籍端末市場が立ち上がる
セイコーエプソンのコントローラICで応答速度が向上した電子書籍端末。セグメント駆動でも各社独自ICを開発
次世代電子ペーパーモジュール「Pearl」登場。ペーパライクな見た目を追求へ
コスト削減は採用拡大に必須、LCD以下を目指せ
LCDにはできない、紙の「カラー」表現で採用間口を広げるE Ink
E Ink以外にも、LG Display ・ Samsung Electronicsからカラー品の試作機が発表
まもなく製品化、フレキシブルなプラスチック基板とメタル基板。価格面から採用に二の足を踏むメーカーも
ストレスフリーの読書は射程範囲、ページを「めくる」表現が可能に
動作温度範囲拡大で採用範囲増加
マイクロカップ方式市場
ニッチからメジャーへ安定供給が先決
Roll to Roll生産、カラーフィルター不要、物理的に強固な構造が強み
イシダがPRICERと共同でSiPixの電子タグ製品化
トッパン・フォームズと2005年に提携・ワンタイムパスワードに搭載
AUOの出資で量産設備整うも、本格量産開始に出遅れ
2010年メイン市場が電子書籍端末に変化、安定供給を継続できるかが鍵
電子タグ向けでは想定価格の2倍
量産効果によるコスト削減は電子書籍端末での採用がポイント
独自IC、背景の白さ実現でKindle(マイクロカプセル方式)に追いつけるか
電子粉流体方式市場
知られざる電子タグ市場で勢力拡大。独自路線でシェア奪取を狙う
閾値特性の明確さ、0.2msecの高速応答で、パッシブ駆動が可能
使用温度範囲の広さで冷蔵庫、冷凍倉庫での使用も可
2006年から電子タグ、サイネージでの採用開始
電子タグも採用初期段階。その他用途展開でのコスト削減がポイント
書き換え100万回は2010年内に実現。背景の白さ改善で電子書籍端末市場へ、日の丸技術出陣
アプリケーションによるカラー化の使い分け
電子タグはカラー2値、エリアカラーで、電子書籍端末はカラーフィルターでカラー化
フレキシブル電子ペーパーを2012年から量産。動画対応は実現可能だが、コスト高が懸念
液晶系方式市場
電子タグはキラーアプリとなりえるか。「液晶」っぽさはペーパーライクと相反する部分
1.コレステリック液晶
基礎技術を保有するKent Displayではパイロットレベルの生産規模。他メーカー等にOEM生産を委託
電子書籍端末、電子タグが製品化
モノクロ表現に課題、カラー化による厚型化・コスト増
松下電器の電子書籍端末撤退、シャープの電子タグも1店舗導入に留まる
狭セルギャップ化が不要、歩留まり低下の問題なし。モノクロ表示においては白さと輝度が課題
カラーフィルター不要のコレステリック液晶。カラー表現の向上と書き換え速度両立が重要
コスト/駆動電圧低減はモノクロ、カラー両方で重要
2.双安定ネマテック液晶
Nemoptic社ではラボレベルの生産、量産はセイコーインスルツが担う
電子ペーパーモジュール価格上昇要因は特殊な回路と反射フィルム。液晶材料の見直しで温度範囲=採用範囲拡大
3.その他
3-(1)メモリ液晶
CG‐Siliconを用いたシステム・オン・パネル技術でメモリ素子形成
画素内にメモリを内蔵、書き換え時及び表示時の消費電力を数十μWレベルまで低減
散乱型液晶は反射板不要で反射率50%実現、0.5ルクスの明るさでも文字認識可能
液晶材料、偏向板等の各種光学部材の見直しで黒表示の追及、電子書籍への展開も間近
2009年携帯電話への搭載開始、2010年秋冬モデルにも。産業オートメーション関係でも採用進む
3-(2)強誘電性液晶
「シャープ」さをとるか「ぎらつき感」を改善するか。アプリケーション毎の開発が必要
その他方式
第4章:電子ペーパー関連メーカーの現状と将来展望
E Ink Holdings Inc. (E Ink )/旧:元太科技工業股フェン有限公司(Prime View International Co., Ltd.)(PVI)
電子ペーパー市場での圧倒的なシェアPVIは電子ペーパー事業に集中
製紙会社の挑戦、紙に代わる技術を獲得せよ
1997年からE Ink 技術に注目
フィリップス、E Ink 買収で電子ペーパーの川上から川下までを統合する
他社の追随を許さないマーケットでの信頼性がE Ink 買収の決め手
電子ペーパーのコスト低減はE Ink の電子インクフィルムだけでは実現不可
サプライチェーン全体での協力関係が重要
電子ペーパーをいかにして紙に近づけるか、iPadでない、カラー、動画対応へ
凸版印刷株式会社
全方位で事業展開紙媒体のデジタル化を印刷技術で支える
生産技術の革新で前面板の安定供給可能に
デジタル化で書籍の裾野を広げ、他社との綿密な関係作り
実証実験の積み重ねで導入件数増加を目指す電子ペーパーサイネージ
LG Display Co., Ltd
E Ink 電子ペーパーモジュール生産でシェアトップへ
メタル基板で低価格なフレキシブル電子ペーパーを提供
2010年Q4でのカラー、フレキシブルタイプの量産準備完了へ
コントラスト、レスポンスタイム、カラー表現の向上に取り組む
画面サイズ拡大、フレキシブル化実現で、電子ランドセル・新聞端末への採用目指す
端末価格の上昇が課題
アイリバーと電子書籍端末生産工場を共同設立、OEM/ODM生産も開始
2012年、電子ペーパーモジュール市場でシェアトップに向けた布石
奇菱科技股フェン有限公司(Chi Lin Technology Co., Ltd.)
