2024年版 セルロースナノファイバー市場の展望と戦略
近年、幅広い産業分野でサステナブルマテリアルが注目されており、植物由来のセルロースナノファイバー（CNF）や、CNFよりも解繊度合いを落としたセルロースマイクロファイバー（MFC）が、様々な用途で採用実績を伸ばしてきました。このうち繊維径をナノサイズまで解繊したCNFは高い分散安定性・乳化安定性やチキソ性といった他に無い特性が評価され機能性添加剤としての実績を伸ばしている他、樹脂強化材分野では軽量で高弾性率、発泡可能、リサイクル適正といった特性からスポーツシューズや日用品などに加え、2023年には水上バイクなどモビリティ関連での採用を実現しています。MFCはコスト面での優位性に加え、樹脂強化材では高い添加率が化石由来原料の使用削減につながるサステナブル材料として評価され、幅広い用途で採用例が増えてきました。いずれにおいても、参入メーカーでは開発段階から実用化段階へとフェーズを移し、今後の用途開発・市場開発の動向が注目されます。
発刊日
2024/03/28
体裁
A4 / 182頁
資料コード
C65128200
PDFサイズ
45.8MB
PDFの基本仕様
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※紙媒体で資料をご利用される場合は、書籍版とのセット購入をご検討ください。書籍版が無い【PDF商品のみ】取り扱いの調査資料もございますので、何卒ご了承ください。
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カテゴリ
調査資料詳細データ
調査概要
調査結果サマリー
資料ポイント
調査目的：セルロースナノファイバー、セルロースファイバーメーカーの現在の動向を把握するとともに、今後の事業計画や研究開発動向を明らかにすることを目的とする。
調査対象：
・セルロースナノファイバー（CNF）
・セルロースファイバー（CeF）
調査方法：弊社専門調査員による直接及びWeb面談による取材をベースに、文献調査を併用した。
調査・分析期間：2024年1月～2024年3月
セルロースナノファイバー世界市場に関する調査を実施（2024年）
2024年のCNF世界生産量は132ｔ、出荷金額は62億9,000万円の見込み
～これからの10年がボリュームゾーンを築くための第二創業期～
- CNFを「CN2050」に貢献する環境素材としてモノにする、これからの10年がボリュームゾーンを築くための第二創業期
- 2024年のCNF・MFC・CeF合計のアウトプット量は生産キャパの10%前後
- 機能性添加剤向けは高付加価値品として一定のポジションを確立、構造材向けでは「マイナスのCO2」という環境性能とCeF活用によるコストダウン効果を武器にボリューム確保につなぐ
- CNF複合化によるMR剤の性能向上で自動車向けでの採用拡大に期待
- PLAやNRへの配合による「バイオ×バイオ」の提案も構造材でのCNFのアドバンテージに
- 前回版との違い
・新たな取材に基づき最新の動向を掲載
リサーチ内容
調査結果のポイント
第1章：セルロースナノファイバー市場の展望
CNFを「CN2050」に貢献する環境素材としてモノにする
これからの10年がボリュームゾーンを築くための第二創業期
2024年のCNF・MFC・CeF合計のアウトプット量は生産キャパの10％前後の水準
機能性添加剤向けは高付加価値製品として一定のポジションを確立
（表）CNFの世界市場規模予測（固形分）
（図）CNFの世界市場規模予測
（図・表）CNF生産キャパ推移
（図）CNF生産キャパに対する稼働状況
（表）CNFと競合材料との価格比較
（図）CNF用途別市場規模推移（固形分換算）重量ベース
（図）CNF用途別市場規模推移（金額ベース）
構造材向け複合樹脂では「マイナスのCO2」というセルロースの環境性能と
ミクロンサイズのCeF活用によるコストダウン効果を武器にボリューム確保につなぐ
（図）CNF強化樹脂市場規模推移（重量ベース）
CNF複合化によるMR材の性能向上で自動車向けでの採用実現に期待
衝撃強度向上に向けた開発も進む
PLAやNRへの配合による「バイオ×バイオ」の提案も
