今週の"ひらめき"視点
外国人労働者問題、やがて来る社会の分断を避けるためのセーフティネットを
第197回臨時国会は外国人労働者の受け入れ拡大の是非が重要な論点の一つとなる。外国人労働者は昨年時点で既に雇用者の2%、128万人を越えている。高度人材の確保、人手不足の補完の両面において“開かれた雇用”への流れは必然である。一方、それに伴う新たな摩擦や差別の発生もまた必然である。
オーウェン・ジョーンズ氏の著書「チャヴ(CHAVS)」(依田卓巳訳、海と月社)に描かれた英国の現実は、外国人や移民に対する排斥がやがて社会の内側へ向かうことを示唆する。チャヴとは、向上心がなく、性にだらしなく、粗暴で、排外主義的で、アルコールや薬物に依存した白人下層階級の蔑称であり、製造業の衰退、規制緩和、民営化、緊縮財政といったサッチャー氏以降の構造改革に置き去りにされた人々を指す。
そして、彼らがそこから抜け出せない原因はまさに本人の向上心の無さ、つまり、本人の行動の結果であるとの認識が社会全体で共有されてゆく。貧困や失業といった社会問題が“自己責任”の問題に置き換わったということだ。
日本国内の就業における日本人の競争優位は日本語能力にある。しかし、その優位はバイリンガル、トリリンガルの外国人に容易に奪われるだろう。
「最下層の人々を劣等視することは、いつの時代にあっても、不平等社会を正当化するもっとも便利な手段」とジョーンズ氏は指摘する。外国人と最下層という二重の分断を避けるためにも少なくとも3世代先の日本を構想し、準備する必要がある。
今週の”ひらめき”視点 10.21 – 10.25
代表取締役社長 水越 孝