調査結果のポイント
第1章 アルミニウム業界のカーボンニュートラルに向けた動向と展望
資源循環がもたらす、素材産業の「新しい景色」
「コントロールの及ばない」Scope 3 の排出量の把握こそがカーボンニュートラルの出発点
鋳物需要の縮小を見据え、展伸材 to 展伸材への循環利用に向けた動きが本格化の兆し
不透明な世界情勢に左右される新地金に懸念、合金ユーザーの中にはロシア産敬遠の動きも
(図)アルミ合金/アルミ地金輸入量 2021 年~2022 年(対ロシア)
(図)アルミ合金/アルミ地金輸入価格 2021 年~2022 年(対ロシア)
リサイクルの優等生から資源循環のリーダーへ
ユーザーから選ばれ続ける素材であるためにはサプライチェーン全体での取り組みが重要
Apple も iPhone に 100%リサイクル材使用、レポートには各製品の PCF も掲載
(図)100%リサイクルアルミを使用した Apple Watch・iPhone SE の PCF
グリーンアルミの戦略的調達に向けてサプライヤーと「バイヤー以上」の関係構築を
第2章 アルミニウム業界の動向
新地金を持たない日本では“資源循環”がカーボンニュートラル実現の最重要課題
2-1. アルミニウム協会のカーボンニュートラル政策
(表)アルミニウム VISION 2050 のポイント
(表)カーボンニュートラルに向けた施策
(表)日本アルミ協会が見込む革新的技術開発
水平リサイクルの拡大には市中回収スクラップのスキーム構築が不可欠
Can to Can、Sash to Sash の他、展伸材 to 展伸材でも取り組みが立ち上がる
リサイクルのさらなる拡がりには選別プロセスの精度・速度の向上が求められる
(図)展伸材における資源循環使用率の目標
(表)展伸材の循環利用における課題
(図)アルミニウムの展伸材における循環使用率の向上の道筋
(図)アルミ展伸材の製造に係る CO2 排出の長期的な削減の見込み
需要の増加と CO2 の排出削減はニコイチ
アルミニウムの輸入先の戦略的調達(エネルギー源の厳選)で Scope 3 に注視
2-2. 圧延業界の動向
(表)アルミ合金種類
再生可能エネルギーを活用したグリーンアルミの供給拡大が世界で拡がる
不活性アノード等の次世代電解技術の実用化も着々と進行
2-3. 海外動向
(表)アルミニウム生産量(2014~2021 年)
国際アルミニウム協会は、増加する需要に比例して CO2 排出量を削減するロードマップを展開
Mission Possible Partnership とも協働し、ネットゼロアルミの製造へ
(図)一次アルミカーボンフットプリントの B2DS に沿ったシナリオ(t CO2e/t AI)
(図)2050 年までの CO2 排出量削減推移
(表)IAI ロードマップにおける脱炭素へのパスウェイ
(表)欧米・中東アルミニウムメーカー脱炭素動向の一例
第3章 アルミニウムメーカーのカーボンニュートラル戦略
再生可能エネルギー、リサイクル、グリーンアルミの調達を柱に CN の実現を見込む
(表)主要圧延メーカーによるカーボンニュートラル目標
3-1. 再生可能エネルギーを利用した脱炭素化
展伸材のリサイクルと鋳物サイドの需要バランスの崩壊には要注意
更なる資源循環には異合金種の混在と異金属の混入が今後の課題
3-2. アルミニウムのリサイクル
(表)アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業
2040 年の圧延回収量は 1,140 千 t、2050 年は 1,353 千 t と予測
国内圧延メーカーもリサイクルの拡大を中期経営計画に盛り込む
(表)品目別でのアルミスクラップ回収量の見通し
(表)用途別でのアルミスクラップ回収量の見通し
(図)品目別でのアルミスクラップ回収量の見通し(グラフ)
(図)用途別でのアルミスクラップ回収量の見通し(グラフ)
新地金製造におけるエネルギーミックスは 2021 年で 40%近くが水力発電によるもの
3-3. グリーンアルミニウムの調達
(表)アルミニウム生産における地域別のエネルギーミックス(2021 年)
(表)アルミニウム生産における地域別のエネルギーミックス(2017 年)
(表)日本アルミニウム塊(合金を除く)輸入量
(表)日本アルミニウム合金塊輸入量
責任のある原料の製造を担保する ASI 認証を通じた世界共通標準が浸透