電子インクシート以外は全て自社調達
価格の安さと開発スピードの速さが売り
マイクロカプセル方式の表示の白さ、ドライバICの低消費電力が
中小型表示モジュールへの採用のきっかけ
通信モジュールとの一括提供でユーザーの利便性向上、低消費電力を実現
サイネージへの参入は電子インクシート価格がネック
シチズンセイミツ株式会社
独自開発IC、液晶実装技術、対応力の良さが武器
電子ペーパー事業はシチズンセイミツに集約
E Inkのマイクロカプセル方式に注力
薄型でありながら高堅牢性を実現
迅速・綿密な対応力で携帯電話への採用開始
産業用表示ディスプレイでの採用拡大を狙う
マイクロカプセル方式は産業用途への展開を視野に
ブラザー工業株式会社
SOHO/SMBの顧客がターゲット
場所/時間を選ばない安全/安心の仕事環境構築へ
第三の柱構築、プリンタの発展形としてのドキュメントビューワ
最小スペックで最大の効果を狙うドキュメントビューワ
堅牢性と機器の薄型化が今後の課題、フレキシブル化を検討するも端末価格の上昇が壁
AU Optronics Corp. (AUO)(友達光電股フェン有限公司)/SiPix Imaging, Inc.
2010年秋以降、量産が本格化。E Ink を追う
2009年3月に米SiPix買収
決め手はRoll to Roll生産方式、カラーフィルター不要
歩留まり率の高さ、サプライチェーンの短縮化でコストダウン
背景の白さの実現、電子ペーパー向けICの開発が急務
電子タグ向けは量産中、電子書籍端末は2010年Q4から第一ラインが稼動
アプリケーション拡大による出荷数量増加で価格低減を図る
株式会社ブリヂストン
Made in Japan技術最後の砦
電子タグ向け量産で低価格化、電子ビューワー市場へ打って出る
研究開発中に電子粉流体発見
電子タグ、サイネージ、情報端末(電子ビューワー)と徐々に採用を広める
0.2msecの高応答速度及び明確な閾値特性でパッシブ駆動が可能
セルギャップの変化による表示の影響無し、フレキシブル化にも優位
耐久性と白さ向上が課題、3段階開発でアプリケーション拡大を狙う
イニシャルコストが電子タグ導入のネックに
電子ペーパーモジュール、PC、ソフト、アンテナ等、システム全体での低価格化が必要
ビジネスユースの情報端末を狙う
軽量・薄型・高セキュリティがキーワード
カラー電子ペーパーは既に採用・フレキシブル電子ペーパーも2012年から量産
動画対応は実現可能だが、コスト高が懸念
電子ペーパーの事業モデル確立へ
拡販しながら改良、改良しながらの拡販で市場開拓を行う
2010年以降、採用サイズの大型化で大幅な売り上げ増を見込む
株式会社日立システムアンドサービス
高セキュリティ業務に電子ペーパー活用
画面サイズのバリエーション拡充で、工場や医療機関等での活用も視野に
紙に代わる新たな媒体提供へ
長時間駆動、書き換え速度の速さ、大型画面の実現が採用ポイント
関西アーバン銀行で試行導入決まる
富士通フロンテック株式会社
カラー電子書籍端末のパイオニア
海外展開、モジュールビジネス、垂直統合も模索
ターゲットユーザは絞らず
カラー電子ペーパー採用端末の認知度向上を目的とした端末開発からスタート
最大26万色の表現が可能
電子ペーパーモジュール販売も視野に
新聞のカラー並みの表現、0.7 msecの書き換え速度を実現
参考出品では4mm厚の薄型端末も
セイコーインスツル株式会社
アプリケーション先拡大による価格低減で電子タグ数量増加を狙う
電子タグへの採用理由はコントラスト10:1、反射率25%の視認性の高さ
ドットマトリクス表示で複雑なバーコードもスイスイ読み取り
セルギャップ1.5μmでも高歩留まり率実現
電子ペーパーモジュール価格上昇要因は特殊な回路と反射フィルム
販売数量増加で価格低減を狙う
販売数量増加には温度範囲拡大が必須条件、液晶材料の見直し等を行う
電子タグにはエリアカラー対応
民生機器等、アプリケーションの拡大に注力
東芝テック株式会社
POSシステムの更なる活用へ
電子ペーパー棚札でライフタイムコスト削減
セイコーインスツルと電子タグを共同開発
イニシャルコストが導入障壁に
高精細、高コントラスト、視野角の広さで双安定ネマテック液晶採用
カラーはLCDで、モノクロは電子ペーパーでESL市場を攻める!
ナノックス株式会社
市場が認める価格での提供が最優先
既存材料/設備活用で他社に勝つコスト構造を実現
ライセンス供与で短期、低コストで製品化を実現
電子タグに注力
表示品質とコストのバランスがとれたキラーアプリを模索
駆動電圧の低減、輝度向上、白黒表現の実現が今後の課題
堅牢性はガラスでも実現可能
このレポートの関連情報やさらに詳しい情報についての調査を検討したい
矢野経済研究所では、
個別のクライアント様からの調査も承っております
マーケティングや経営課題の抽出、リサーチの企画設計・実施、調査結果に基づく具体的な戦略立案・実行支援に至るまで、課題解決に向けた全ての段階において、クライアント企業をトータルでサポート致します。