今週の"ひらめき"視点
COP29、波乱と懸念の中でスタート。資金拠出問題の合意なるか
11月11日から22日までの日程で、気候変動対策を協議する国際会議COP29がアゼルバイジャンの首都バクーで始まった。冒頭、議長国のババエフ環境・天然資源相は「気候変動は既にはじまっている。COP29を新たな道を切り開く瞬間にする」と合意形成への意欲を表明、国連のグテーレス事務総長も「気候変動対策への資金援助は慈善事業ではなく、投資だ。これが最後のカウントダウンであり、選択肢はない」と各国首脳に呼びかけた。
会議に先立つ7日、EUの気象情報機関が発表した観測データによると2024年1月から10月までの世界平均気温は昨年を0.16℃上回る15.36℃となった。これは過去30年間の平均気温より0.71℃高い数字であり2024年の年間平均気温は「パリ協定」で採択された目標値 “産業革命以前に対して+1.5℃以内” をはじめて超える見通しであるという。日本をはじめ世界中が記録的な猛暑や豪雨に見舞われており、危機は現実の “災害” として顕在化している。
さて、会議の最大のテーマはいかに多くの資金を低所得国のために確保できるかである。それだけに気候変動そのものを「フェイク」と批判し、パリ協定からの離脱を公言してきたトランプ氏率いる米国への懸念が高まる。各国は「米国は温室ガスの排出大国であり、その責任から逃げるべきでない」と牽制、米エクソンモービルのウッズCEOも「離脱ではなく、参加することで主張すべき」と米国の離脱に反対の立場だ。
先進国と途上国の利益が相反するCOPはそもそも合意へのハードルが高い。加えて議長国のアリエフ大統領が「欧米はダブルスタンダード、石油は神の恵み、現実的であれ」などと発言、会議は波乱含みのスタートとなった。こうした中、英国のスターマー首相がパリ協定の目標に整合する温室効果ガスの削減目標を発表、日、米、中、独、欧州委など主要国首脳が軒並み欠席する中、英国のプレゼンスが高まる。国会や外交日程もあろう。とは言え、日本のトップの不参加は残念だ。気候変動への取り組みを「日本がリードしたい」と語ってきた石破氏はまた一つ自身の “らしさ” をアピールする機会を逸した。
今週の“ひらめき”視点 11.10 – 11.14
代表取締役社長 水越 孝