構造材でのCNFのアドバンテージに
求められる性能とコストをすり合わせ、ミクロンからナノまで
3,000倍のサイズ中から最適なマッチングを探し出せ
第2章：セルロースナノファイバー、MFC、CeF市場の動向
1．セルロースナノファイバー製法別動向
化学的解繊、機械的解繊ともに、解繊度合いや性能など
多様なニーズに最適化したCNFの開発・提案・供給が進展
（図）解繊度別のCNFの概況
1-1．化学的解繊
TEMPO酸化法、CM化法、リン酸エステル化法が実績を拡大
その他の解繊方法もサンプルワークが進展
（表）化学的解繊CNF 製法別参入企業
1-2．機械的解繊
グラインダー・ホモジナイザー・ミルによる繊維の物理的破壊や水衝突法、
京都プロセスなど、多様な解繊技術のメーカーが参入
（表）機械的解繊CNF 製法別参入企業
（表）セルロースナノファイバー 製法別概況 化学的解繊
（表）セルロースナノファイバー 製法別概況 機械的解繊
（表）主要メーカー各社のCNF生産能力
2．セルロースナノファイバー主要用途別動向
ナノサイズの繊維の均一分散が性能を発揮する機能性添加剤と
セルロースの力学特性を活用した構造材へ、用途開発の方向性が二極化
2-1．機能性添加剤
チキソ性、増粘効果、分散安定性、乳化安定性など、CNFの特性への理解が進み
食品、化粧品、塗料、セラミックなど幅広い産業で採用が拡大
（表）機能性添加剤用途でのCNF活用例
パウダータイプに比べ再分散しやすく使い勝手の良い高濃度CNFのニーズが拡大
2-2．樹脂複合化（構造材）
伸びきり鎖結晶構造に由来する力学特性を併せ持ち
環境対応と性能を両立する構造材として幅広い分野での需要拡大に期待
（表）CNFとGF、鉄の特性比較
京都プロセスは水上バイクでの採用でモビリティ部品での採用実績を確保
耐衝撃性の改善とさらなるコストダウンが課題に
自動車部材向けに耐衝撃性向上に向けた開発が継続
PLAへのCNF配合による衝撃強度アップ効果が注目される
サステナブルマテリアル化の流れの中でリサイクル樹脂へのCNF配合ニーズも拡大
CNF複合樹脂を確実に分別する技術開発進む
天然ゴム、CFRPなど熱可塑性樹脂以外の用途でのCNF複合化ニーズも拡大
2-3．その他
新たな用途でのCNF活用に向けた研究開発も注目される
3．MFC、CeF 製法別動向
CeF専業に加え、CNFメーカーでも解繊度を抑えたグレード投入が拡大
3-1．化学的解繊MFC
水分量・粘度の調整とコストダウンを目的にサブミクロンサイズのMFCのニーズが拡大
3-2．機械的解繊MFC・CeF
パナソニック、巴川コーポレーションのCeF専業2社に加え
水衝突法、京都プロセスなどCNFで展開するメーカーが解繊度を抑えたグレードを投入
王子HDは不織布技術を活用しセルロース繊維を補強材とした「タフセル」シリーズで参入
（表）MFC、CeFの概況
4．MFC、CeF主要用途別動向
“CNFの下位互換”ではない用途開発をいかに進めるか？
4-1．機能性添加剤
シングルナノサイズのCNFではオーバースペックになる用途でMFCの採用が進展
4-2．樹脂複合化（構造材）
バイオマス度向上、CO2排出削減を目的にCeFを高配合した複合樹脂の採用が拡大
（表）CeF複合樹脂の採用例
第3章：CNF、MFC、CeF 川下市場の動向
自動車部材での実装実現を目指した物性改良が続く
モビリティ以外では添加剤を中心にCNF、MFC･CeFの採用が拡大
1．モビリティ関連市場の動向
トヨタ系Tier1による分子構造制御技術を応用した耐衝撃性改善が進展
耐衝撃性、剛性、成形性など性能のバランスをいかにとっていくかが今後の開発課題に
（図）NCVプロジェクト コンセプトカー Nano Cellulose Vihicle
（図）豊田合成のCNF強化プラスチックの展開
（図）ナノレベルの構造制御技術 TBi-Alloy
（図）王子HD タフセルマット／タフセル
ヤマハ発動機の水上バイクへの採用で世界初の量産モビリティへのCNF実装が実現
大王製紙のCNFがレーシングカー、観光ツアーバスなど公道走行車の一部で採用される
（図）ヤマハ発動機 水上オートバイ エンジンカバーへのCNF実装例
（図）CNFを用いて製作したフロントバンパー
