今週の"ひらめき"視点
IEA、東南アジアの化石燃料依存を懸念。日本は地熱資源開発に遅れをとるな
10月21日、国際エネルギー機関(IEA)はシンガポールに初の海外事務所を開設した。IEAによると、東南アジアの電力需要は年率4%増、2050年までに60%以上増加する。一方、東南アジア各国が気候変動目標を達成するためには2035年までにクリーンエネルギーへの投資を現在の5倍、1900億ドルに引き上げる必要があるという。IEAはシンガポールを拠点に東南アジア各国との連携を強化、エネルギー安全保障とエネルギー転換の加速を支援する。
実際、ダイナミックに成長を続ける東南アジアは、世界のエネルギー需要成長率の25%を占めると予想され、今世紀半ばまでに欧州(EU)のエネルギー需要を上回る。一方、気候変動対策は十分とは言えず、CO2の排出量も35%増となる見通しだ。クリーンエネルギーへの転換、送配電網における地域間連携のインフラづくりが課題だ。
クリーンエネルギーについては、地熱資源が豊富で、かつ多くの島嶼部を有する地域特性を鑑みると地熱発電によるマイクログリッドの整備も有効だ。現在、世界の地熱発電の設備容量は1位が米国、2位がインドネシア、3位がフィリピンである。とりわけ、インドネシアは地熱法を整備するなど地熱資源の活用促進をはかる。それでも総発電量の数%といったレベルであり開発余力は大きい。ビル・ゲイツ氏やGoogle社が支援するシェール掘削技術を応用した地熱発電スタートアップFervo Energy社(米国)も東南アジアへの事業展開を将来構想に入れる。
さて、地熱発電を資源量でみると日本は米国、インドネシアに次ぐ世界3位の資源国である。一方、設備容量となると10位に後退、純国産エネルギーのポテンシャルを活かしきれていない。開発期間の長さ、費用の大きさ、資源の8割が国立・国定公園内に存在することが制約要因である。とは言え、供給安定性が高く、超臨界地熱発電、高温岩体地熱発電といった次世代技術の開発余地が大きい地熱発電への投資は急ぐべきだ。上記Fervo Energy社には三菱重工グループも出資、タービンを供給するなど関連企業のビジネスチャンスも大きい。自然環境の維持、地域社会との共生を原則としつつも、地熱発電に関する産官学の取り組みを加速していただきたい。
今週の“ひらめき”視点 10.20 – 10.24
代表取締役社長 水越 孝