調査結果のポイント
第1章:セルロースナノファイバー市場の展望
「2030年に量産レベル」の目標に黄色信号点滅?
2030年を見据えた折り返しの7年間でなすべきこととは?
国内のCNF生産設備の稼働率は10%以下の水準にとどまる
2030年まで「折り返しの7年間」が量産レベルの需要確保実現の正念場に
(図・表)CNF生産キャパ推移
(図)CNF生産キャパに対する稼働状況
(表)CNFの世界市場規模予測(固形分)
(図)CNFの世界市場規模予測
(図)CNF用途別市場規模推移(固形分換算)重量ベース
(図)CNF用途別市場規模推移(金額ベース)
(図)2025年及び2030年のCNF市場規模予測(固形分換算)重量ベース
(図)CNF強化樹脂市場規模推移(重量ベース)
ボリューム拡大の決め手は自動車での採用獲得にあり
耐衝撃性がボトルネックとなるもドローンなど広義のモビリティを突破口に進め!
(表)CNFと競合材料との価格比較
コスト、CO2排出量の問題解決に向けMFC、CeFなどミクロンサイズの繊維の活用も活発化
ダウングレードではないCNFを凌駕する性能も実現
CNFの「尖った性能」を突き詰め、他素材では実現できない用途開発で拓ける道もあり
ミクロンからナノまでの中から最適解を探し出せ
第2章:セルロースナノファイバー市場の動向
1.セルロースナノファイバー製法別動向
用途、繊維サイズなどニーズに合わせた製法が出そろう
(図)解繊度別のCNFの概況
1-1.化学的解繊
シングルナノサイズまで解繊可能で高透明、高粘度、高分散・乳化安定性という特性を活かし
化粧品、食品を中心に採用が拡大
(表)化学的解繊CNF 製法別参入企業
1-2.機械的解繊
京都プロセスでは生産工程を大幅に短縮した新工法の開発が進展
水衝突法は機能性添加剤としての採用が進む
(表)機械的解繊CNF 製法別参入企業
(表)セルロースナノファイバー 製法別概況 化学的解繊
(表)セルロースナノファイバー 製法別概況 機械的解繊
(表)主要メーカー各社のCNF生産能力
2.セルロースナノファイバー主要用途別動向
機能性添加剤は食品、化粧品、塗料などでの実用化が拡大
樹脂複合化用途では採用のボトルネック解消に向けた開発が進む
2-1.機能性添加剤
食品、化粧品、インク・塗料を中心に増粘剤、乳化安定剤、分散安定剤などで実績拡大
セルロース由来のCNFに加えキチンナノファイバーやシルクナノファイバーの活用も進展
(表)機能性添加剤用途でのCNF活用例
水分量や粘度の問題を解決するドライパウダーや低解繊CNFの開発・投入の動きも
エタノール置換など乾燥後の再分散性向上のための研究も進む
2-2.樹脂複合化
プラスチックの性能向上と環境問題解決を両立するCNF複合樹脂が
自動車、建材、家電などの軽量化と水平リサイクル、CN化を実現する材料として注目される
(表)CNFとGF、鉄の特性比較
京都プロセスでは水上バイクでの採用検討で本命の自動車部材が射程圏内に
さらなる工程短縮とCO2排出削減のための開発進展も進む
化学的解繊、水衝突解繊によるCNFスラリーでの天然ゴムとの複合化に向けた開発も進展
タイヤ、ベルト、ホースなど幅広い用途での採用に期待
樹脂の変性やモルフォルジー制御、CNFでの樹脂被覆、CeFの活用、圧延加工など
CNF複合樹脂採用のボトルネックである耐衝撃性改善に向けた各社の開発が活発化
(図)豊田合成のCNF強化プラスチックの展開
水平リサイクル可能という特性を最大限に活かすにはCNF複合樹脂の確実な分別が不可欠
2-3.その他
次世代でのCNF活用に向けた研究開発が注目される
3.MFC、CeFの動向
サンプルワークが進む中、添加剤、樹脂複合化ともに
CNF特有の「ナノ」「高粘度」が使いにくいニーズも浮き彫りに
コスト、用途、CO2排出量とパフォーマンスとをすり合わせ最適な繊維サイズの検討進む
3-1.機能性添加剤
水分量、粘度、コストの課題を解決するMFCの開発・投入が拡大
3-2.樹脂複合化
CO2排出削減、バイオマス度の向上に寄与するCeF複合品の採用始まる
CNF複合樹脂に無い高耐衝撃性を実現した製品も登場
(表)MFC、CeFの概況
第3章:セルロースナノファイバー川下市場の動向
直近開発車両搭載のための物性改良のタイムリミット近づく
1.モビリティ関連市場の動向
軽量、バイオ、リサイクル対応の材料として期待されるも、耐衝撃性とコストが課題に
CNF採用は「直近の開発テーマ」から「中長期的開発テーマ」に後退の可能性も
(表)NCVプロジェクトにおけるチャレンジと担当事業者
