2017年版 セルロースナノファイバー市場の展望と戦略
セルロースナノファイバー(CNF)は、2016年~2017年にかけて日用品を中心に一部製品での採用が始まり、2017年には日本発の量産プラントが稼働するなど、市場は開発段階から実用化・量産化へとステージを変えている。CNFは単体ではなく、樹脂や繊維などと複合化することで、強度アップや軽量化などを実現する。材料としての真価を発揮し、用途を拡大するには「いかに混ぜやすくするか」が課題であり、CNFメーカーだけでなく、樹脂や添加剤、溶剤などのメーカー各社との情報交換や共同研究が求められている。研究開発から製造、さらには川下展開までを国内に備える日本にこそ、CNFの事業化において世界をリードできるポテンシャルがある。
今回の調査では、大学、研究機関や製紙メーカー、化学メーカーなどCNFの事業化を目指す企業、CNFを使用した川下製品を開発する企業などに取材を実施し、製品動向や参入メーカー各社の動向など最新の状況を分析・考察する。
※紙媒体で資料をご利用される場合は、書籍版とのセット購入をご検討ください。書籍版が無い【PDF商品のみ】取り扱いの調査資料もございますので、何卒ご了承ください。
調査資料詳細データ
調査目的:セルロースナノファイバーメーカーの現在の動向を把握するとともに、今後の事業計画や研究開発動向を明らかにすることを目的とする。
調査対象:セルロースナノファイバー(CNF)
調査方法:直接面接取材をベースに、文献調査を併用
調査期間:2017年5月~2017年7月
- 日本発の新素材、いよいよ実用化ステージへ、市場拡大のカギは「複合化」にあり、川上~川下まで、業種を超えた連携で市場を拓け
- 2016年以降、各社の生産体制の整備が急速に進展も安定的な量産体制確立には至らず、2020年のCNF生産量は経産省のイメージよりやや低い400t/年程度か
- 主要メーカー各社の生産能力は2017年に880t/年に、生産体制の整備は一段落、今後はキャパをフル活用できる市場・用途開拓が課題に
- 疎水化グレード、パウダータイプなど複合化を念頭に置いた改良開発が進展
- 自動車用途の金属代替実現にはもう一段の研究開発が必要
- 京都プロセスによる樹脂複合化のコストダウン効果が注目される
- 自動車用途の金属代替実現にはもう一段の研究開発が必要、内装、外装向けの既存材料からの代替では軽量化を実現する発泡技術に活路あり
- 高透明、寸法安定性、表面硬度を活かしたガラス代替フィルムが期待される、熱黄変、耐水性など「紙の限界」を超えるための開発が課題に
- 超微細な孔径制御を実現する高性能エアフィルターでCNFならではの強みを発揮
- CNF独自の性能が活かせる機能性添加剤での採用拡大も期待される
第1章:セルロースナノファイバー市場の展望と戦略
第2章:セルロースナノファイバーメーカーの動向と戦略
■掲載内容
調査結果のポイント
第1章:セルロースナノファイバー市場の展望と戦略
日本発の新素材、いよいよ実用化ステージへ、市場拡大のカギは「複合化」にあり
川上~川下まで、業種を超えた連携で市場を拓け
2016年以降、各社の生産体制の整備が急速に進展も安定的な量産体制確立には至らず
2020年のCNF生産量は経産省のイメージよりやや低い400t/年程度か
(表)セルロースナノファイバー 製法別概況
(表)国内CNF市場規模予測
主要メーカー各社の生産能力は2017年に880t/年に
生産体制の整備は一段落、今後はキャパをフル活用できる市場・用途開拓が課題に
(図・表)日本国内におけるCNFキャパ推移
(表)主要メーカー各社のCNF生産能力
疎水化グレード、パウダータイプなど複合化を念頭に置いた改良開発が進展
京都プロセスによる樹脂複合化のコストダウン効果が注目される
自動車用途の金属代替実現にはもう一段の研究開発が必要
内装、外装向けの既存材料からの代替では軽量化を実現する発泡技術に活路あり
(表)各種材料の特性比較
(表)自動車用樹脂需要量推移
高透明、寸法安定性、表面硬度を活かしたガラス代替フィルムが期待される
熱黄変、耐水性など「紙の限界」を超えるための開発が課題に
超微細な孔径制御を実現する高性能エアフィルターでCNFならではの強みを発揮
CNF独自の性能が活かせる機能性添加剤での採用拡大も期待される
(表)CNFの川下展開
第2章:セルロースナノファイバーメーカーの動向と戦略
王子ホールディングス株式会社
独自のリン酸エステル化CNFを用い、実証設備稼働でさらなる用途開発推進へ
スラリー、パウダー、シートと幅広い形態で提案
少ないエネルギー量で原料パルプを完全にナノ化するリン酸エステル化法を確立
2017年より40t/年規模での実証生産を開始、用途開発に拍車かける
増粘剤「アウロ・ヴィスコ™」は2017年5月末よりカーケミカル向けでの採用開始
ハンドリング性を向上したパウダーでは疎水化グレードも開発
連続シート化CNF「アウロ・ヴェール™」は低熱膨張性を活かしガラス代替の用途探索を進める
成形グレードなど独自の製品開発で差別化
日本製紙株式会社
製造プロセスを多様化し用途や顧客ニーズに最適化したCNFを提案
スラリー、パウダー、マスターバッチなど幅広いラインナップを展開
2017年6月にはCNFを始めとする新素材の拡販を担う新素材営業本部が始動
