今週の"ひらめき"視点
危機に直面するグローバル・リサイクルチェーン、行き場を失うプラスチックごみ
15日、日本はシンガポールで開かれた日中韓+ASEAN首脳会議で「廃プラスチックによる海洋汚染のモニタリングや汚染防止に向けた国別行動計画の策定を支援する」と発表、20日には経産省主導の官民組織「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」を立ち上げた。6月、カナダサミットで採択された“海洋プラスチック憲章”を機にマイクロプラスチックによる海洋汚染問題が世界的に再認識される中、米国とともに署名を拒否した日本も巻き返しをはかる。
こうした中、環境分野における先進性をアピールすべく流通、消費財、外食関連のグローバル企業がこぞって“脱プラ”に向かう。もちろん異論はない、賛同する。しかしながら、“プラスチックから紙へ”のシフトは当然ながら木材資源の需要増につながる。世界の温室効果ガス排出量の2割は森林の減少が原因であるという。“資源のトレードオフ”がすべてを解決するものではないという環境問題の難しさがここにある。
一方、今、廃プラのリサイクルシステムが深刻な危機に直面しつつある。1年間に日本で廃棄されるプラスチックは約900万トン、うち約200万トンがリサイクルに回る。リサイクル率は高い。しかし、その7割、約150万トンが海外へ輸出されており、香港、台湾経由も含めるとほぼすべてを中国が受け入れてきた。
昨年12月31日、世界中から年間700万トンもの廃プラを輸入してきたその中国が「海外ごみの輸入禁止」に踏み切った。だぶついた廃プラはタイ、ベトナム、マレーシアへ流れた。しかし、急激な輸入増に処理能力が追いつかず、結果、これらの国々でも輸入制限措置を講じざるを得ない状況となっている。
環境に対する意識の高まりは新興国も同様であり、それはすなわち“新興国への輸出を前提とした従来型リサイクルチェーンの限界”を意味する。このままでは2030年に世界で1億トンもの廃プラが滞留するという。とすれば我々は新たな資源循環システムの構築に大きな資金を投じる必要がある。つまり、先進国は自身が享受する便益に対するコストの一切を自身で引き受けなければならない、ということである。
今週の”ひらめき”視点 11.18 – 11.22
代表取締役社長 水越 孝