2016-2017年版 自動車用加飾フィルム市場の展望と戦略
自動車の外装及び内装加飾には、これまで長きにわたり塗装や金属メッキが使用されてきたが、近年の車体の軽量化や製造ラインでの工数削減の中で、塗装レス・メッキレス加飾の可能性が注目されている。一方、自動車メーカーサイドからは、特に外装部品の加飾について、これまでの設備投資の問題もあり、単に意匠性を追求した塗装代替・メッキ代替というだけでのフィルム加飾の採用は難しいとの声も聞かれる。
フィルムによる加飾の提案にあたっては、既存の塗装・メッキにはないフィルムならではの機能・性能や、フィルム採用による付加価値の訴求が求められる。非金属メタル調フィルムによるレーダー・レーザー対応や、成形部品と同一樹脂使用によるリサイクル性向上、真空・圧空成形工法を応用した自動車ボディーへの機能付与など「フィルムだからできること」をいかに訴求するか、そのためには、原反製膜や蒸着・ハードコートなどの表面処理、成形装置など、参入メーカー各社の情報発信力が問われていると言えるだろう。
※紙媒体で資料をご利用される場合は、書籍版とのセット購入をご検討ください。書籍版が無い【PDF商品のみ】取り扱いの調査資料もございますので、何卒ご了承ください。
調査資料詳細データ
調査目的:自動車用加飾フィルムメーカー、装置・システムメーカー、フィルム(原反)メーカー各社の現在の動向と今後の事業施策を徹底調査し、さらに周辺調査を行うことで、自動車用加飾フィルム市場における現状と今後の動向の把握を目的とする。
調査対象:内装用加飾フィルム、外装用加飾フィルム、加飾フィルム用原反、真空・圧空圧着加飾用装置
調査方法:専門調査員による直接面接取材をベースに、文献調査を併用。
調査期間:2016年11月~12月
- 意匠の先にあるニーズをつかみ、加飾フィルム採用のバリューを訴求せよ
- 塗装・メッキに無い付加価値の提案を!問われる情報発信力
- 情報発信と業界研究で新規提案・参入のチャンスをつかめ
- 内装用加飾フィルム: 多彩なデザイン表現のニーズが強まる
- 外装用加飾フィルム: 媒塗装レス媒の気運は確実に高まる方向へ
- 加飾フィルム原反: PMMA、PCなど既存材料に加え、金属調光沢PET、自動車部材のオールPP化を狙う透明PPフィルム、ウレタンフィルムなど新規材料の市場投入が活発化
第1章 自動車用加飾フィルム市場の展望と戦略
第2章 自動車用加飾フィルム市場の動向
第3章 加飾フィルムメーカーの動向
■掲載内容
調査結果のポイント
第1章 自動車用加飾フィルム市場の展望と戦略
塗装・メッキに無い付加価値の提案を!問われる情報発信力
意匠の先にあるニーズをつかみ、加飾フィルム採用のバリューを訴求せよ
(図)既存の加飾工法(塗装・メッキ)と加飾フィルムの付加価値のイメージ
ものづくりに留まらない情報発信と業界研究で新規提案・参入のチャンスをつかめ
第2章 自動車用加飾フィルム市場の動向
1.自動車内装用加飾フィルムの動向
意匠の高度化・多様化を背景に、多彩なデザイン表現のニーズが強まる
中国自動車生産台数が引き続き成長、北米、欧州はステディな動き
地域別のプロセス棲み分けは維持も、今後はきめ細かな使い分けの方向へ
(表)主要地域別自動車生産台数に占める内装加飾の動向(2016年見込み)
(図)主要地域別自動車生産台数に占める内装加飾(2016年見込み)
(図・表)主要地域における内装加飾工法別採用動向(2016年見込み)
1.水圧転写
2016年の転写フィルム需要はワールドワイドで540万㎡
中国で水圧転写を扱う自動車部品メーカーが育ち、需要が拡大
(表)水圧転写フィルム市場規模推移
(表)水圧転写フィルム参入メーカー各社の販売量及びシェア推移
(表)主要自動車メーカーの水圧転写採用状況
アジア圏が需要の中心地も、今後は北米市場の拡大に期待
触感を含めたデザイン性で再評価が進む
(表)自動車用水圧転写フィルム地域別市場規模推移
2.成形同時加飾
(図)インモールド転写のプロセス
(図)INSのプロセス
インモールド転写は、欧州を中心に年間300万㎡超の市場を形成
