調査結果のポイント
第1章 リサイクル炭素繊維市場の展望
材料、中間材、成形の連携・競合と「環境価値」を訴求した用途開発で
世界をリードする日本のrCFの実現へ!
CFRPリサイクル技術の開発・事業化に向けた動きは進展も実際のリサイクル量は限定的
rCFの品質、安定調達、用途開発の3つの課題の早急な解決を!
(表)日本及び欧州の廃プラスチック排出量及び処理量内訳
(図)CFRP端材・廃材からのリサイクル量のイメージ
rCFの国際標準化に向けた産官学の取組みが進展、日本主導でISOのWGも立ちあがる
材料、中間材、成形の各フェイズを貫くネットワーク構築も課題に
(図)炭素繊維の比強度・比弾性比較
廃棄地の特定が難しい使用済製品のリサイクル実現には未だ高いハードル
「地消地産」実現のためには端材の確実な回収・リサイクルシステムの構築が喫緊の課題に
短繊維化は必ずしもダウンサイクルではない、rCFにしかない「環境価値」の訴求で
vCFでは実現できない新たな用途・市場の開発を!
第2章 リサイクル炭素繊維市場の動向
1.CFRP端材・廃材のリサイクル動向
1. CFRP端材・廃材の発生量推移
日本国内リサイクラーで量産に近い規模でのrCF回収・サンプルワークが始まる
(表)CFRPとCFRTPの違い
CFRP市場規模に占める工程内端材発生量は2023年見込みで25,000tと全体の15%
退役・使用済製品由来の廃材発生量は2023年に36,000t強程度となる見込み
(図)CFRP市場規模推移(W/W)
(図)CFRP端材発生量推移
(図)CFRP廃材(退役・使用済製品由来)発生量推移
2. CFRP端材・廃材の処分量とrCF回収量推移
CFRP端材・廃材は現状では埋立処理が中心、リサイクルに回るのは
端材発生量の約15%、端材・廃材量合計では6~7%に留まる
(図)CFRP端材発生量のうちリサイクルに回る量の推移
(図)CFRP端材・廃材発生量合計のうちリサイクルに回る量の推移
(図)CFRP端材・廃材からのrCF回収量推移
(図)CFRP端材地域別リサイクル処分量推移
3. 使用済CFRP(CFRP廃材)処理動向
退役・使用済CFRP製品の最終的な廃棄処分地を把握できる仕組みと
適切な回収システムの構築がリサイクル率向上実現に向けた喫緊の課題に
(表)CFRP市場規模推移(W/W)
(表)CFRP端材・廃材発生量推移(W/W)
(表)CFRP端材・廃材中のCF量(W/W)
(表)CFRP端材発生量のうちリサイクルに回る量の推移
(表)CFRP端材・廃材発生量合計のうちリサイクルに回る量の推移
(表)CFRP端材・廃材からのrCF回収量推移
2.国内の主要なCFRPリサイクル企業の動向
CFRPリサイクル事業の主体は炭素繊維協会からCFメーカー、リサイクラーへとシフト
産官学連携でのプロジェクトが進展
(表)炭素繊維主要メーカー及び炭素繊維協会のリサイクルへの取組み一覧
(表)日本の主なCFRPリサイクル関連プロジェクト概要
早い時期から実用化段階に入った熱分解法では富士加飾、新菱が量産段階へ
両社ともrCF単体ではなく川下よりの中間材で展開、早期の社会実装化を目指す
(表)熱分解方式で展開する国内主要リサイクラー概要
化学分解法は2024年~2025年をメドに実用化フェーズへ
低炭素なリサイクル技術として注目され新規参入も増加
(表)化学分解方式で展開する国内主要リサイクラー概要
rCF回収から活用方法まで、各研究機関での開発も進む
(表)日本国内のrCF主要研究機関
(表)日本国内の主なrCFリサイクラー・研究機関
3.rCFの活用状況
1. rCF中間材の動向
rCFペレットは富士加飾が他社に先駆けて2020年にPA6複合品を市場投入
新菱ではOA機器由来の再生樹脂とrCFの複合化によるオールリサイクル樹脂を開発
rCF不織布ではそのままでプレス成形可能な熱可塑性繊維混紡品の開発が活発化
rCF紡績糸・スライバーなど新しい中間体の製品化も始まる
(図)龍田紡績によるrCF中間体
2. rCFの採用動向
rCFは調達、価格、品質保証の課題から元のCFRPと同一用途での採用には至らず
民生用ではノートPCのDELLが採用した他、VAIOがrCF水平リサイクルを検討
BMWが「i3」「7シリーズ」でrCF採用もCFRPからの回収品は「7シリーズ」Cピラーのみ
改正ELV指令でリサイクル体制未整備の材料が敬遠される懸念も
4.海外における炭素繊維リサイクルの動向
1. 欧州
EUでは加盟国が準拠すべき5段階の「廃棄物ヒエラルキー」優先順位が提示されるも
CFRPを始めとする複合樹脂に関する包括的ルールの指定無し
(図)欧州における廃棄物処理の優先順位
(図)EUにおける廃棄物の分類
1-1. Gen 2 Carbon Limited
1-2. Mitsubishi Chemical Advanced Materials
2. 米国
米国では廃棄物全体の50%が埋め立て処分
州政府および自治体が都市ごみ処理の権限を有する
(図)米国における廃棄物分類
2-1. Carbon Conversions Inc.