（図）大王製紙のELLEX-Rを使用した自動車部品試作品
2．モビリティ関連以外の市場の動向
増粘剤、分散安定剤など機能性添加剤としての量産品への採用拡大の一方で
筐体などの構造材は日用品・雑貨類など一部用途での採用に留まる
2-1. 電気・電子関連
（図）大阪大学 ばらまける、土に還るIoTデバイス
2-2. 工業・産業関連
2-3. 建築・土木関連
（図）CNF（スギノマシン BiNFi-s）を使用した複合フローリングの実証例
2-4. ファッション関連
（図）Kinariで製作したボタンとスピンドルストッパー
2-5. 化粧品・トイレタリー関連
2-6. 楽器（箏柱、琴爪）
（図）ACC法によるCNFを複合化した筝柱
（図）CNF製携帯を切削加工して成形した琴爪
2-7. 日用品、その他
（図）パナソニック Kinariを使用したソープディスペンサー、ソープディッシュ
2-8. 農業資材関連
（図）nanoforest-sアグリ 2つの機能
（図）nanoforest-s ファーム
（表）CNF、MFC-CeFの川下展開
第4章：セルロースナノファイバーメーカーの動向と戦略
日本製紙株式会社
複数の製造プロセス、多種多様な繊維径と形状を揃え
幅広いニーズに確実に対応する体制に強み
石巻、江津の量産設備、富士の実証設備ともに安定的な稼働率を確保
サンプルワークが製品化検討フェーズに移行する中、今後1～2年での採用拡大に期待
TEMPO酸化CNFでは固形分90％以上の「TD-02X」のサンプルワークを推進
海外市場を含め、より幅広い市場での開発スピードアップを狙う
CM化CNFは食品、化粧品を中心に多くの商品で採用が進む
可搬・可調整式製造機を導入、需要地近隣やユーザーサイドでのMFCオンサイト生産も検討
「セレンピアプラス®」の水上オートバイエンジンカバーへの採用で
CNF強化樹脂として世界初のモビリティ部品としての量産化を実現
王子ホールディングス株式会社
リン酸エステル化CNFならではの特性を活かした用途開発進む
石油由来材料代替の提案でユーザーのサステナブルマテリアル化に貢献
富岡工場の実証プラントでは試作から採用を念頭においた実証生産へと
サンプルワークのフェーズを進める案件が増加
機能性添加剤ではシングルナノサイズのCNFスラリー「アウロ・ヴィスコ」
解繊度合いを抑えた粗大CNFなど、ニーズに最適なグレードを提案
CBに代わりCNFを補強材としたCNF/天然ゴム複合材は
サステナブル関連ニーズが拡大するタイヤでの採用に期待
「二価のマイナスイオン官能基」というリン酸エステル化CNF独自の特性が
安全で環境適性の高い燃料電池用高分子分離膜の開発を後押し
疎水化CNFパウダー、CNF連続シート、無機ガラス代替のPC複合シートなど
幅広いニーズに対応する多彩な製品ラインナップを揃える
セルロース繊維を補強材料とした「タフセルマット」「タフセル」は
自動車部材など耐衝撃性が必須の用途をターゲットに提案を推進
第一工業製薬株式会社
化粧品、インク・塗料などを中心に採用が進展
繊維分布幅の広い高濃度品などニーズに最適化した開発を進める
TEMPO酸化CNF「レオクリスタ」生産開始から10年が経過し採用実績も拡大
設備稼動率、アウトプット量ともに安定した規模を確保
主力の化粧品向けではチキソ性、分散･乳化安定性で高く評価される
LiB分散剤、CFRP/CFRTPなど最先端用途での採用に向けた開発も進展
輸送・保管効率、配合処方、CO2排出など、水分量を背景とした課題解決に向け
6％濃度の「レオクリスタクロス」を提案、工業・産業用途で検討が進む
東京大学との共同研究でTEMPO酸化セルロースの難燃化、熱可塑化を実現
アカデミア向け無償サンプル提供など「レオクリスタ」の新たな可能性追求に取り組む
株式会社スギノマシン
極長から極短までの繊維長バリエーションを活かした添加剤に加え
NR、PLAとの複合化など多彩な用途開発を推進
サンプルワークの進展、トライアルセットの販売好調などで
設備稼働率、アウトプット量とも安定的に推移
「BiNFi-s」スラリーは2％品と5％及び10％品の供給量がほぼ拮抗
NRとの複合化ではアスペクト比の高さによる初期モジュラスの立ち上がりに強み
「硬くて脆い」PLAの強度アップなどCNFならではの使い方に着目