まずは比較的ハードルの低いユニット部品を突破口とする動きも
敢えて耐衝撃性向上ではなく「低密度・高曲げ弾性」に振り切った用途開発も進展
(図)TABCNFを用いたバッテリーキャリア(試作品)
大王製紙はレーシングカー、観光バスへのCNF部材搭載と公道走行を実現
(図)第100回PPIHCにおけるSAMURAI SPEEDのCNF使用箇所
(図)「ELLEX-M」で製作したバスフロントバンパー
2.モビリティ関連市場の動向
多くの用途で増粘剤、分散安定剤として量産品への採用が進展
農業資材、蓄電体、ハイドロゲルなどCNFの新たな可能性につながる用途開発も進展
2-1. 電気・電子関連
(図)CNFを利用した物理的高性能蓄電体
(図)土に還るIoTデバイスによる湿度センサーの活用例
2-2. 工業・産業関連
2-3. 建築・土木関連
(図)CNF配合コンクリート施工例
2-4. ファッション関連
2-5. 化粧品・トイレタリー関連
(図)BIOFEAT.シリーズスピンオフ商品 ハンドクリーム・ハンドバーム
(図)色付き美容クリーム「バウンドクッション」
2-6. 農業資材関連
(表)CNFの川下展開
第4章:セルロースナノファイバーメーカーの動向と戦略
日本製紙株式会社
ナノ~ミクロン、スラリー~パウダー、MBと多彩なサイズ、形状で
機能性の高いセルロースの活用・用途開発を進める
石巻、江津、富士の3拠点で異なるタイプのCNFを生産
CM化CNFを量産する江津工場は稼働率・生産量ともに安定
TEMPO酸化CNFは天然ゴムMBを開発しユーザーの使い勝手を向上
主力用途である機能性添加剤に加え、シート状蓄電体など独自の用途開発にも取り組む
輸送・保管コストダウンとユーザーの使い勝手向上を目指し
100%ピュアCNFのパウダータイプを開発、2023年初頭にサンプル供給開始予定
CM化CNFは食品、化粧品での採用実績が拡大
解繊度合いを数百nm程度に抑えたMFCのサンプルワークを実施
将来は変性パルプの形で供給しユーザーサイドで好みのサイズに解繊するスタイルも検討
京都プロセスの「セレンピアプラス®」は水上オートバイ部品を突破口に
モビリティ部材での採用を目指す
王子ホールディングス株式会社
サイズ、形状にこだわらず、環境素材であるセルロースを活用することで
高性能・高付加価値でサステナブルな材料開発に取り組む
シングルナノ~数百ナノ~ミクロンレベルまで様々なサイズ展開で
幅広いニーズに取りこぼしなく対応しユーザーへの提案力を強化
機能性添加剤では化粧品を中心にCNFスラリー「アウロ・ヴィスコ」の採用実績が拡大
非水系材料にも添加しやすいパウダータイプのサンプルワークも継続
CNF連続シート「アウロ・ヴェール」は卓球ラケット素材として継続的な採用を獲得
光の波長よりも小さい繊維径を活かし透明樹脂との複合化で無機ガラス代替を狙う
高粘度・高透明性が不要な用途向けには解繊度合いを調整した粗大CNFを提案
硬さと伸びを両立したオール天然素材のCNF/天然ゴム複合品はタイヤでの採用を狙う
化学変性及びナノサイズまでの解繊無しのセルロース繊維と樹脂とを複合化し
高剛性・高耐衝撃でコスト競争力の高い材料を実現
第一工業製薬株式会社
TEMPO酸化CNFの優れた特性を活かし高機能添加剤としての採用広がる
研究開発の幅を広げるためアカデミア向けに無償サンプル供給を開始
主力の固形分2%スラリーの課題解決に向け、パウダータイプに加えて
繊維幅が広く高濃度な「レオクリスタ クロス」を投入
主力の化粧品向けは大手・メジャーメーカーでの採用が進展、工業用ではLiBバインダーや
セラミックス、CFRP、水系樹脂などCNFの特性を活かした用途での検討が進む
中越パルプ工業株式会社
ACC法の特長を活かし、添加剤や樹脂複合化などだけでなく
農業資材、再生樹脂分野への応用など独自のユニークな活用方法を展開
「nanoforest-S」は分散・乳化安定性、チキソ性が活かせる添加向けの他に
植物葉表面でのネットワーク形成を活かした病原菌感染防止の農業資材として提案を進める
樹脂強化用途ではパウダーグレードやMBなど樹脂へのCNFの分散配合だけでなく
CNFスラリーへの樹脂含侵による表面ネットワーク形成を活用した研究開発に取り組む
2022年春より高解繊、表面疎水化、100%成形体など高機能CNFの
パイロットプラント建設に向けた設備実証が進展、一部製品のサンプル販売も始まる
株式会社スギノマシン
高付加価値の添加剤分野を中心に展開
多彩なサイズ、形状をラインアップし用途開発を推進