(表)ASI PS 認証における要件
(表)国内圧延メーカーの動向
第4章 アルミニウムユーザー動向
建設・輸送業界を中心に低炭素製品のニーズが拡大
4-1. アルミ缶メーカー・飲料メーカー
使用済みアルミ缶の安定調達には海外輸出への対策が肝となる
(表)アルミ缶リサイクルの推移
(図)アルミ缶リサイクルの推移
(表)製罐メーカーのアルミニウム動向
(表)飲料メーカーのアルミニウム動向
4-2. 建設・建築業界
X 線などを用いた選別技術の開発により建設業界の水平リサイクルを推進
海外を通じた再生材の調達ルート、リサイクル炉の導入、企業によって取り組みは様々
(表)建築資材メーカーあのアルミニウム動向
4-3. 自動車
EV 化は足回り部品をはじめアルミニウム材料の追い風となる
ELV 指令の改訂版は Closed Loop 構築へのさらなるプレッシャー
(図)日産自動車のアルミ部品・クローズドループリサイクル
(図)アルミ切削屑の再利用事例
(表)国内 OEM におけるグリーンアルミ・アルミリサイクル動向の一例
(表)海外 OEM におけるグリーン・アルミリサイクル動向の一例
(表)米国・韓国 OEM におけるグリーンアルミ・アルミリサイクル動向の一例
4-4. 新幹線車両
第5章 アルミニウム業界関連企業の展望と戦略
株式会社 UACJ
2030 年度には Scope 1, 2 で CO2 排出量 30%削減、2050 年には CN 実現
サプライチェーン全体での CO2排出最小化を目指す
アルミ缶材を自社の「成長基盤」と位置づけタイと米国での供給体制を強化
Scope 1, 2 は再生エネの活用拡大、製造所での省エネ推進などにより目標達成を目指す
日系圧延メーカー初となる Aluminium Stewardship Initiative 認証を 2022 年 3 月に取得
サプライチェーンでの CO2排出量削減の最重要課題であるリサイクル技術の深化に取り組み
アルミ缶以外の水平リサイクル拡大を目指す
東洋製罐、サントリーと協働で CO2 排出量 60%削減、リサイクル材 100%のアルミ缶を実現
日本軽金属グループ
アルミニウムを核としたビジネスや社会的な価値の創出を通じ
幅広い領域でサーキュラーエコノミーに貢献する
各事業のバランス良い構成比によりグループの力を結集する体制を確立
グリーン新地金やスクラップの活用拡大を通じ、循環型サプライチェーンの構築を目指す
東洋アルミニウム株式会社
グループ創立 100 周年の 2031 年に CO2排出量 40%削減へ
2023 年 4 月に株式会社 UACJ 製箔と経営統合の予定
品質・グローバル競争の強化を通じ、一般箔の供給維持、LiB 用箔の供給拡大の両立を目指す
群馬製造所では全社よりも高い 2030 年度 CO2 排出量の 48%削減に目標を設定
再エネ活用等の取り組み内容をマスタープランに各製造所へ水平展開も見据える
Scope 3 では再生可能エネルギーを使用し製造されたグリーンアルミの調達を検討
水平リサイクルでは、加工屑の活用に加え、PCR の実現にも取り組む方針
ハリタ金属株式会社
2030 年には CO2 排出量を 2020 年比で 42%削減する目標を設定
リサイクルと選別技術を強みに、アルミ製品の水平リサイクルを展開
「アルミ二次合金製造」から「リサイクル」への早期の移行が今の事業基盤強化につながる
CO2 排出量の削減に向けては「省エネ」「創エネ」「代エネ」を推進
地下鉄 to 地下鉄から新幹線 to 新幹線は、Car to Car を見据えた先手となる取り組み
アルミ業界では合金○○系 to○○系の水平リサイクルも活発化になるとの見方
YKK AP 株式会社
「材料転換」を Scope 3 のカギと位置付け、市中回収材のリサイクルにも注力
2021 年 6 月にカーボンニュートラルプロジェクトを発足、CN 技術開発を強化
2021 年度 Scope 1+2 の CO2 排出量は 329 千 t-CO2、今後は太陽光発電の更なる増設へ
ビル用アルミ建材商品の新たな製造拠点、埼玉新工場は 2023 年 7 月から稼働予定
Scope 3 では「購入した製品・サービス」が 9 割、このうちアルミ材は 87%を占める
2023 年 9 月リサイクル炉稼働予定、2030 年度のアルミニウムリサイクル率 100%へ
不二サッシ株式会社
CN を追い風ととらえ、CO2 削減に向けた取り組みへのピッチを上げる