CNFは量産・パイロットプラント合わせて4拠点での生産体制が整う
TEMPO酸化、CM化、京都プロセスで生産し用途に合わせた特性のCNFを提案
多様な顧客ニーズを網羅する全方位型の展開を進める
石巻の量産プラント稼働によるコスト競争力強化に期待
大王製紙株式会社
量産化に適したプロセスと多様な原料パルプからの選択肢で差別化
三島工場のスラリーパイロットプラントでは固形分換算で100t/年の能力を確保
2017年度内に粉体CNFのパイロット設備を設置、用途開発・市場開拓に取り組む
用途や要求性能に応じて最適な特性が得られるパルプを数種類から選択
熱可塑性樹脂との複合化が容易なパウダー化グレードは2017年内にサンプルワーク開始予定
CNF配合のペーパークリーナーを自社ブランドより発売開始
バリア包材、成形品、人工骨補填材など多種多様な用途開発を推進
北越紀州製紙株式会社
特殊紙事業で蓄積した技術とマーケティング手法を活用し
一歩川下寄りのCNF事業を推進
2017年4月に新組織「新機能材料開発室」を設置、開発と営業の両面からCNFを提案
ウイルスや超微粒子もキャッチする高機能エアフィルターを開発へ
シーズ先行開発では液中に分散されたCNFをそのまま取り出した超精密多孔質体を提案
カナダの子会社でCNCの開発進展、CNFとは異なるニーズへの対応が可能に
第一工業製薬株式会社
TEMPO酸化CNF「レオクリスタ」の本格展開開始
疎水化グレードも開発しさらなる用途開拓を推進
高粘度+チキソ性など従来にない性能付与が高く評価される
溶剤やアルコールにも「レオクリスタ」と同様の性能付与が可能な疎水変性グレードを開発
インク、塗剤、化粧品など非水性材料への用途の拡がりを期待
高付加価値・ニッチ分野に特化しCNFを事業の柱に育てる
花王株式会社
独自の界面制御技術を活用した疎水化CNFを開発
透明性などCNFならではの特性が活かせる用途開発を推進
自社利用(PLA容器包材への添加)と外販の両方向で事業化目指す
星光PMC株式会社
2017年内に変性CNF複合樹脂の量産開始を予定
高強度化と軽量化の両立で自動車部品等での展開に期待
疎水化技術、樹脂複合化技術など「化学メーカー」ならではの技術力を活用した展開を推進
株式会社スギノマシン
ウォータージェット技術の活用でセルロース以外の原料もナノ化
金属微粒子との複合化など、独自の研究開発を推進
工作機器とは別の新事業としてCNFに参入、比較的早い時期より注目を集める
セルロース、CMC、キチン、キトサンの4種類を原料としたサンプルを供給
サンプルワークが一度で行える「トライアルセット」が好評
CNFの物性に貴金属微粒子の機能を複合化させた材料を開発
抗菌・消臭関連や各種触媒での採用に期待
モリマシナリー株式会社
岡山の森林資源を活用すべく独自の設備で木材チップをナノ解繊
コスト競争力に加え、熱可塑性樹脂との複合化に強み
木材チップ原料のリグノCNFとパルプ原料のCNFとをラインナップ
樹脂への分散性の高い粉体タイプの開発で用途開発に弾みつける
旭化成株式会社
一歩川下に寄った展開を模索しCNF不織布の用途開拓を推進
不織布に樹脂を含浸することでCNFが均一に分散されたFRPを実現
エレクトロニクス、自動車など幅広い用途での採用に期待
株式会社服部商店
非水系溶液中で解繊した疎水化CNFスラリーを開発
2016年に非水系溶液に分散したCNFスラリーを発表
2017年末には1t/月(溶液重量込)の量産設備導入でサンプル提供の拡大を計画
濃度、溶液などユーザーの要望に合わせたOEMやカスタム対応を模索
ダイセルファインケム株式会社
ミクロフィブリルセルロース「セリッシュ」はナノサイズでの供給も可能
新たな事業の柱となる用途開拓に注力
セルロースをホモジナイザーで微細化し10~数10nmレベルまで解繊したグレードを開発
均一分散性を活かした濾過助剤、保水・保形性を活かした食品添加剤などで実績
「セリッシュ」でなければならない用途開拓に取り組む
大阪ガス株式会社
長年に亘り蓄積したフルオレンを活用し「フルオレンセルロース」を開発
樹脂への配合をターゲットにサンプルワークを進める
フルオレンによる疎水性の付与、パウダー状での供給など
CNFと樹脂との複合化に向けた開発を推進
九州大学(同大学院農学研究院・近藤哲男 教授)
水と生物機能を用いる材料設計を研究テーマに
独自のACC法による両親媒性CNFを実現
化学薬品を使わず、セルロース本来の特性を維持しつつナノファイバー化
親水性と疎水性とのスイッチングなど、新たな機能を活かした展開に期待
共同開発パートナーの中越パルプの設備稼働でACC-CNFは量産化フェーズに
「軽くて強い」の次のコンセプト確立に向けた研究開発を推進
地方特別行政法人 京都市産業技術研究所
京都の地の利を活用しCNFの社会実装に向けた取組みを推進
京都大学、企業、官公庁・公的機関との連携で10年以上にわたるCNFの知見を蓄積
CNFの研究開発支援に加え、事業化に向けたコーディネーターとしての役割を担う
汎用エンプラとの複合化、微細発泡、着色など、具体的な出口を意識した研究開発を推進
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