少量のサンプルを組み合わせたトライアルセットなどによるCNF普及への貢献が評価され
2021年度のセルロース学会技術賞を受賞
繊維径をシングルサイズとした極長繊維タイプや、解繊度をマイクロサイズに抑えた
表面繊維化セルロースなど、多彩なサイズ展開でニーズにきめ細かく対応
早月事業所内の労働組合新事務所にBiNFi-s複合床材を実装
BiNFi-s/Agナノ粒子複合体の抗菌・抗ウイルス効果が確認される
星光PMC株式会社
キチンナノファイバーで展開するマリンナノファイバー社を子会社化
工業分野に加えヘルスケア分野にも事業領域を拡大
京都プロセスによるCNF複合樹脂「STARCEL®」の生産効率化を実施
本格的な需要拡大に向けたコストダウンを図る
オレフィン系に加え、エンプラ、ゴム、バイオマスプラ、リサイクルプラなど
ユーザーの要望に応じたベース樹脂とCNFとの複合化に向けた開発を推進
カニ・エビなど甲殻類由来で多用な生理作用を持つキチンナノファイバー事業を取得
既存のCNFの機能・特長を補完し、新たなシナジーに期待
株式会社ネイチャーギフト
着色、トレーサビリティなどヘキサケミカルの技術力を活かした差別化を推進
rPPベース品やCMF強化樹脂もラインナップしニーズ対応力を強化
着色、トレーサビリティなど、ヘキサケミカルの技術力を活かした差別化を推進
CNF複合樹脂はコンスタントな引き合い、サンプル供給により生産能力アップのメドがつく
標準グレードとカスタム品で幅広いニーズに対応
耐衝撃性、コストなど、CNF複合樹脂の課題解決につながるグレード開発を推進
パナソニックプロダクションエンジニアリング株式会社
セルロース繊維(CeF)を高濃度に配合した成形材料「kinari」を展開
全乾式プロセスによるCO2排出削減、白色ペレットに強み
CeF55%配合した「kinari」の量産販売を開始、石油由来樹脂削減に加え
CO2を排出抑制できる生産プロセス、リサイクル対応など環境適性の高さを武器に提案を推進
CeF配合率、ベース樹脂などをニーズに合わせたグレードを揃える
高流動性、高剛性の付与に加え耐衝撃性改良に向けた開発に取り組む
2019年から続く「森のタンブラー」に加え、アパレル、日用品、食器などに採用が拡大
株式会社巴川製紙所
セルロースファイバー高配合樹脂グリーンチップ® CMF®の採用進む
主力の低臭グレードの他、耐衝撃、難燃などのグレード開発を推進
石油由来樹脂削減、リサイクル対応、CO2排出削減、コスト等のメリットを訴求
セルロース繊維55%配合の主力グレードでバイオマスマークを取得
リサイクル樹脂への添加で物性向上など、循環型社会に貢献
カトラリーセット、箸、マグカップなど、低臭気の特長を活かした用途での採用進展
家電、自動車など幅広い分野でのサンプルワークも進む
トヨタ車体株式会社
植物材料のクルマへの適応に取り組む中でCNFに注目
軽量・高剛性という特性を最大限に活かせる用途開発を推進
脱炭素・循環型・自然共生社会構築を目指し長期的な取り組みを継続
植物材料開発と車両部材への実装を通じて石油由来プラスチックの削減を図る
トヨタ紡織株式会社
NCVプロジェクト、バイオPE-CNF社会実装プロジェクトなどを通じ
自動車部品へのCNF採用に向けた開発を進める
環境問題解決に向け作成した「2050年環境ビジョン」実現に向け植物系材料の採用を推進
CNF複合樹脂を使用したドアトリム、エアクリーナーケースの試作を実施
耐衝撃性改善、コストダウンの実現に向けた開発を継続
国立大学法人京都大学(生存圏研究所・矢野浩之 教授)
CNFの研究で蓄積した技術と知見を活かしたセルロースの社会実装を推進
コストとパフォーマンスの最適化で「最強の材料」実現を目指す
乾燥不要でシンプルな工程の第四世代リアクティブプロセスを開発
コスト、GHGの両面からユーザーのCNF採用の「うれしさ」を補完
パルプからCNFの間でコスト・パフォーマンス・GHGに対するニーズを満たす最適解を探る
サイズを問わず「環境素材」としてのセルロースの採用拡大に向けた研究を推進
国立大学法人大阪大学(産業科学研究所・能木雅也 教授、春日貴章 助教)
電圧を利用した配向制御可能なCNFハイドロゲル、エタノール置換による
再分散性の高いCNF乾燥粉末など、用途開発の幅を広げる研究を推進
電圧により繊維の配向を制御し、異なる方向に堆積したCNFハイドロゲルを初めて実現
人工関節など新しいCNFの可能性拡大に期待
エタノール置換・蒸発乾燥による再分散性の高いCNFパウダーを実現
輸送・保管コストの大幅削減への道を拓き、CNF活用の幅を広げる