(表)自動車用インモールド転写フィルムの地域別シェア(2016年見込み)
(図)自動車用インモールド転写箔メーカーシェア(2016年見込み)
INSでは大日本印刷が50%近いシェアを押さえるも、参入メーカーが増加傾向
水圧転写中心の日本でもINSを中心にドライプロセスの需要が拡大へ
(表)自動車用INS加飾フィルムの地域別シェア(2016年見込み)
(図)自動車用INS加飾フィルムメーカーシェア(2016年見込み)
車載ディスプレイの大型化、タッチセンサー化を受け、参入各社ともAGコート品を投入
3.真空・圧空圧着成形
本物に近い質感表現で高級車で採用されるも採用比率はごく一部にとどまる
(表)真空・圧空圧着成形用フィルムの地域別シェア(2016年見込み)
(図)真空・圧空圧着成形の例①(布施真空TOM成形)
(図)真空・圧空圧着成形の例②(ナビタスNATS空気転写)
(表)3次元加飾工法の比較
(表)自動車メーカーの内装加飾採用状況
2.自動車外装用加飾フィルム市場の動向
将来の“塗装レス”を見据えた取り組みが水面下で動き出す
パラダイムシフトを迫られる自動車メーカー、自動車業界
マルチマテリアル化などをキッカケに、“塗装レス”の機運は確実に高まる方向へ
電波透過性をキーワードに、金属調加飾フィルムの需要が本格化へ
(表)自動車外装用加飾フィルム・シート市場規模推移
ツートンカラータイプのルーフで加飾フィルム採用、塗装代替でも新たな動き
外装用加飾フィルムの基材として、ウレタンフィルムが注目を集める
3Mジャパン、韓Avecalがウレタンフィルム基材の自動車用フィルムを展開
3.自動車内外装加飾フィルム原反市場の動向
フィルムメーカー各社で外装向けに対応した耐候グレードの開発が進展
(表)自動車内外装加飾原反市場規模(2016年)
1.PMMAフィルム
高光沢とグラビア印刷対応で高レベルの意匠表現を実現
自動車用では内装加飾フィルムのスタンダードに
2.PC系フィルム
高い成形性で欧州を中心に採用、耐擦傷性を付与したPMMAとの共押出品では
自動車外装部品の塗装・メッキ代替としての拡大が期待される
3.PETフィルム
電磁波透過性を武器に金属フリーの「PICASUS®」が
外装加飾をターゲットとした提案を開始
4.PPフィルム
自動車内外装部品の主力材料であるPPを使用したフィルム「ピュアサーモ」
自動車リサイクル対応や軽量化対応を武器に塗装代替で攻勢かける
5.ウレタンフィルム
第3章 加飾フィルムメーカーの動向
日産自動車株式会社
フィルム加飾採用には塗装・メッキ代替+αのバリューが必須
外製部品加飾、外装は大部分が塗装・メッキを採用、内装は車種・クラスによって棲み分ける
自動車メーカーとして、フィルムの性能向上と採用に伴う付加価値の提案に期待
スリーエム ジャパン株式会社
独自のフィルムテクノロジーを活かした自動車内装用加飾フィルムを展開
優れた成形性と外観・質感などリアルなデザインに強み
「3M™ハイプロテクションフィルムテープ」では、ポリウレタン基材フィルムなどを展開
DIC株式会社
さらなる事業拡大を見据え、内装加飾の総合メーカーを志向
デザイン・印刷からエンジニアリングまでの一貫した提案・営業を推進
水圧転写フィルム「アクアトランサ」は海外での販売が好調
インサート成型用加飾フィルムのサンプル出荷を開始、今後本格展開を予定
クルツジャパン株式会社
加飾技術の“クオンタム・リープ(飛躍的進歩)”を追求
INS用フィルム等、三次元加飾用フィルムの売上高は安定
バックライトやタッチセンサーを組み合わせた、新たなデザイン表現も提案
コンポジット材料に向けた加飾技術の開発にも取り組む
尾池イメージング株式会社
ドライ・ウェットコーティング技術を駆使し、さらなるめっき代替を開拓へ
メタリック転写箔は、欧州・自動車メーカーでの採用実績を保有
成型用蒸着フィルム「エコモールド」も2017年度より本格的な販売へ
株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー
海外市場の開拓に注力
中国市場での認知度アップにより、「スーパーテクミラー」の販売量は増加傾向