2-2. Vartega Inc.
3. 中国
CF、CFRP市場が急速に拡大する中国でもrCFへの取組みは限定的
専業リサイクラーのFUYが処理能力1,500t/年でrCF回収・加工品の生産・販売を実施
(表)中国の炭素繊維回収及び再生利用関連政策
3-1. 南通複源新材料科技有限公司
3-2. 新創碳谷集団有限公司
4. その他
台湾、韓国でもrCFリサイクラーが立ち上がる
4-1. 安能聚綠能股份有限公司
4-2. CATACK-H研究所
(表)海外の主なrCFリサイクラー・研究機関
第3章 リサイクル技術別動向
1.CFリサイクル技術の動向
1. 熱分解法
熱分解法では富士加飾の熱風循環方式の実用化がスタート
1-1. 外熱式
1-2. 熱風循環方式
1-3. 過熱水蒸気法
1-4. 流動層プロセス
1-5. マイクロ派分解法(高周波分解法)
2. 化学分解法
日本国内において酸や有機溶媒による化学分解法が実用段階へ
低炭素で高純度なrCF回収方法として注目集める
2-1. 加溶媒分解法
2-2. 超臨界流体法/ 亜臨界流体法
2-3. 流体処理
3. その他
3-1. 半導体の熱活性(Thermal Activation of Semiconductors:以下TASC)
3-2. 微生物による分解(Biotechnical Process)
3-3. 溶媒洗浄法
(表)CFRP端材・廃材のリサイクル方法の比較
第4章 リサイクル炭素繊維メーカー動向
富士加飾株式会社
炭素繊維の「リサイクル」にとどまらず、rCF製品の「循環」まで見据えた
製品およびシステム開発で他社とは一線を画した展開を推進
価格、性能、LCAなどrCFならではのメリットの訴求で
vCFの代替ではないrCF独自の市場開拓に取り組む
独自の熱風循環方式により成形前の繊維配列のままで劣化の無い高純度なrCFの回収を実現
rCF単体ではなく、ペレット、不織布、織物など多様な形態の加工製品として展開
2022年にはrCFの量産・拡販を担う子会社富士デザインを設立
材料メーカー、製品メーカーとの協業によるサステナブル製品の社会実装への取組みを強化
株式会社新菱
高い生産性と品質、蓄積されたコンパウンド技術を武器に
rCF複合樹脂の生産・供給を推進
2018年よりrCF回収、rCFコンパウンド事業が本格始動
2023年にはPVパネルとCFの共用リサイクルプラントが稼働開始
2023年度内にrCFコンパウンド生産能力を3,000t/年に拡大予定
OA機器由来のリサイクル樹脂を使用した繊維・樹脂オールリサイクル品の需要に期待
不活性雰囲気下での熱分解による酸化ガスによる劣化の無いrCF回収に強み
三菱ケミカルグループと連携し、CF未使用分野の開拓に取り組む
アースリサイクル株式会社
独自の湿式分離技術で熱劣化のない高性能・高性能なrCFを回収
CFRP以外の廃材の分離にも対応し廃棄物削減と再資源化に貢献
グリコール類による湿式分離法でCFRPを始めとするあらゆる廃棄物の分解・再利用を実現
rCFだけでなくマトリクス樹脂のエポキシも回収可能、より再生度の高いリサイクルを実現
繊維の表面処理や樹脂残渣の程度はニーズに合わせて対応可能
2022年に容積1,400Lのバッチ式多機能熱分解装置が本格稼働
さらなる高効率化を実現する連続式設備、二段階分離方式の開発も完了
アイカーボン株式会社
高純度・高強度でより社会実装しやすいrCFを開発
不織布向けスラリー、射出成形樹脂向けカットファイバーと2形態で展開
2018年以降は酸アルカリ法によるダメージの少ない炭素繊維リサイクルに取り組む
酸反応とアルカリ処理の合わせ技でvCFより高強度のrCF回収を実現
より幅広い用途での展開を目指し射出成形樹脂と複合化しやすい
カットファイバー状rCFの回収に成功、2023年4月に特許を申請
豊田通商との協業により中京地区での量産プラント立ち上げを目指す
株式会社ミライ化成
マーケットインの思想でrCF回収から製品化プロデュースまでを展開
商社の発想でrCF事業を展開、マトリクス樹脂の種類やrCFの用途
求められる品質や生産性などを考慮し最適な溶媒を選択できる体制に強み
前処理~分解~アフタートリートメントまでの独自プロセスを構築
繊維劣化が無く残存樹脂が極めて少ない高純度のrCF回収を実現
プレス成形可能なrCF不織布としての展開を推進
2023年にはrCF/PA不織布を成形したアタッシュケースの発売を開始
回収能力500kg/月の量産パイロット設備が2024年度より本格稼働開始予定
業界の垣根を超えた持続可能なリサイクルビジネスモデルの確立を志向
旭化成株式会社
2030年ごろの社会実装を目標に
電解硫酸の使用による熱劣化のない連続rCF回収技術を開発
