今週の"ひらめき"視点
EC事業者への規制圧力、強まる。成長を維持するためにはルールへの適合と“フェアネス”が条件
10日、アマゾンジャパンは、5月からの実施を予告していた「全商品で購入額の1%以上をポイント還元する施策を撤回する」と発表した。
同社は、2月に同施策について出品企業に通知していたが、公正取引委員会はポイントの還元原資を出品者側の負担とするビジネスモデルが“優越的地位の濫用”にあたる可能性があるとして、同社を含む主要ECサイトへの一斉調査を準備していた。これに対して同社は公取委による独禁法違反認定リスクを事前回避した形だ。
同じ日、公取委は大手旅行サイトがホテルや旅館との契約において「宿泊料金の最低価格」と「客室数の最大割当」を保証させる所謂“最恵待遇(MFN)条項”を要求していたとして、楽天、ブッキング・ドット・コム、エクスペディアの3社に対して一斉立ち入り検査を実施した。大手サイトによるMFN条項は新規参入企業に対する障壁となるとともに、宿泊価格の高止まりなど消費者への不利益を招く恐れがある。公取委は検査結果を分析、行政処分の必要性を判断するという。
支配的な地位を確立しつつあるIT事業者に対する規制強化が進む。国境を越えて巨大化し、市場を寡占化してゆくIT企業に対してようやく各国の法令の側が追いつきはじめたということだ。
所謂プラットフォーマー規制では欧州が先行する。個人情報に関する規制(GDPR)は既に施行済みだ。デジタル課税こそアイルランドをはじめとする低税率国の反対を受け合意できなかったものの、フランス、英国、スペインは単独での実施を表明している。
一方、低税率国を活用した“税逃れ”に対して、独仏は新たな規制をG20に提案する。グローバル企業が低税率国を活用して得た利益が国際社会における税負担の最低水準を越える場合、これを不当利益とみなし本国で課税させるという。デジタル課税で欧州と対立する米国も独仏の提案を支持するという。
取引条件、情報管理、著作権、利用者保護、課税問題など、あらゆるアプローチでグローバルIT企業への規制が進む。テクノロジーと自由な発想で世界経済の成長と構造変化を牽引してきたプラットフォーマーは、果たしてnation-stateとの共生の道を見出せるか。もう一段の成長と自由を獲得するための鍵はここにある。
今週の”ひらめき”視点 4.7 – 4.11
代表取締役社長 水越 孝