マクダーミッド・エンソン事業部(アレントジャパン株式会社)
日本国内でも、加飾フィルム「XtraForm™」の採用が進む
2016年初め、グループの事業体制見直しから日本の事業体制を変更
2015年末よりAGコートグレードを量産、欧米メーカーでの採用がはじまる
パナック株式会社
自動車加飾をターゲットに易成形HCフィルムを展開し、着実に案件数が増加
プレキュアタイプとアフターキュアタイプを揃え、幅広いニーズに対応
2017年1月より“伸ばせるAG”を上市する予定
株式会社麗光
自社の技術力を活かした“意匠性”にフォーカス
加飾材料は家電、自動車向けを主力に展開
クラックの入りにくいアルミ蒸着タイプなど、性能・バリエーションで差別化を図る
共和レザー株式会社
自動車内装用合皮表皮材では国内トップ、世界2位のポジションを確保
デザイン~設計~製膜~品質保証までの一貫体制で差別化
長年にわたる住設・建材分野での展開で培った技術・ノウハウを自動車加飾に応用
意匠性、成形性だけでなく、強度、耐候性、さらに+αの性能付与で塗装代替を推進
布施真空株式会社
意匠性だけでなくTOM成形ならではの付加価値の提案を推進
主力の成形機販売が海外向けを中心に堅調に推移
2017年1月期には成形機売上高の60%をTOM成形機が占める
自動車外装など大型成形加飾向けのNeo-TOMでは気体治具の採用で歪み・へこみを解消
ディンプル形状付与や再帰反射表皮材など加飾+αの付加価値を提案
原反、加工、接着と3者の技術集約と共同開発で新たな加飾の実現を推進
ナビタス株式会社
独自開発の加飾技術「NATS空気転写」を提案
深絞り、穴あき形状、立ち上がり、アンダーカットなど
従来の加飾工法の限界をクリアした「NATS」で成形加飾市場でのポジション確立を目指す
加熱蒸気による熱圧利用、短波長ヒーターでのフィルム加熱など
独自技術の組み合わせで「加飾」にとどまらない付加価値を付与
三菱レイヨン株式会社
モノマー、ポリマー、加工品まで一貫したMMA事業展開に強み
光沢タイプ、艶消しタイプと2種類のフィルムを成形加飾用に投入
三菱ガス化学株式会社
PC系「MRフィルム」は自動車内外装加飾向けにフォーカス
PC/PMMA共押出によりPCシートの表面硬度を改善
耐擦傷性、屋外耐候性、耐薬品性など自動車内外装で求められる性能を付与
PC樹脂の分子構造改良で成形温度を150℃まで下げたグレードを開発
自動車メーカー、Tier1を中心にサンプルワークを進める
東レ株式会社
電磁波透過性など「金属調光沢=加飾」の先の「機能」をアピール
衝突防止システム・自動運転の普及で自動車外装のレーザー・レーダー透過性ニーズが拡大
金属フリーという特徴を活かせる用途として今後の需要拡大に期待
住化アクリル販売株式会社
光学分野でのPMMA事業の中で蓄積した技術を応用し
高透明・低ひずみの加飾用フィルムを展開
PMMAフィルム「テクノロイ」フィルムは自動車内装表面材で安定した実績を確保
PC/PMMA、PC、多層PMMAなど個別ニーズにきめ細かく対応する体制で差別化
出光ユニテック株式会社
自動車加飾原反での需要拡大が期待されるPP系フィルム「ピュアサーモ」
原着グレードの投入で自動車外装加飾をターゲットに拡販を推進
易接着グレードの投入でPP加飾フィルムの意匠性を向上
原料樹脂改質、コンパウンド、製膜とグループの総合力を結晶し
加飾+αの付加価値を持つ新規グレードの開発を進める
低比重のPP系フィルム使用による軽量化、内外装部品のオールPP化の流れに乗った
リサイクル適正など環境面でのメリットも訴求
Avecal Korea Co., Ltd.
PVC及びTPUフィルムの原反生産からフィルム加工まで内製化、
自動車用フィルムで年率5%の販売量拡大を予想
ラッピングフィルムとペイントプロテクションフィルムのODM・OEM生産が主体
自動車メーカーや部品メーカーに直接供給する純正品向けに注力
PVCとTPUのほか、独自開発の変性ウレタン「TP(TPU+PVC)」でPPFを提案
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