今週の"ひらめき"視点

ガザを“中東のリビエラに”の独善、2国家共存への希望はあるか

2月10日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスは、イスラエルが支援物資の搬入を制限しているとして人質交換の見送りを示唆した。これにトランプ大統領は即座に反応、「15日正午までに人質が解放されなければ地獄を見ることになる」と警告した。13日、ハマスは戦闘再開を回避すべく予定どおり人質を解放する旨の声明を発表、依然として“薄氷”ではあるが、ひとまず停戦合意は維持される模様だ。

そもそもハマス側の不信の背景には4日、ネタニヤフ首相との共同記者会見の席上で発せられた「全住民を強制移住、ガザは米国が所有し、リゾート地として再開発する」とのトランプ構想がある。当然ながらアラブ諸国はもちろん国際社会は一斉にこれを非難、米国のルビオ国務長官も「復興までの一時的なもの」と釈明した。しかし、ご本人は「未来のためのディールであり、住民に帰還の権利はない」と明言、“中東のリビエラ構想”を撤回するつもりはないようだ。

先週末、筆者も運営の一端に関わっているシェア型書店「センイチブックス」(調布市仙川)で、ジャーナリスト川上泰徳氏のドキュメンタリー映画「“壁”の外と内:パレスチナ・イスラエル現地報告」を上映した。住民の目の前で住宅が破壊され、子供たちの目の前で学校が押しつぶされる。一方で拡大してゆく入植地。圧倒的な暴力に踏みにじられる生活と自由、彼らは一体どこまで耐えられるのか。報道されることのないヨルダン川西岸の現実に言葉を失う。

はたして住居も家財も失った住民はこの地を去ったか。否、かつて彼らの遠い祖先がそうしたように洞窟での暮らしがはじまる。その土地で生きること、それこそ彼らに残された尊厳であり、そこにトランプ構想の錯誤と傲慢さの本質がある。希望はあるのか。自身の兵役拒否で「何かが変わることを願う」と語ったイスラエルの若者の言葉にそれを見出したい。本ドキュメンタリー映画は、2月23日と24日の両日、西荻窪の「西荻シネマ準備室」で上映される。多くの方に観ていただきたく思う。まずは知ること、そして、考えることからはじめたい。

※パレスチナ・イスラエル現地報告取材ドキュメンタリー『“壁”の外と内』上映会+トーク・質疑応答by川上泰徳(中東ジャーナリスト)@東京・西荻<2/23(日)&24(月)午後1時半より>
【日時】2025年2月23日(日)、24日(月:振替休日)13:30~16:30(開場13:00)
【場所】西荻シネマ準備室(西荻のことカフェ2F)
東京都杉並区西荻南3-6-2(JR西荻窪駅南口徒歩3分)
【参加費】2000円、大学生以下1500円
※定員30人(予約制)
※上映後、1時間のトークと質疑応答を行います。
◇予約はこちらから:https://x.com/kawakami_yasu/status/1891856613772038497


今週の“ひらめき”視点 2.9 – 2.13
代表取締役社長 水越 孝