旭化成、北九州高専、東京理科大の3者で連続rCF回収技術開発プロジェクトを推進
強度劣化のない連続繊維のリサイクルでvCFと同様の活用・用途開発を目指す
DIAM株式会社
自社製造の合成ダイヤモンド電極利用の循環型電解硫酸生成システムで
CFRP端材・廃材からのrCF回収に成功
独自に開発した導電性合成ダイヤモンド電極の様々な用途での実用化を目指す
電解硫酸によるrCF回収では電極となる導電性合成ダイヤモンドの自社製造と
溶液となる電解硫酸の完全循環システムで差別化
一般財団法人ファインセラミックスセンター
設備メーカーと共同で過熱水蒸気を利用したrCF回収技術に加え
rCF評価方法など社会実装に向けた開発を推進
CFRPリサイクルへの取組みは2009年にスタート
バッチ式、連続式ロータリーキルンとニーズに合わせた開発・デモを行う
過熱水蒸気により低エネルギー消費、低コストで高品質なrCFを回収
水素タンクなど大型・厚肉製品に対しても効率的なリサイクルを実現
株式会社ユウホウ
これまで蓄積した不織布関連の技術力に加え
東洋紡、三菱商事とのシナジーを活かした事業の最適化・最大化を実現
「どこにもない不織布」をコンセプトに、優れた機械特性と成形性を併せ持つ
独自製品「疾風-HAYATE-®」を開発、20年以上の量産実績で市場優位性を確保
ニーズに応じたカスタム対応だけでなく、顧客の製品に最適なシート設計・成形方法の提案など
モノづくりのパートナーとしてのポジションで欧州市場を中心に採用実績を拡大
株式会社フジコー
vCF不織布量産の中で蓄積した知見・ノウハウと不織布メーカーとしての
技術力を武器にプレス成形可能なrCF不織布を展開
2021年に親会社のニッケよりrCF/熱可塑性繊維混紡不織布事業を移管
2022年よりサンプル供給を開始
用途や成形方法に合わせてrCFと組み合わせる熱可塑性繊維を選択・配合
EVの軽量化を実現する新素材として内装部品での採用に期待
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
航空機由来のCFRP端材・廃材のリサイクルを目指し
高配向のrCF不織布の開発に取り組む
退役航空機、工程内端材、メンテナンス用在庫から回収したrCFの有効活用に向けた
研究開発を2010年から継続
独自のカーディングマシンで高配向なrCFウエブを実現
エポキシを含侵したrCFRPはA2024と同等以上の強度を示す
rCFの社会実装に向けた企業同士の情報交換・ネットワーク構築を志向
Gen 2 Carbon Limited
自動車、鉄道、飛行機などの輸送セクターを重要マーケットと位置付け
ELV指令にも貢献する方針
グローバルレベルでも最大規模となる1,700t/年の処理能力を保有するプラントを稼働
2021年5月に長繊維のリサイクルにフォーカスする経営方針を発表
研究開発に注力し豪州大学とも同地でのrCF市場発展のため戦略的提携を締結
2025年までに豪州と米国に2つの海外工場を開設計画も発表
熱分解法によるrCFはニーズに合わせて一次加工品、二次加工品として供給
Mitsubishi Chemical Advanced Materials
三菱ケミカルグループの一員として欧州でのrCF事業に取り組む
2020年8月にドイツCFリサイクラーおよびrCF販売会社を買収し
CFRP・CFの製造、回収、リサイクルまでを一貫して実施できる体制を構築
2023年中にドイツのリサイクル拠点の処理能力を増強する計画を発表
川下領域に注力し、自動車産業をターゲットにrCF事業を展開する
2022年11月には従来の短繊維と比較して多方向からの衝撃や荷重に強い複合材料を開発
rCF特長を実証したケーススタディを実施、CFを未来の素材として各種業界への展開を図る
Carbon Conversions Inc.
北米では最大規模となる1,900t/年の処理能力で
チョップドCF、LFTペレット、短繊維マットロールなど幅広く展開
PIR調達先へrCFを再供給するClosed Loopシステムの構築に着目
使用量が多い航空宇宙産業をrCFマーケットの拡大のカギと位置付ける
Vartega Inc.
低コストグレードのrCFを不織布、ペレット、3DPフィラメントなどに展開
IACMIとの協力のもと、自動車産業へも参入する計画をも打ち出す
2022年8月に自社の生産拠点を10倍に増強する計画を発表
年産2,000tの生産能力により北米で拡大する顧客需要への対応を図る
特許取得済みのリサイクルプロセスであるHardware-as-a-Serviceを強みとし
100t/年の硬化前のプリプレグスクラップを処理、エンプラなどへコンパウンド化