高機能添加剤としてはチキソ性や乳化安定性を活かしたUVカットスプレーを開発
極長繊維タイプや解繊度をマイクロサイズに抑えた製品等、多彩なラインナップを展開
星光PMC株式会社
ベース樹脂、セルロース繊維径、配合率など幅広いラインナップで
ニーズに最適化した提案とサンプルワークを進める
2020年度から5年間にわたるNEDOプロの取り組みの中で
設備、プロセス両面での生産効率向上を推進、竜ケ崎工場の設備改良に着手
CNFに加え、セルロースマイクロファイバー配合の「STARCEL®」もラインナップ
多様なグレードの中から用途・ニーズに合わせた提案を推進
甲殻類由来で多様な生理作用を持つチキンナノファイバーでは
化粧品、ヘルスケア、ペットケア関連分野の需要を開拓
株式会社ネイチャーギフト
CNF複合樹脂は「触ってみる」段階から「採用検討」段階へとシフト
2024年4月に準量産規模の設備が稼働予定
ユーザー各社のCN化、バイオマス度向上ニーズが拡大
CNF複合樹脂の生産体制は10ｔ/年の試作機から100～150ｔ/年の準量産機へ移行
CN関連ニーズの拡大でバイオPEベース品の引き合いが増加
サステナブルマテリアルへの関心の高まりからリサイクル樹脂ベース品も注目される
モビリティ、日用品、家電などを中心にCNF複合樹脂の提案先は50～60社に上る
耐衝撃性改良、高純度CMF複合化など、さらなる高性能・高付加価値化に向けた開発を推進
利昌工業株式会社
約90年に亘るセルロース+フェノール複合技術を活用し
他社にない製品開発、用途開発を推進
100％CNF成形体によるSDGsピンパッジや、ハニカムコア構造のサンドイッチ材での
NCVプロジェクトコンセプトカーのボンネットアウターなどCNFの加工実績を蓄積
自社内製のフェノール樹脂活用でセルロース系材料の課題である吸水・寸法変化を解決
独自の技術力でCNF成形体の性能向上と用途開発の幅の拡大を実現
大建工業との共同でNEDOの助成事業に参画、CNFを利用した内装建材開発に取り組む
2022年度にはCNF板を使用した複合床材を国内で初めて建物に実装
マスプロ用途とは一線を画したCNFならではの特殊用途開発にも注力
象牙に代わる持続可能な材料として琴爪での実用化を実現
パナソニックプロダクションエンジニアリング株式会社
セルロース繊維（CeF）配合成形材料「kinari」のグレード拡充
高剛性、良成形性、高バイオマス化などを強みに実績を拡大
バイオマス度55％品、70％品の量産販売に続き同90％品のサンプル販売を開始
物性の高さと高バイオマス化の両立で幅広い分野での採用に期待
CO2排出を抑えた生産プロセスやマテリアルリサイクル対応など環境適正に強み
福知山市との連携協定で同市の間伐材を活用した「kinari」を開発
2023年より同市立小中学校全児童生徒向け給食食器として採用される
株式会社巴川コーポレーション
セルロースファイバー複合樹脂グリーンチップ® CMF® のラインナップを拡充
耐衝撃性改良、難燃など多様なニーズに応えるグレードを開発
環境面、物性面に加え、成形品のソリ・ヒケが無く自由なデザインに対応する易成形性
既存の金型・成形プロセスを使用できる点などがユーザーから評価され採用を拡大
シャルピー衝撃強度10kJ/㎡を超える耐衝撃性グレード、V-0レベルの難燃グレードなど
工業・産業分野での採用が期待されるグレード開発が進展
食器、日用品、雑貨を中心に採用実績は着実に増加
自動車内外装部材での採用に向けた改良開発、サンプルワーク、評価も進む
国立大学法人大阪大学 （産業科学研究所・能木雅也 教授、 春日貴章 助教）
土に還る・ばらまけるセンサー、水濡れ回路の短絡防止コートなど
電子デバイスとしてのCNF実装に向けた開発が進展
CNFセンサーと無線給電装置、サーマルカメラの組合せで生分解性と情報発信機能を両立
「土に還る」土壌含水センサーの開発で持続可能なスマート農業の実現に期待
カルボキシル基を多く含むCNFの膨潤特性による水濡れ回路の短絡防止性能に着目
TEMPO-CNFの対イオンの違いによる水没故障防止効果の差が判明
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