sash to sash を軸にグリーンアルミを含めた資源循環の拡大へ
2 年以内の SBT 認定取得を目標に 2022 年 2 月にコミットメントレターを提出
海外を含むリサイクルルートを検討し市中回収によるアルミリサイクル実現を目指す
建屋屋上やカーポートへの太陽光パネル設置を通じ、再エネの活用拡大を推進
2022 年度にはグリーンアルミを実証実験的に調達
今後はリサイクル材と併用してさらなる使用拡大を目指す
株式会社竹中工務店
業界に先駆け、“ネガティブエミッション”に着目
2023 年 1 月に 2023 年度中の SBT 認定取得を目指すことを発表
Scope 3 では ZEB の推進や ECM コンクリートの使用によりライフサイクル CO2 ゼロを目指す
2021 年の施工時原単位は 8.3 CO2t/億円と目標値よりも低い水準を達成
強みとする地下工法を活かし、工期短縮による省エネを実現
CO2 排出量のさらなる削減へ、カーボンネガティブコンクリートの共同開発に取り組む
高炉鋼から電炉鋼への移行を検討、木建材・エコダクトの利用も促進
川崎重工業株式会社
水素発電を軸とした「カーボンニュートラル戦略」を展開
水素電力等の提供を通じた、サプライチェーン全体の低炭素化も見据える
CO2 FREE、Waste FREE、Harm FREE を柱とした Kawasaki 地球環境ビジョン 2050 を策定
環境経営活動基本計画 2022 を通じ「CO2 排出量を 2022 年からの 3 年間で 1.5 万 t 削減」
Scope 1, 2 を対象に、2030 年までに国内において Net Zero の実現を掲げる
Scope 3 ではカテゴリー11 を重要課題として位置づけ CO2 排出量削減に取り組む
水素運搬課題を解決し、2022 年 2 月に世界初の液化水素国際間輸送を実現
「CCUS・代替燃料」では、DAC の早期商業化にも期待
三菱電機株式会社
データの一元管理、製品のエネルギー効率向上等、
Scope 3 の排出削減を積極展開
「カーボンニュートラル」及び「サーキュラーエコノミー」を軸に「環境計画 2023」を展開
製品環境情報システム構築によりグループ内 Scope 3 データを一元管理
製品の省エネ化等を通じ、カテゴリー11 の CO2 排出削減につなげる
2010 年より家電分野において「自己循環リサイクル」を展開
サントリーホールディングス株式会社
「ザ・プレミアム・モルツ」「同〈香る〉エール」の一部商品に、
リサイクルアルミニウム材を 100%使用した世界初となるアルミ缶の採用を実現
2050 年までにバリューチェーン全体で GHG 排出実質ゼロを目指す
2021 年の GHG 排出量(Scope 1, 2)は 944 千 t、基準年から 7.0%マイナス
Scope 3 では容器・包材や原料が該当する「購入した物品、サービス」が 69%を占める
UACJ と東洋製罐グループとともにアルミ缶 1 缶当たりの CO2 排出量を約 60%削減
今後は生産効率基盤の確立と低炭素アルミニウム地金調達のサプライチェーンの構築へ
キリンホールディングス株式会社
2050 年のネットゼロ実現を目指し、省エネ推進、再エネ利用拡大に取り組みつつ
アルミ缶、PET ボトルなどの容器軽量化による Scope 3 削減へ
インターナルカーボンプライシングを用いて企業活動の低炭素化に拍車をかける
キリンビールの 9 工場にて大規模太陽光発電を導入、5,800t/年の GHG 削減を実現
GHG 排出量全体の 80%を占める Scope 3 の削減に向けステークホルダーとの協力関係を強化
自社でコントロールが難しい新地金による GHG 排出量削減に対しては
製缶メーカーへのアプローチなど様々な手段を模索
アルミ缶リサイクル協会
2025 年度にアルミ缶リサイクル率 92%以上、リデュース率 6.0%以上の達成へ
資源の循環を促進し、国内のリサイクル意識を高める啓発活動に取り組む
2021 年度の国内アルミ缶リサイクル率は 96.6%、前年度から 2.6%プラス
同年度 CAN to CAN 率は 67.0%、前年度から 4.0%マイナス
2025 年度までの目標値であるアルミ缶重量 16.0g/缶に対し、2021 年度に 15.96g/缶を実現
2021 年度のリデュース率は 6.2%で、2025 年度の目標を前倒しで達成