今週の"ひらめき"視点
蔡総統、少数民族に対する人権侵害を謝罪。日本にとって格好の外交チャンス
1日、台湾の蔡総統は、過去400年間にわたって先住民が受けてきた差別的待遇と苦痛に対して政府を代表し、公式に謝罪した。蔡氏は「台湾に来たすべての政権が武力を使って先住民の土地を奪い、権利を侵害した」と述べたうえで、自治の推進、地位の向上、権利の回復に努めることを表明した。台湾に来たすべての政権とは、オランダ、清朝、日本、そして、共産党との内戦に敗れ遷台した国民党政府を含む。
日本統治(1895年-1945年)に対する評価は、台湾にとって今も「政治問題」であり、日本にとっての台湾は常に中国、米国との関係においてバランスされる。相互の主体的な関係づくりは国際政治と歴史問題から強く牽制されたままである。
一方、音楽やファッションなど文化的な親和性は相互に高い。日本人が2016年に行きたい海外旅行先の1位は台湾(リクルート・ライフスタイル)、台湾人が2016年の夏休みに行きたい国ランキングの1位は日本(台湾、自由新報)、との結果もある。
蔡氏が表明した少数民族に対する“政府として”の表明は、したがって、歴代政権に関与した者の責任を浮き彫りにする。少なくとも日本にとっては無視し得ない。とは言え、大上段に振りかぶった歴史問題は関係国を含む政治的スタンスを先鋭化させる。その意味において、少数民族問題と言う普遍的なアプローチは、両国関係の深化と国際社会におけるプレゼンスの向上をはかるうえで絶好の機会である。この“政治的チャンス”に対する日本の先手に期待したい。
今週の”ひらめき”視点 07.31 – 08.04
代表取締役社長 水越 孝