今週の"ひらめき"視点

海洋国家日本、世界に対してイニシアティブをとるべき機会を逃すな

15日、参院本会議は「改正海岸漂着物処理推進法」を可決した。洗顔料やボディソープといった化粧品や歯磨き粉には「マイクロビーズ」というプラスチック粒子が使用されており、こうした製品の廃棄物が河川や海に流れ込むことによる生態系への影響が懸念されてきた。本法案はこうした微細なプラスチックの使用制限について企業側に努力義務を課すものである。罰則規定は盛り込まれず、数値目標も書き込まれていない。業界サイドの取り組みによって使用制限が既に強化されている現状を鑑みると、法的対応における“周回遅れ”は否めない。

貿易問題における米国との対立がクローズアップされたG7首脳会議であったが、プラスチックごみによる海洋汚染の問題も討議された。6月9日には世界各国に対策を促す「シャルルボワ・ブループリント」を採択、更に、英、仏、独、伊、加とEUは自国でのプラスチック規制の強化と海洋生態系の保護を謳った「海洋プラスチック憲章」をまとめ、これに署名した。日本は米国とともに憲章への署名を見送っている。
欧州の対応は早い。英国はこの1月、数値目標を書き込んだプラスチックごみの削減目標を発表、EUも5月には使い捨てプラスチックの制限を規定した新たな制度を議会に提案した。トランプ政権による環境問題からの後退が顕著である米国ではあるが、マイクロビーズについては2015年12月、オバマ大統領が「マイクロビーズ除去海域法」に署名、昨年7月に製造が禁止された。P&G、ユニリーバ、マクドナルドといったグローバル企業もプラスチックごみの削減に対してそれぞれ対策を講じつつある。

国連によると世界のプラスチックごみの発生量は3億トン、うち800万トンが海に流出しているという。日本人の1人当りプラスチック消費量は米国についで2番目である。北太平洋には総量1億トン超、米テキサス州の2倍以上の面積を持つごみの島が浮遊している。国土の12倍の領海を持つ海洋国家で、かつ、プラスチック消費大国である日本の責任は軽くない。


今週の”ひらめき”視点 6.17 – 6.21
代表取締役社長 水越 孝