今週の"ひらめき"視点
古本屋さんの新たな業態“ブックマンション”、シェア型店舗で個性を発信
“ブックマンション” という新しい本屋さんのカタチをご存知だろうか。仕掛人は24時間無人営業の古書店「BOOK ROAD」(三鷹)を経営する中西功氏、「本をシェアする文化を広めたい」との想いから2019年7月、吉祥寺に第1号店をオープンした。ビジネスモデルはシンプルだ。要するに店内の本棚、1棚1棚を売り場単位とするインショップ型のショッピングモールである。
インショップのオーナー(棚主さん)は自身の愛読書やみんなに勧めたいと思う本を自由に棚に並べ、販売することが出来る。つまり、棚主さんは「世界にたった一つのセレクトショップの経営者」ということだ。と言っても、約30㎝四方の1棚であって、大きな売上が期待できるものではない。棚は自分の価値観や想いを伝える表現の場であり、そこに共鳴した人との出会いや共感の連鎖こそ棚主さんが獲得する資産である。小さな1棚から発信されるメッセージは地域や人とのつながりを創造するための無形の資本ということが出来よう。
そんな “ブックマンション” スタイルの新たな店舗が京王線仙川の商店街の一角にこの春オープンする。店名は「1000+1BOOKs(センイチブックス)」、私事で申し訳ないが筆者の妻が代表を務める「万朶プランニング」が運営する。現在、3月のオープンに向けて第1期棚主をクラウドファンディングにて募集中、自分の読書歴を自慢したい、自分と同じ本を読んだ人と語り合いたい、自分を表現する拠点を持ちたい、ちょっとした副業にチャレンジしたい、なんて方であれば誰でも大歓迎、ご関心のある方は以下をご覧いただければ幸いである。
【仙川】自分本棚で個性発信!共同参加型誰でも本屋さんセンイチブックスプロジェクト - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)
リアルからデジタルへのシフトはあらゆる業種業態で進む。そして、その攻防に決着がつきつつある中、今、リアル店舗の再価値化が進む。コト消費が注目されはじめたのは1980年代の後半、やがて、特定の時間や空間を共有することに価値を見出すトキ消費へ発展する。顧客満足(CS)から顧客体験(CX)への質的変化、と言うことも出来よう。要するに、今、店舗に求められる付加価値は、参加し、体験し、共感し、プロジェクトや社会への貢献を実感できる場、ということだ。ブックマンションはその一形態である。業態としてはまだ進化の途上だ。多彩なパートナーを巻き込んでの新たな創発に期待したい。
今週の“ひらめき”視点 12.26 – 1.13
代表取締役社長 水越 孝